第41話《マッドピエロ編 チープ・トリック,チープ・トリップ前編》
《マッドピエロ編》第41話――チープ・トリック,チープ・トリップ前編】
憧れの記憶を胸に、自分の色で作り上げた大切な《城》。
ガラクタの結界が張られた応接間でバカなジャンキーの「仮面」をかぶる41の裏で、冷徹な観察眼が動き出す。
サルの連れてきた女・エミの不自然な露出と仕草。
「何か不自然なんだよなー」
安っぽい罠の匂いを察知した41は、隣のジュンへ視線を送り、新たな悪巧みを胸に2階へと駆け上がる――!
第41話《マッドピエロ編 チープ・トリック,チープ・トリップ前編》
ここは、うちの応接間。
オレとジュンがいつものソファーに。
大人が余裕で三人座れる、真っ白で柔らかい革のフカフカソファー。ベッドよりここで眠ってることも多い。
向かいの二人掛けのソファにサルと彼女。
一人用のソファにケイがドカッと座ってる。
それは、一目惚れして、お小遣い貯めてやっと買ったアンティークのヴィンテージソファー。
座れる贅沢。
ーー
ここは、オレの《城》だから、家具やインテリア、小物にもこだわってる。
でもね。
ここは。元々オレを入れるための檻だったんだよ。
自分だけが知らない秘密。
その罪と希望とねこを抱えてここに入った。
答えの出ない無限の檻は、やがて城となる。
お城だからね。
仲間を迎えるにも快適な空間がいいだろ。
19の時に初めて行ったMちゃんの家。
Mちゃんの部屋はまるで秘密基地。
そこに温かくて優しい家族が暮らしてた。
その影響は大きい。
けどさ。そのまま真似はダサいから、自分の色で塗っていく。
心と同じだよな。
飾り棚には、骨董品屋さんで見つけた顔だけのフィギュアや、目の手術道具、鉱石見本、枝にアメジストの実をつけた金属の木、さらにはマグネシウム光線銃の部品など。
オレにステキ認定されたガラクタたちは、幸せの結界を張ってくれる。
結界の中心はもちろん《Moon》オレのベースだ。
床置きの乳白色の照明器具。
中央がワイングラスのように凹んだ、透明なガラスの蓋は水を浮かべてる。
お祭りの金魚すくいで取った金魚を入れてたら、金魚は熱で茹でられちゃった。
ちょっと考えればわかるのに。
閃きで動くバカジャンキー。
反省を重ねて今がある。
ーー
いつもなら、テーブルの上には、ドラッグ一式フルセットなんだけどねー。
ーー本日『ドラッグストア41』は臨時休業だ。
気分よくなれるんなら、アルコールでもかまわない。
サルが持ってきたハッパが回ってくる。出されたものには、つきあってやらないとね。
ーーサル「41。これ、オレが持ってきたヤツ。やってみ。けっこういい。でも喉にくるんだよねー。」
オレ「じゃあ、ゴチなるわ」
大きめのパイプにギチギチに詰められたハッパ。
『粉』吹いてて美味しそう。
以前、これをハンディの顕微鏡で見たら神秘の世界だった。
ガサガサしたジャングルに成分の恩が、あちこちに吹き出てる。キャンディみたいなオレンジ色の樹脂。
そこに入って『ジャックと豆の木』やりたいって思った。
まだ炎にさらされてない一服目を寄越してくれるのは、互いへのリスペクトの証。
ーーそうだろ?サル…。
オレ《スー…………。》ーー《まだまだまだまだ…。》
《…!》
《よーし!入ったー!》
《プハーーーーーーーーーー!》
《ゲホゴホッ!》
大量の煙。
長年ハッパやってるせいか、ジャンキーの肺活量はハンパない。
オレは前に座ってる、サルの彼女のエミちゃんに吹きかけるように、わざと咳き込んだ。
ハッパの煙と匂いが部屋中に充満。部屋の視界が悪くなる。オレはゴキゲンな霧を生成した。
人がくれるもんに遠慮なんかしない。
ーーケイ「(((*≧艸≦)ププッどんだけ、肺にためるんだよ。」
41「《忍法!副流煙の術!》この煙を吸ったものは41を通してさらにハイになれるのだ。そうですねー。今回のサルネタの点数は…《8ジュピタン!》」
みんな《ゲラゲラゲラゲラ》ーーー
思いついたまま吐き出す言葉は、いつも軽くて薄っぺらい。そんなことわかってる。
他愛ない会話がカーテンになる。
今日はまあ、このくらいの温度でいいだろう。
ーーまるっきり仮面。
気づいてるのはジュンくらいだろう。
だって、時々隣から冷めた視線送ってくるし。オレも今、鏡で自分見たくない。
オレ《安っぽい笑顔なんだろうなー》
サル「8(はち)ジュピタンかー。喉の痛みで減点かな」
ケイ「バーカ。こいつの単位いつもメチャクチャだろ。効くよこれ。41の感想なんてあてにならんわ」
オレ「( ・`ω・´)何だとー!あてになるわ!」
ケイ「じゃあ、今の判定は何点満点ジュピタンだったのよ?どーせ100でしたとか言うんだろ」
オレ「( ・`д・´)一億光年ジュピタン満点!
