第50話《マッドピエロ編 回れコインランドリー》
夜10時過ぎの突然の訪問者。
ケイがもたらしたのは、仲間であるサルの「スピード中毒による精神崩壊」という最悪の知らせだった。
ぐるぐる回るコインランドリーの乾燥機を見つめながら、思考を限界まで加速させる41。
「自業自得」と切り捨てるか、それとも狂気の底から連れ戻すのか――。
41が選んだ決意と、裏で暗躍する高次元のねこぴょこたち、そして不気味に胎動するエスネコ。
満月の夜に向け、運命の歯車が《コークスクリュー》のように旋回を始める大節目の第50話、現実化パート、開幕にゃん!
第50話《マッドピエロ編 回れコインランドリー》
ここは東京N23区。41の家。
《ピンポーン》
オレ「ん?誰だろ?」
《ピンポーン》《ピポ、ピポーン》》
今、時間は夜の10時を回ってる。
オレ「うっせえなー。こんな時間に誰だよー。忙しいってのにー」
うちは、インターホンじゃないので、いちいち玄関に行かなきゃならない。
ーーめんどくさー。
ドアを開く前に訪ねる。
オレ「どちらさまー?」
ケイ「オレ!ケイだよ。」
オレ「何だ。ケイか。来るんなら電話一本くれればいいのに」ドアを開ける。
ケイの第一声はーー
ケイ「41。サルがやぺえよ。今、家に行ってきた。ちょっと上がっていいか?」
オレ「もちろん!入れよ。でも、タイミングよかったな。オレ出かけるとこだった。」
ケイ「どこに?」
オレ「コインランドリー。今日晴れてたから洗濯にハマってた。あれもこれもって、タオルケットとかシーツとか大きいものまで洗ったら干しきれなくてさ。乾燥機かけに行こうって」
ケイ「(((*≧艸≦)ププッおまえが洗濯!」
オレ「( ・`ω・´)何がおかしい。当たり前だろ」
ケイ「ふだん生活感ないからさー。別のお前、初めて見たよ。家事はジュンにやってもらってると思ってた」
オレ「( ̄^ ̄)ジュンはたまに手伝ってくれるくらいだよ。オレ一人暮らしだもん。これでも料理作ったりするんだぜー」
ケイ「(*≧∀≦)お前が料理?何作るんだよ?」
オレ「…目玉焼きとか、カレーとか。しょうが焼きとかステーキ焼いたり。味噌汁だって作れるよ。ウマイと思うよ。今度食わせてやるよ」
ケイ「( *´艸`)ああ。楽しみにしてる。それよりまず一服していいか?」
ケイが自分で巻いてきたジョイントに火をつける。ケイが一服してから、オレに回してきた。
《プッハーーー》
オレ「お!これ、いいな。あー。洗濯疲れが癒されるわー」
ケイ「一服したら、コインランドリーつきあうよ。そこで話そう」
オレ「サルに何かあったんだろ?連絡ついたのか?」
ケイ「…まあね。」
ーーケイの顔が曇った。
オレ「もしかして会えたのか?」
ケイ「詳しくは後だ。まずはこれを楽しんでからにしよう。41、この草分けてやるよ。《ブッダ》って名前だってさ。やったことある?」
オレ「あるある。こんな感じだっけ?」
ーー《ブッダ? 仏?》
オレは普段から、何かのサインを感じとる。
験担ぎ好き。ゾロ目とかね。
エンジェルナンバーとかスピリチュアル系が好きなのはジャンキーの特性。
吉か凶かはわからない。
同じ凶でも「狂」だったらヤダな…。
ーー
《ブッハー》
オレの口から水タバコ並みの、
大量の煙が吐き出された。
オレ「うん。こりゃいいわ。こんな感じだったねー。とにかく美味しいわ。さんきゅっ!」
ケイ「こんな感じの意味がわからねえけど、そんな感じだよ」
