↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/96

第4話《明晰夢の檻 》

第4話《明晰夢の檻 》


《198X年──時代の境目、記録にも歴史にも残されぬ年》《錆びた空の下、ノイズに蝕まれた都市。夢の残骸と合成された現実の中をオレは裸足で歩いていた。目は醒めきらず、心は燃え尽きず、彼の血脈には毒が流れ、脳には未知の神が宿る》


ーー


41「これは夢?また夢の中で夢を見ているのかオレは?」


41「ここどこだろ?」


41「ここは来たことがないな・・・」


ーーまた「新しい」明晰夢だ。


ベタベタと裸足で歩き続ける。


41「何で裸足?だりいな、この夢」


歩道から伝わるの地面の冷たさや、起伏、小さ小石。感触がリアルだ。


自分の顔に触れる。


目、鼻、口。


まさぐる髪の毛の感じも、手のひら見て指を握ったり閉じたり、ひっくり返した手の甲もオレの手だ。

はめっぱなしの指輪もつけてる。

手を握ると手首の筋も出るし血管も見える。


ーー

41「えーと…。何か、自分が映るものないかな?」


辺りを見まわすと先にガラス張りの店がある。


41「あそこなら映るかな?」


人の流れに沿いながら左側にあった店を目指す。


ーーガラスに映ったオレの姿は「オレ」だ。


けっこうお気に入りのアロハにジーンズ。

触った感触も確かに「服」だ。

ポケットにも手が入るし。財布もある。


いつもの自分。


意識だけじゃない。

また、カラダごと夢に来てるのか。


ーー

つーかさ。

オレは何で裸足で歩いてるんだ?


