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第44話《マッドピエロ編 目覚めた青いねこ》

《マッドピエロ編》第44話――目覚めた青いねこ】

地球がくるんとめくられて出来た隙間の世界――奇妙であいまいな街《にゃんこシティ》。

《ヤク(薬)》の概念を司り、半年間の「眠り」から目覚めた原初のねこ神、ヨーニャ。

注射器でスピードを打ち込み、空間を切り裂いて向かった先は、全知全能の居候、ねこにゃんとぴょこにゃんが鎮座するアミューズメントパーク《よろずや》だった。

噛み合わない会話の中で浮き彫りになる、ヨーニャの特異性と「概念の医者」としての知性。

小枝から生まれた子供、かみかみ。そしてトップアイドル、アムリア。

三次元(現実)で41が対峙する毒と狂気が、この概念の世界と静かに繋がり始める――!

第44話《マッドピエロ編 目覚めた青いねこ》


ここは──にゃんこシティ。


《概念》を司るねこ神たちが暮らす、奇妙であいまいな場所。


謎の異空間の住人《アルファとベータ》から分裂した存在、『エスネコ』が地球に衝突。


その衝撃は、誰にも気づかれることなく、地球をくるんと、『めくりあげる』異常事態を引き起こした。


めくりあげられて出来た、四次元より下、三次元よりちょっと上の隙間の世界。


ーー


エスネコを追って地球に降り立ったアルファとベータは、それぞれーー。


ねこにゃん(アルファ)


ぴょこにゃん(ベータ)