オレ「まあね。コーヒーや紅茶みたいに売ってるわけじゃないから。オレはまあ、何でも《効きゃいい》ってだけだし、これなーんだ?とか聞かれても名前なんて当てられない。もし、この世界にテイスターって仕事あったらやってみたいね」
ケイ「(*≧∀≦)テイスター!お前、向いてるよ。いつもいいやつ持ってるじゃん。買ったときに当たり外れないの?」
オレ「んー。詳しくは言えない。でも効くやつしか買わない。これでわかって。」
ーーこれは、ナイショ。
《卸し先》から手に入れる時に実は味見してるし、
味見したうえでいくらで買うか決めてる。
もちろん、末端価格をいくらにするかまで話す。
昔より引き受ける量が大きくなってきた。
たくさん持ってるリスクを背負うのは怖いからね。
オレは自分の分だけ取って、ほとんど右から左だ。
ーー
ケイ「わかった。じゃあ、そろそろ行くか。洗濯物運ぶの手伝うよ。オレの車で行こう」
オレ「ああ、頼む」
ーー
洗濯かご、二つ持って、
ケイの車で近くのコインランドリーに向かった。
ーー
ケイ「ここ、路駐平気かな?」
オレ「いつも止めてるから、大丈夫だと思う。30分も回せば乾くだろ」
二人でドサドサと二台の乾燥機に放り込む。
とりあえず300円ずつ入れてスタート。
《ゴォンゴォン》
コインランドリーが回り出す。
オレ《あー。これずっと見てられるなー》
《ブッダもいい感じでピークになってきた》
《あれ?何だかピンク色の…水色のも…》
《ヤバ。あれジュンの置きパンツだ。ケイにジュンの下着見られちゃうなw》
ーー
ケイ「(*≧∀≦)なーに、洗濯物に見とれてるんだよ。サルの話するぞ。」
客はオレたち二人。ヤバい話でも大丈夫だ。
オレ「で?サルどうした?」
ケイ「…サルの姉ちゃんから電話あったんだよ。アイツ実家だし家に何度も行ってるから姉ちゃんとも遊んだりしてた。姉ちゃんも卒業したけど、元々あんパンやってたからな。」
オレ「あー。そうなんだ。サルの家は知ってるけど直接部屋に行くし家族会った事ない。姉ちゃん、いるなんて知らなかったわ。」
ケイ「それは、サルがお前の事見せたくなかったからだろ。お前が身バレに敏感だから会わせないようにしてたんだよ」
オレ「…そっか。気を使ってくれてたんだな。…それで姉ちゃんの電話は何て?」
ケイ「おかしくなって、部屋から出てこないからオレに会いに来てくれってさ。」
オレ「オレ、アイツに何回か電話したんだけど出なかったよ。」
ケイ「ああ、そうだろうな。アイツんち電話二つあるんだ。41が知ってるのはサルの電話番号。家族のやつもあるんだよ。」
オレ「なるほどねー。姉ちゃんはケイの連絡先知ってたわけか。それでケイは会いに行ったの?」
ケイ「ああ、お前んちに行く前に行ってきた。サルは…。
ケイが思い詰めた顔になる。ふだんの当たり前は笑顔。たまに真面目になったり、ケンカの時の怖い顔は知ってるけど。
ーー始めて見たケイの深刻な表情が、
そのままサルの《今》を語っていた。
ーーオレ《これはヤバそう。ジュンのパンツ見られちゃうとか心配してる場合じゃない。》
オレ「サルどうしてた?」
ケイ「あれはどう見ても、スピードのやり過ぎだよ。この前、お前んちに集まってから…2週間くらいたつよな。こんな短期間で、こんなになるかってほど痩せて別人になってた。…それと」
オレ「それと?」