いや、これじゃ、まるでゾンビだ。

考え事しながら歩くゾンビ?それ新しいなw


自分のジョークが黒すぎて怖くなってきた。


ーー

明晰夢ーー《自分は今、夢を見ていると自覚できる夢》


だが、オレの明晰夢はいつもリアルすぎて怖い。


でも怖いのは「初めて」の時だけだ。

夢の既視感の輪郭は徐々に濃くなり《慣れる》。


誰だって「この夢、前にも見たことがある」って経験あるんじゃないかな。


だけど、オレの場合、そこで「暮らしてる」夢なんだ。


オレはその「家」で日常生活してる。


切り取られた時間だけど、この前は、こんなことあったとか、誰が遊びにきたとか。「夢の続きの夢」をみる。


そしてその家の外観もわかるし、ちょっとした買い物や近くの飲食店にも出かける。


でも、「やっぱりこれは夢なんだな」って実感するのは亡くなった恩人に会えること。


兄のように慕った人と会えたときは嬉しい。


でも、夢の中でもさすがに「Mちゃん。死んじゃっただんよね…?」とは聞けない。


何か失礼だと感じるし、それを聞いて答えられたら、二度と会えない気がするから。


ーーーー


オレの夢の中の「住処」はどれも変わった外観とカラクリ部屋のような間取りになってる。

これも、「これは夢だな」と実感できる材料だ。


・豪奢な搭の中の、隠れ家のような部屋。


・特殊な乗り換えをしないと自室にたどり着けないエレベーターが付いてるホテル。


・神社境内の大きな石碑の裏にある一軒家。ここは玄関が二つある。


・玄関がそのまま広いリビングルームになっていて、左右に果てしなく部屋が続くタワーマンション。


どの明晰夢も「住処」から始まるので「これは夢だ」と安心できる。


ーー


ただ、ひとつ怖いパターンがある。


それは明晰夢の中で寝て、起きたら現実の部屋。

起きてトイレに行こうとドアを開けたら、元の明晰夢の部屋だったというやつ。


振り返ると、それまで寝ていた自分の部屋は、勝手に模様替えを始め歪んでいく。

ベッドや棚やタンスなどが壁に飲まれていく。


最後に元々部屋だった空間は窓だけ残る。

そしてドアが勝手に閉まり壁になって消える…。


自分が現実の世界を壊してしまったような恐怖。

「あの現実には戻れない。」

「それとも夢から戻りたくないのか…。」


ーーこれが一番怖い。


だから明晰夢の中では寝るのはタブーにした。


終わるまで見ること。


そして、そういうルールを持てるようになるまで慣れた。


ーー


だが、ここは、初めての場所。

それも気づいたら、街中に急に置かれてたって感じだ。


今まで経験した明晰夢の中でも一番広い「空間」。

いろんな人が歩いてる。


41「これは普通に雑踏・・だよな。」


忙しそうに歩くビジネスマン。


楽しそうに話ながら歩いてる女子高生。


ベタベタしながら歩いてるカップル。


植木の回りで座り込んでるホームレス。


道路は乗用車にタクシー。

ままチャリ漕いでるおばさんもいる。


そして街の聞き慣れた喧騒。

どこかの店が流してる、大音響のテーマソングまで聞こえる。


41「……これ。本当に夢だよな?リアルすぎて」


いや。おかしい。耳をすますと音が小さくなる。


41「・・逆だろ?」


ーー

自信なくなってきた。

もしかして…。


41「オレ死んじゃった!?」


自分で死んだの知らない幽霊なってるのか?

霊能力あるって友達が幽霊はリアルな姿で見えるって言ってた。まさかそれ?


41「いや、違う違う。オレは生きてる。はず。」


41「スー!」「ハー!」


もういっちょー!


41「スー!」「ハー!」


だってほら、深呼吸できるし。落ち着け、落ち着け。


ーーーー

《確かに、一歩間違ったら死んじゃうような悪い遊びはやってるさ》


リスクは負うが、玉砕覚悟で手を出したもんじゃない。その先の興味と期待が勝っただけだ。


ーーでもさ、もしかして本当に…。

どうしても一番怖いこと考える。


41《ダメだ。こんなの考えちゃダメだ!》


取り繕うように「不安」という恐怖の裂け目を縫い付ける。経験したからこその知識。


ーー探せ。


夢なら「違和感」あるはずだ。


まず裸足。


《……視線!》

そうだ。最近、明晰夢で「視線」を感じる事があった。誰かじゃない。「ナニカ」がオレを見ているんだ。


思い出した。この前も「視線」を感じた。

その時にアタマの中の「別のオレ」に教えられたんだ。


《怖がると恐怖は喜びさらなる恐怖を与えにくる。悪夢になるぞ!》


「覚悟」を決め言い聞かせる。


目をつむり、心臓に「力」が集まるイメージをする。考えるのは「脳」。心は「心臓」にあるとオレは思ってる。


41「跳ね返せ!追っ払え!なめんなよー!」


心を静めながらもパワーを放出するイメージ。

お手本はドラゴンボールだね。


セリフ当てるなら、


「ぐぬぬぬぬぬ」ーーー


ーーー「かーっ!」


って感じかな。


よし!


41「はーーーーっ!」


腹から大きな声を出した。絶叫だ。


すると、不思議なものだ。アタマの中の怖さは消え。「ナニカ」も消えた。


ーーいや、うっすら視線は残ってる。

消えたというより、オレが見えなくしてやったって感じ。


ーーはぁ。


夢の中で安堵のため息か。


バカみたいw


でも必要。


こんなの現実じゃやらないよw

夢の中なら役に立つ中二病。

とにかく習うより慣れろだ。


ーーーー


歩きながら考える。もう冷静だ。そもそも、裸足で歩いてたら回りだってオレをチラチラ見るだろ。


これは夢。明晰夢確定でいい。あとは終わるまで楽しもう。


ただ、明晰夢を見るたび、気になる事がある。現実のオレ、どうなってるのかな?ちゃんとスヤスヤ眠ってるのかな?


ーーーーそれとも。


オレは幼い頃に親から聞かされた話がある。


「41。お前は小さい頃、夢遊病だったのよ」


ーーそれが治ったのかオレにはわからない。


今、オレはこんな狂った明晰夢を楽しんでるけど、現実で何かやらかしてないよな?


寝るのは好きだし夢も好きだ。

でも、意識を手放した時の自分に自信がない。


ーー別人になってる気がして。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。