ケイ「年に変わってるじゃねーか!」
サル「効いてるんだろ?」
オレ「ハイ(*>∇<)ノ」
エミ「みんな、仲いいんですね」
ジュン「( =^ω^)いちいち、つきあってるとバカうつるわよ。」
ケイ「じゃあ、特別に、オレのも出すかー」
ーーケイが自分のハッパを取り出す。
今日オレとジュンはゴチだけ。
イヤな予感が、片付いた後でね。
ジュン「ジュピタン。バドでいいの?グランダッド飲む?」
オレ「どーしようかなー。じゃあバドと両方持ってきて。あと、グラスに氷、目一杯入れて炭酸水持ってきて。」
ジュン「珍しい!ロックじゃなくていいの?わかったー。みんなは?エミちゃんも飲む?ハイボール。」
エミ「グランダッドって何ですか?アタシも手伝いますよ」
オレ「バーボンだよ。飲みやすくて、一番好きな酒なんだよ」
エミ「じゃあ、ちょっといただきます」
サル「オレもー」
ケイ「オレは車だからいいや。何かお茶っぽいの」
ジュン「( `Д´)/やっぱり、アンタたち全員きなさい。」
ジュンに怒られた。
そーだよね。
ジュンだってハイクラスの女ジャンキー戦士。
パシりじゃないもん。
オレ「5人行ったら台所ごちゃごちゃなるじゃん。キッチンで飲み直す?」
ジュン「じゃあサルだけ来てよ。エミちゃんも!彼女でしょ!」
ーージュン。ナイスショット!
台所で3人が飲み物の用意をしてる間に、ケイにこそこそ小声で話す。
ーーオレ「なあ、どう思う?」
ケイ「エミちゃん?まあ、今のところフツーかな。ねこ被ってるとか?」
オレ「( ・`ω・´)お前、ねこに謝れ。」
ケイ「( ・∀・)おめーの沸点わかりづれー。」
オレ「服だよ、服!」
ケイ「服!?ノースリーブにミニスカ。上着着てたかな?まあ、ちょっとイモっぽいけどフツーだろ?」
オレ「オレから丸見えなんだよ。胸元とかパンツとか。」
ケイ「(*≧ω≦)お前、ジュンが隣に座ってるのに、人の女の事見てるの?怒られるぜ。」
オレ「ちげーよ。自分から見せにきてるって感じなの。乳でけーから自慢してるって感じじゃない。さっき灰皿取り替えますとか、やってたろ。意図的に前屈みなったり、パンツ見えるくらいに足開いてスカート直したり。たぶん、ジュンだって思ってる」
ケイ「どういう事?ジュンいる前で、41に色仕掛けしてるって事?」
オレ「…何か不自然なんだよなー。後でジュンにも聞いてみるけどさ。たぶん最初に『谷間やパンツ見てたでしょ?』って怒られるだろうけど。」
ケイ「わかった。オレもチェックしてみる」
ーージュンたちが飲み物持って戻ってきた。
ジュン「お待たせー!ほらアンタたちもテーブル片付けなさいよ。ティッシュで拭いて!」
ーージュンがグランダッドの瓶とバド持ってる。エミちゃんが三人分のグラスと氷を、トレイにのせて持ってきた。
手伝いに行ったくせにサルは手ぶら。
ーー(*≧ω≦)役立たずだー。1つくらいお手伝いしてこいよ。
エミ「ハイ。41さん。」
オレの前に氷のはいったグラスが置かれる。
ーーまただ。
前屈みで胸チラ。座ってから渡してもいいじゃん。
元々こんな女なのか?オレがスケベで意識しすぎ?
童顔と大胆な露出。…なーんかおかしい。
ジュンの方を見たら目があった。
ジュンも気づいてる。
サルって、こんな女好きなんだっけ?
ヤク以外、みんなの私生活に興味なかったもんなー。
オレ《ーー(*≧ω≦)!あ。悪い事閃いちゃった》
オレ「オレちょっと2階行ってくる。ジュン。一緒に来てー」
オレは閃きのまま立ち上がって動き出す。いつだって善は急げだ。
ジュン「ヽ(*´∀`)ノ♪はーい」
ジュンの反応も早い。ここらへんはツーカー。
オレ《さすがだよ。ジュン。でも悪巧みまではわからないだろ。爆笑させてやっから。》
オレ「先にテキトーに飲んでて!」
サル「おっけー!」
オレ《ん?ーーサルって女にも…。いや、いろなこと無頓着なのかな?オレが気が変わって、2階から何かヤク持ってくるって期待してる?》
そんな顔に見えた。
ーーだとしたらハズレ。だけど当たり。
ジュン「エミちゃんも飲んでてねー。すぐ戻るから」
《タンタンタン》オレとジュンは階段を軽やかに懸け上がる。
2階に行ってジュンと作戦会議開始だ。
良くも悪くも今日もドタバタ。
思考加速された世界。
ジャンキーはいつだって忙しい。