ケイ「姉ちゃんに頼まれて来たとか言えないからさー。フツーに、調子どう?って感じで話しかけたんだよ。そしたら…幻覚が見えるんだとさ。何で電話出ないって聞いたら盗聴されてるかもしれないからって。…姉ちゃん泣いてたよ。家族で病院入れようか迷ってるって。そしたら警察の世話にもなるだろ。そしたらケイちゃんにも迷惑かけちゃうかもしれないからってさ。」
オレ「…幻覚?サルは何て言ってた」
ケイ「カーテンの隙間から覗かれてるとか、足元に見えない虫がたくさん這い回ってるとかさ…。」
オレ「脅迫観念…末期じゃねえか。それに虫か。キツいだろうな…。」
ーーオレはアルコール中毒で入院した友達の事を思い出した。そいつも《虫》って話してた。
ーー常人には見えない《虫》の幻覚。
いや、アルコールでも薬物でも一線越えると《虫》なのかな…。
ーーオレは少し黙りこんでコインランドリーを見つめる。
オレ《どうしたらいい?オレの責任か?オレは関係ないって突き放せるのか、41?》
オレ《自業自得…。自分のする事は良いことにも悪いことにも返ってくる。…どっちにしても見捨てられないよな…》
回るコインランドリー。
ぐるぐる回る服やパンツ。
いろんな色が、回って、重なって、ほぐれて、混ざって、かき回される…。
《ぐるぐるぐるぐる》
ケイ「41。どうする?どうすればいいかな?」
オレ「…。ちょっと待って…。」
目の前でかき回されてる洗濯物。
《グォーン、グォーン》
大きな機械の音がオレのアタマに静かに反響する。
最適解は何?
ーー思考が加速する。
ーーーー
ここは41のアタマに作られた異空間。
周囲を虹色の縞模様が、木星の帯のようにうねっている。
にゃんこ世界の時間を止めて、
41を監視するため、ねこぴょこの二柱が作った閉じた世界だ。
ねこにゃん「動きがあったようだにゃ。こいつ、やっぱり《持ってる》よにゃー。おまい何もしてにゃいだろ?」
ぴょこにゃん「何も干渉してにゃいよ。こいつ未来から運命持ってきてるのか?日常生活とか含めてシナリオ通り動いてるのか?こいつ、コインランドリー見て今後の展開とか未来視可能性計算してる。どの人間も、こんなスピードで並列思考するにょか?自分で《コークスクリュー》閃くにゃんよ。」
ねこにゃん「観測してサインを読み取るか…。ケイって友達の突然の訪問とか、持ってきたマリファナの名前が《ブッダ》だもんにゃ。仏の符号刻まれたにゃ。それとも烙印か?w」
ぴょこにゃん「地獄に仏か。友達を地獄から救いに行くのは、ほぼ間違いないね。今、計算中ってとこか。そろそろ《武器》のインスピレーション与えるか?」
ねこにゃん「ちょっと待つにゃん。そのサルってやつの状態見てからだろにゃ。それに今日は上弦の月。月の《魔眼》もいい目付きにゃ。熟成された《コークスクリュー》は満月の夜に最大効果出すにゃんよ」
ぴょこにゃん「満月まで三日ってところだにゃ。これから作戦練ってコンタクトの準備して、決戦は満月の金曜日にゃん。ドラマチックだにゃー。」
ねこにゃん「それに、41がサルってやつを見れば、サルに侵入できる。そしたら、おりたちはマッドピエロの情報も、41以上に視覚化して見れる。それを合わせてインスピレーション送るにゃんよ」
ぴょこにゃん「…話、戻るけどさ。おりたち何も干渉してないよにゃ?」
ねこにゃん「相方のおまいが一番知ってるだろ。41の監視だけにゃんよ。過去や前世とか未來線の観察まで手が回らないにゃ」
ぴょこにゃん「にゃんこ世界の時間止めっぱなしだからにゃ。そっちのエネルギーだけでも大変にゃん」
ねこにゃん「…反動もだにゃ。いろいろあるけど後回しにゃん。お。動き出すぞ!」
ーーーー
オレはどうしたらいい?
