第40話《マッドピエロ編 踊る大操作戦》
迫真のブラフで、サルの泳ぐ視線から《クロ》を看破し、裏社会の危険な構造を読み解いた41。
「逃げたらやられる」不穏な予感が確信へと変わる。
サルの後ろに見え隠れする『マッドピエロ』の影と、女の肩の死神タトゥー。
「悩み着せ替え当たる」という幻視のメッセージ、ジャンキーの聖域を守るための戦いが始まる。
モードチェンジ完了。ジャンキーなりのプライドを掛けた迎撃作戦が幕を開ける。
第40話《マッドピエロ編 踊る大操作戦》
ここは東京N23区。
新宿ダウンタウン西側の住宅街。
壁に蔦が絡まる一軒家。
仲間しか入れない。
名前なんてどーでもいい。
呼び方と関係性で決まる世界。
そんな世界に友達が突然彼女を連れてきた。
《普通》なら大歓迎するところなんだけど、
オレたちはジャンキー。
普段ユルいけど油断はしない。
そして、エミと名乗る彼女の左肩に死神のタトゥー。
先日、Lをキメて見た幻視のメッセージ
「悩み着せ替え当たる」
その時はジュンに話して爆笑されたけど、何か引っかかる。
アタマの中の警報ランプがチカチカ光る。
まだ音は鳴ってない。
でもーー音が鳴る前に準備しとかないと。
オレが2階、
彼女のジュンは1階で《ヤクネタ容疑エミ》を取り調べ中だ。
ーーーーサル「41。マッドピエロって知ってる?」
オレ「知らねえ。族の名前なんて詳しくない。似たような名前あるしな。そっち?」
サル「いや、族ってわけじゃないんだけとさ。原宿で遊んでる悪いヤツら。聞いたことねえか?」
オレ「それがどうしたの?別にサルがどこで何しようと構わないけどさ。うちに面倒なこと持ってこなきゃいい話だよ。」
ーー先制攻撃。
持ってきたんだろ?「エミ」って名前のヤクネタを。
サル「41に何も言わず連れてきて悪かったよ。お前から仕入れてるって事も。この前だけだったって、エミには言うから。」
オレ「サル。お前さー。エミにもオレのブツ売ってるだろ?」
サル「…ああ。少しだけね。」
オレ「ふーん。それって、さっきお前が言ってたマッドピエロに流れてるんじゃない?お前に女紹介したってヤツも、どうせヤクやってんだろ?サル経由のオレのブツって芋づる式なるけど、お前に止められる?」
サル「…たぶん。」
オレ「( ・`ω・´)たぶんだー!?テメーそれ本当って言い切れんのかコラ」
ーー突然、ぶちギレするオレ。
プラフだ。
オレは立ち上がり、
右手でサルの胸ぐらを掴み立たせた。
顔を引き寄せる。
左手はサルの右腕が使えないように肩から腕を回し、
サルの後ろ襟を掴む。
これで鼻っ面に必殺の41ヘッドパット(ずつき)かませる。
ーーオレは真っ直ぐにサルの目を見る。
怯えた目。
目が泳いでる。視線が右上に動く。
ーー《クロ》だコイツ。
ケイ「おい!やめろよ!」
オレ《ーーケイ。ナイスフォロー!》
オレ「…あー。サル。悪かったな。下にも聞こえちゃったかな…。」
ーーわざと下に聞こえるように怒鳴ったんだけどね。
オレはサルの胸ぐらから手を離した。
ケイ「41。やめとけ。おめーは、短気が臨戦態勢で服着て歩いてるようなもんだからよ。」
オレ《( ;∀;)…それはひどい。言い過ぎじゃね?》
フォローなってないよケイ。
オレそんな風に見えてたの…。
サル「…絶対。『みんな』のこと言わないよ。」
ー今度はケイがぶち切れた。
ケイ「( ・`ω・´)『みんな』だー!?それオレも入ってるってのか?てめえコラ」
オレ《( *´艸`)サーファーこええー。》
サル「違う違う!」
ーサルがオレの時より慌ててる。
サルはオレとケイの凶暴さを、間近で何度も見てる。
飲み屋。繁華街。DISCO。代々木公園に竹下通りまで。
オレたち目立つし、うるさいから、絡まれやすいってのもあるんだけどさ。
ーー(*≧ω≦)おもしれー。
でも、ケイもブラフだろうな。
ハッタリ上等。江戸っ子はスラスラ痰火を切るもんだ。
ケイはサーフィンでパドリングしてるから、
上半身ムキムキ。
《短気怪獣》と《ムキムキ恐竜》に襲われる元暴走族。
それも迫真の演技で。
シュールだなー。
それは、さておきだ。今度はオレが止めないと。
オレ「( ・`ω・´)ケイ!」
オレは、ケイを止めようとして、でかい声で名前を呼んだ。
ーーそれだけだったんだけど…。
ケイ「( ・`ω・´)あ!?」
呼びかけた一言だけで、今度はオレとケイが険悪な感じになった。
2階に上がってから10分もたってないのに。
オレ「ケイ。でかい声出して悪かった。もう少し、話聞こうぜ」
ケイ「わーかったよ!」