と名乗り、この「隙間の世界」に着陸。


着陸地点となった《新宿御苑》を中心に、二匹はにゃんこシティの建設を開始する。


にゃんこシティは、現代と過去の東京の風景を、三次元コピーと切り貼りで構成した奇妙な都市。


ジグソーパズルのように、どの場所にもはめ込める、同形のピースでできた街。


その街はまるで、東京に覆いかぶさるように貼り付いて存在していた。



ーーーー

ここは──

にゃんこシティ郊外。


代々木公園と神宮の森を、継ぎ接ぎしたような、ねじれた林の中。


その木々の隙間から、『ひとり』の青いねこが、ふらりと現れた。


ーーダークブルーの滑らかな体毛。


左右に鋭く尖った耳は、まるで魔物のようなシルエット。


半開きの、眠たげな目元──


けれど、見る者の視線を引き込んでしまうのは、その瞳だ。


満月のような金色の目。


暗がりでも輝きを放つその瞳は、不思議な引力を帯びている。


ーーこのねこの名は──『ヨーニャ』


《ヤク(薬)》という概念を司るねこ神。


ヨーニャは、にゃんこシティでも数少ない《ネームド》の存在だ。


名を持ち、明確な役割と特異な色を帯びた神々

──それがネームド。


その中でも、色彩に由来する力を持つ者たちは《カラード》と呼ばれる。


ヨーニャはその一体。


《恋》の神アムリアと同じく、初期に生まれた原初の、ねこ神である。


そして、ヨーニャが他のどの神とも異なる、最大の特徴は──


「眠り」


この世界に《睡眠ごっこ》はあれど、実際に眠る神などほとんどいない。


だが、ヨーニャは秋から春までの半年間、枯れ木の姿で眠る。


完全に沈黙し、存在を隠してしまうのだ。


その彼が、いま目を覚ました。


林を抜け、空を見上げてぽつりと呟く。


ヨーニャ「……太陽が眩しい。寝坊したかも。誰も起こしてくれないからな〜……今、夏!?」


季節のズレだけでは済まされない。


ヨーニャは《概念の病を治す医者》なのだ。


彼の寝坊は、にゃんこシティ全体に影響を及ぼす。


ヨーニャ「……ん?しばらく見ないうちに景色が……。これは、街か?」


林の参道の先に、まっすぐ街の中心へと続く道が伸びていた。


ヨーニャ「うーん、よく見えないな。目薬出そ。スッキリ遠く見えるやつ。」


右手の肉球に、スッと目薬が現れる。


それを迷いなく目に差し込む。


ヨーニャ「あーッ、染みるー!染みないやつ作ればよかったー。でも、スッキリっと。」


次の瞬間──


ーー金色の虹彩に、黒い十字型のスリットが浮かび上がる。


ヨーニャの視界が一気にクリアになった。


ヨーニャ「ふーん。知り合いは、あそこか。ちょっと遠いなー。…しょうがない。スピード、打つか。」


ヨーニャの右手に、いつの間にか注射器が現れていた。


中には透明な液体。


ヨーニャ「飲むより、打つ方が効くからねー。チクッとね。」


左手の内側に針を刺し、液体をゆっくり押し込む。


ヨーニャ「…はあ、効いた〜。よし、行くかー!」


その声と同時に──


《キィンッーーー!》


音を残して、彼の姿は空気ごと引き裂くように消えた。


いや、消えたのではない。


空間を切り取るような速度で、街の中心部へと走り去ったのだ。


ーーーーーーー



大ヒット曲「フンフンin the night」が大音響で流れている。


ここは、にゃんこシティ最強のアミューズメントパーク『よろずや』


見た目はとたん屋根の二階建て。


昭和のタバコ屋さんのような窓口から、いつものふたりが顔を出している。


ねこにゃんとぴょこにゃんだ。


窓口の横に立て掛けられた木の板には毛筆で「悩み着せ替え当たる」の文字。


店はアイドル店長アムリアが仕切り、ねこぴょこのクローンとゴーレムたちが勤勉に働いている。


二人がサボり楽するために用意したのだが、ふざけるのが本業の二人は不要というより、もはや邪魔。


窓際族ならぬ《窓口族》として街を眺めている毎日だ。


「悩み着せ替え当たる」は暇潰しに始めた占いらしい。


ーーだが、

彼らを頼るものはいない。


チンチラの方が頬杖をつきながら呟く。


ねこにゃん「忙しいにゃあ…。」


アメショーが答える。


ぴょこにゃん「忙しいねえ…。」


ねこにゃん「暇にゃねー…。」


ぴょこにゃん「暇にゃねー。」


ねこにゃん「占いこにゃいねー…。」


ぴょこにゃん「当たるにょにねー…」


ーーそう。

こいつらは本来、全知全能の世界の住人。

三次元ねこボディはフェイク。


11次元構造の能力《二次元レンズ》で予測、未来視まで可能…なのだが…。


ねこにゃん「当たらなかったにょさー」


ぴょこにゃん「エスネコ見つけたまでは当てたにゃん」


ねこにゃん「アムリアにエスネコの上位権利奪われたにゃ」


ぴょこにゃん「(`;ω;´)アイツ駄菓子でつられたにゃん」


ーーーそんな二人の前に青い影が急接近してくる。


《ドドドドドドド!》


風を巻いて走ってくるダークブルーの物体。

金色の目が光っている。


ーー


ねこにゃん「ぶつかるなら《バリア》海」

衝突したら海に飛ばされる仕組み。


ぴょこにゃん「ぶつかるなら《変換ナノスライム》」

衝突したら微粒子のスライムにされる仕組み。


《ギギギギギィー》


砂ぼこりをあげ影は窓口の前で止まった。


ーーーー


ねこにゃん「あれ?おまい探してたヤツにゃん」


ぴょこにゃん「《ヤク》の概念にゃん」


ヨーニャ「危ねーヤツらだなー。お前らオレに何かしようとしたろ?」


ねこにゃん「(*≧ω≦)初めまして、ねこにゃんです。こんにちわ」


ぴょこにゃん「(*≧ω≦)そのツレです。ぴょこにゃんです。こんにちわ」


ヨーニャ「(*`Д´)ノ!!!ああ!こんにちわ!それで?」


ねこにゃん「それでとは?」


ぴょこにゃん「怒ってるにゃん?」


ヨーニャ「(´・ω・`; )…もう、だいたいわかった。オレはヨーニャ。お前らの言う通り《ヤク》担当だ。テキトーにゾンビたちの治療もしてた医者だ。この街はお前らが作ったのか?つーか、お前ら誰だ?ここから生まれた《概念》じゃないだろ?」