《ぐるぐるぐるぐる》
オレ《回れコインランドリー…。中身はごちゃごちゃ。平等な使命は湿ったモノを乾かす事か…》
《サルが大変な時に、オレはいったい何考えてんだろ…。モヤモヤする…。何を掴もうとしてるんだ?》
ーーーー
オレ《あ!そうすればいいんだ!》
ー言語化できない。うまく説明できない。
《でも、やれる》
ーうまく行く確信があった。
ーーーー
オレ「ケイ。コインランドリー終わったらサルのとこに連れてってくれ。」
ケイ「…あー。どうかな…。お前に会いたくないんじゃないかなー。」
オレ「だから行くんだよ。んで、連れて帰る!」
ケイ「連れて帰るー?どこへだよ?サル、自分ちだぜ?」
オレ「オレんちだよ!うちで直してやる。元の日常に返してやらないとダメだ。心の扉閉じてんなら、こじ開けて直してやろう。見てみないとわからないけど捕まらせたり、入院なんかさせたくない。オレにも責任あるし…。」
ケイ「あるし?」
オレ「( ・`ω・´)サルが壊れたのに、マッドピエロってのが関係してるんなら…落とし前つけてやる!」
ケイ「(´・ω・`; )…おいおい。あっちはケンカ上等のヤツラなんだろ?二人じゃ敵わねえよー」
オレ「( ̄^ ̄)ジャンキーにはジャンキーの戦い方がある。まさか、最悪の未來になるなんて思ってなかったけどな。罠張っといてよかった」
ケイ「(´・ω・`)?罠ぁー?何だそれ」
オレ「いや、ちょっと言い方違うな。罠にはまる準備っつーか、おびき寄せる仕掛けっつーか。うまく説明できねえ。とにかく任せとけ」
ーージュンには、実験でエミの胸触ったって正直に伝えたけど…。
ケイに、その説明は後だ、
ーーーー
ねこにゃん「(*≧∀≦)ほら。こいつ閃かせたにゃん」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)回れコインランドリー作戦?」
ねこにゃん「さて、いよいよ出番だにゃ」
ぴょこにゃん「おまい、人間の世界関わりたくないって言ってたわりにノリノリだにゃ」
ーーねこにゃんが真顔になった。
ねこにゃん「おまいも、可能性の計算で気づいただろ?共有意志モードで見たはずにゃ」
ぴょこにゃん「…まあね。不確実な事は言いたくにゃいけど…。ヨーニャが言ってた仮説が正しければ、41の死は概念世界の消滅になる。でも救う方法もありそうにゃん。」
ねこにゃん「それは、後回しでいいだろ。とにかく今は《コインランドリー》を授ける事が大事にゃん」」
ぴょこにゃん「(((*≧艸≦)ププッ 今のはボケたにょか?それとも天然?」
ねこにゃん「( ;∀;)…マジっす。天然す。もう一度、やり直しのチャンスほしいす」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)じゃあもう一度」
ーーねこにゃんが少し赤い顔で宣言した。
ねこにゃん「( ・`д・´)とにかく今は《コークスクリュー》を授ける事が大事にゃん!」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)おー。言い直した。メンタル強いにゃん」
ねこにゃん「ほめられたにゃ」
ぴょこにゃん「ほめてねえにゃん。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ーーーー
41の中にはねこぴょこ以外のモノが潜んでいた。
かって、ねこぴょこたちしか開けなかった121層の封印で隠れている。
それは可視化できたら、深紅色をした稲妻形の「S」に見えるだろう。
ーーいや、
刻まれてるのかもしれない。
シンクロニシティのマーキング。
ーー《キミが描いた未來は我が実現する》
ーー《我もその未來から来たモノである》
エスネコ「(*≧∀≦)にゃ。」
《次はこのページだね…》