オレ「なあ、サル。オレが気になったのは、あの子のタトゥー。お前も「墨」入れてるじゃん。アイアン・メイデンとかグレイトフル・デッドのレコジャケみたいなヤツ。あれってお前とお揃い的な感じで入れさせたの?」
サル「あ。タトゥーか。入れたいって言うからさ。オレが入れた彫り師紹介するって話になってさ…。」
オレ「デザインも?死神入れたいって?」
サル「いや、タトゥーは知り合いのとこに頼むからいいって話になったんだよ。そしたらあのタトゥー入れてきたんだ。」
オレ「その知り合いって、お前の昔の仲間じゃないの?そのマッドピエロとかって人たちのさ」
サル「…そうかもな。よく聞いてない。確かめてみようか?」
ケイ「41。マッドピエロってさ…。」
オレ「うん。名前は知らないけど、原宿で悪さしてる連中がいるって噂は聞いたことある。女を『沈めて』最後には、ソープに売り飛ばすとか。関係ないから都市伝説みたいに聞いてた。ほら、だるま女とか、ハワイに新婚旅行行ったら、奥さん行方不明なった的な話。昔から、そーゆーのあるじゃん。」
ケイ「サル。…もしかしてそれなの?」
サル「…たぶん。わかんねえ。でもオレはそんなことしてねえよ。そのグループに入ってねえし。ちょっと、つきあいあるだけだよ。」
オレ「つーかさ。お前、女の前にそのマッドなんちゃらの友達にオレのブツ渡したろ?その後に、女紹介するって話になったんじゃないか?」
サル「…そう。」
ーー図星だ。構造が見えてきた。
サルは道化。
マッドピエロって道化に踊らされてる道化って、気づいてない。
ここで教えるのも酷だし。まだ確定した訳じゃない。
ーーたぶん、これはきっちり決着つけないと、終わらない案件だ。逃げたらやられる。
…(´・ω・`; )めんどくさいなー。
サル…『切り時』かな。
ケイ「41。どうすんだ?何かわかった?」
オレ「何となくね。じゃあ下に戻ろうか?」
サル「オレ、何かヘマした?」
オレ「とっくにしてるよ。でも、お前とオレのブツブツ交換は、しばらくやめにしよう。」
サル「えー?オレ今日、41にハッパ持ってきたんだよ。」
オレ「しばらくって言ったろ。そのうちなって事だよ。下で一服するならしよう。悪いけどオレは今日、お前の女の前では、一切ヤクを出さないし見せない。もらったら吸うくらいはつきあうよ。」
ケイ「オレも持ってきたんだよ。いろいろさ。どうする?」
オレ「サル。先に下行っててくれ。彼女待ってるだろ?…それと、オレの連絡先教えてないよな?お前のアタマの中だけだよな?これ以上何も教えるなよ。約束!」
サル「教えてないよー。約束するってば。」
ーーこれは、本当だろう。
サルが階段を降りて行った。
ーーーー
ケイ「41。何なの?どういう事だ?」
オレ「( ・`д・´)じっちゃんの名に懸けて!」
ケイ「( ・∀・)…話が三段跳び。名に懸けて何すんだよ?まるでわかんねーw」
オレ「ケイ。お前も、今日アルコール飲むな。車で来てるんだろ?」
ケイ「ああ。別にいいよ酒なんて。ハッパとかあるし。」
オレ「これやる?」
ーーオレは引き出しから一枚の紙を取り出した。
不気味なピエロの絵柄。オレが幻視したLSDだ。
オレ「効くよコレ。一枚で十分。この前にオレンジサンシャインと『星形』のやつ分けてくれたお礼。」
ケイ「…41。お前、今ニコニコしてっけどさ。スゲー悪い顔になってる。何かたくらんでるだろ?」
オレ「(*≧ω≦)フフン。ジャンキーの戦い方、見せてやるよ」
ケイ「( *´艸`)何と戦うんだよ?」
オレ「(*≧ω≦)悪と!下に行こうぜ!」
ケイ「まあ、いいや。オレの持ってきたのはいる?」
オレ「当然もらう。そんで、もうひとつ頼みがある。」
ケイ「何だよ?」
オレ「帰りにサルと女乗せて帰るんだろ?いつもと違う道使って帰ってくれ。なるべくごちゃごちゃしたとこ」
ケイ「何で?」
オレ「あの女に家を覚えられたくない。わかるよな?」
ケイ「なるほどね。何か仕掛けるんなら手伝うから」
オレ「越後屋。お主も悪じゃのう…。」
ケイ「お代官様こそ…。」
オレ「ケイ。オレが何するかわかって言ってる?」
ケイ「いや、ぜんぜん。」
オレ「じゃあ、とっととブツブツ交換して下に戻ろう!」
ーーオレとケイの取引は終了。下でジュンが待ってる。ヤクネタの相手なんかさせてゴメンな。敵とってやるから!
ーー(*≧ω≦)にー。
あれ?何だこの笑い方は?
…こんな笑い方するやつどこかで見たな。
オレ「まあ、いっかー!」
《タンタンタンタン!》
階段を軽やかに降りる。
オレ「わりい!お待たせー!」
ジュン「悪いって顔してないよw」
ーー「悩み着せ替え当たる」か…。
悩んだ。モードチェンジ完了。…たぶん当たりだ。