ねこにゃん「質問攻めだにゃー。確かにおりたちはよそから来た。ここ来たときに自我持ってないゾンビだらけだったから《ごっこ遊び》で教育するために街作ったにゃ。」


ぴょこにゃん「敵対する気なんて全くないにょさ。そもそも協力してもらおうと探してたにゃん。アムリアも行方不明って言ってたし。どこにいたにゃ?」


ヨーニャ「寝てた。知り合いがそのアムリアだけだったんだよ。ピンクのねこ。ここにいるんだろ?」


ねこにゃん「この店の店長様にゃん。おまい寝るにょか?」


ヨーニャ「フツー寝るだろ?」


ひょこにゃん「睡眠ごっこにゃ?」


ヨーニャ「(´・ω・`; )…話が噛み合わないなー。それでピンクは?」


ぴょこにゃん「トップアイドル様にゃん」


ヨーニャ「お前ら、アイツの能力にやられなかったのか?」


ねこにゃん「フラれて学習して耐性つけたにゃん」


ぴょこにゃん「そしたら嫌われたにゃん」


ヨーニャ「(´・ω・`; )…わかりづらいなー。…何かオレ異質なモノと話してる気がする。で、お前らは何の《概念》なんだ?ぜんぜん見えない。」


ねこにゃん「ヨーニャ!おまい、相手の概念見えるにょか?さすが名前と色持ちだにゃー」


ぴょこにゃん「簡単に言うと、おりの能力は科学。ねこにゃんは魔法にゃん」


ヨーニャ「…ごまかしただろ?さっきのはそんな甘いもんじゃなかった。」


ねこにゃん「魔のつくもの全てにゃ」


ぴょこにゃん「マッドサイエンティストにゃ」


ヨーニャ「…作ったのかそれ。カラダも変だ」


ねこにゃん「スゴいにゃー。さすが医者だにゃ」


ぴょこにゃん「だから、話せば長くなるにゃ。アムリアに会いにきたんにゃろ?中に入るにゃん。」


ヨーニャ「ああ。つーか、お前らの方が役に立つな。相談…というより力借りれるか?」


ねこにゃん「(*≧ω≦)ヤクの役に立つ!」


ぴょこにゃん「(*≧ω≦)役に立つヤク!」


ヨーニャ「(´・ω・`; )マジやりづらいなー。オレ相談相手間違えたかも…。」


ねこにゃん「アムリアー。青ねこ先生お一人様来店にゃー!」


窓口のマイクからアムリアのイヤホンマイクに声が飛ぶ。


アムリア「久しぶりねー。入って入ってー!」


ーー窓口のスピーカーからアムリアの返事が響く。


ぴょこにゃん「ひとつ先に聞いていいかにゃ?何でヨーニャはアムリアにやられなかったにゃ?」


ヨーニャ「ん?見て能力わかったからかな?すぐ薬作ったから」


ねこにゃん「(@_@)クスリ?恋しない薬ー?」


ぴょこにゃん「ヤクね。中でもっと話すにゃん。うちの子供もいるし。会わせたいにゃん」


ねこにゃん「かみかみって言うにょさ。元々は《小枝》にゃんだよ。かわいいにゃん」


ヨーニャ「(´・ω・`; )…《小枝》が子供?オレが寝てる間に何があったんだよ?」


ーーーー


カオスの住人が作った街。概念のねこたちが住む中で「睡眠」を必要とするヨーニャの特異性。


小枝の化身、かみかみとも違う。名前と色持ちのアムリアとも違う。


ここの《概念》のねこと異なる存在。ヤクを操り概念の治療をするモノ。眠りを必要とするモノ。


ここで、自然発生したモノたちのルールに当てはまらない。


ーーそして、そのヨーニャの相談とは何なのか。


現実の世界とにゃんこの世界がつながっていく。



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