第39話《マッドピエロ編 幻視の符号。予感の予感》
ヤクの神様と踊る夜があれば、足元から不穏な影が忍び寄る夜もある。
『悪い事やってんだから、人として悪い事しないようにしようぜ』ーー。
それがオレたちのやり方であり、美学だった。
だけど、時代の波に乗って流れ込んできた闇は、そんな甘っちょろい美学なんて容易く飲み込んでいく。
不意に現れた見知らぬ女、サルの口から出た『マッドピエロ』という不気味な名前。
そして、あのサイケなLSDが見せた狂気の幻視。
バラバラだったピースが、嫌な音を立ててひとつに繋がり始めていた。
第39話《マッドピエロ編 幻視の符号。予感の予感》
ここは東京N23区。41の家。
ジャンキー仲間のケイとサルが遊びに来ている。
いつもと違うのは、サルが見知らぬ女を連れてきたこと。
オレは、いけないことをやってるんで、身バレがイヤ。
だから、友人の友人だろうが、彼女だろうが初見はお断り。
ましてや、家なんて知られたくない。
サルは、それを知ってるくせにさ。
笑って許してもいいんだけど、
この女は何か引っかかる。
というか。
オレ《怪しいんだよな…。》
オレはベースを手に取り、勝手に遊び出す。
《音の結界》を張った。
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ジュン「ねえ、ジュピタン。ベース弾くなら2階行ってきなよ。うるさいから、エミちゃん話できないよ。それに、男たちで話す事あるんでしょー。」
オレ「あ、そっか。ゴメン。いつもの癖で。ケイ、サル。上に行こうぜ」
ケイ「わかった。」
サル「エミ。ちょっと上に行ってくるわ。」
オレ《ジュン、ナイス。さすがだね》
ジュンは古風なとこがある。
男を立てる感じ。
オレ《( `・ω・´)ノ ジュン。聞き込みヨロシクー》
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うちは、けっこう広い。
2階に4部屋ある。
元々はお祖父ちゃんが、
東京に仕事や遊びに来たときのためにと買った家だ。
いろいろあって、
ガキの頃から独り暮らししている。
チェリーってねこいたんだけど、亡くなっちゃった。
何年も、ねこロスが続いてる。
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2階のオレの「本気部屋」
ーー趣味の部屋に二人を通した。
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オレ「サルー。女とか他のやつ連れてくるなら、先に言えよなー」
サル「わりい。エミがおまえに会ってみたいって言うからさ。」
オレ《( ・`ω・´)コイツ女のせいにしやがった》
オレ「で、あの子誰よ?どこまで教えた?」
サル「いや、お前やケイと遊んでた時の話だよ。おまえたち、ぶっ飛んでるし面白いからさー。この前、首都高走ったとき同じ幻覚見たって話とかさ…。」
オレ「それは別にいいよ。ヤクの話。ここはさ、お互い《誰のネタ》って話さない事にしてるだろ。もしもの時 考えたら《知らない》が一番いいからって約束したじゃん」
ケイ「サルー。話しちゃえよー。どうせバレる。つか、バレた時の41の方が怖い。41。オレは、ここでのつながりは誰にも話してねえ。信じてくれ」
オレ「ケイ。信じてるってば。サルの事だって信じてるから、ホントの事、聞いときたいんだよ。」
サル「…わりい。エミにオマエから回ってきたって言っちゃったんだ。」
オレ「何を?」
サル「…最近のヤツ全部。」
オレ「何で?」
サル「…41の持ってくるヤツが全部、極上だから。こんなのどこから手に入れてるの?って話からさ。ふだん41と遊んでる話してるから…。」
オレ「なるほどねー。これ41さんの?って聞かれたわけだ。そこの答えは《違う》とか《ナイショ》だろ。オレはジュンにも話さないし、ジュンだって聞いてこない。お互いに守り合ってるからだ。知ってるだろ。」
サル「そうなんだけどさー…。」
オレ「他には?つーか、あの女どっから連れてきた?この際だから全部吐け。」
ケイ「おー。こええ。」
オレ「ケイ。お前も全部知ってるのか?」
ケイ「いや、41にバレたらヤバイよなって、女に話しちゃったとこまで聞いた。後は知りたくねえし、面倒なことに、巻き込まれたくねえから聞いてねえ。女も車でサル迎えに行ったとき初めて会ったんだ」」
ーーケイ。正解だよ。
でも乗せてこなきゃもっと良かったけど…流れ的に無理か。
…家知られたのイヤだな。
ーーくるくると思考が回る。
やな予感。
可能性の計算。
最悪の未来視。
回避方法。…迎撃方法。
ーーーー
サル「昔の族仲間に紹介されたんだよ」
オレ《こいつの昔の仲間って…。》
ーーここにいるのは、全員不良。
オレは不良の嗜みで音楽。
ケイはサーファー。
サルは暴走族上がりだ。
ーーやっぱりか。
オレ「じゃあ、あのエミって子はオレとサルと取引してるの知ってるわけね。昔の仲間からって言ったけどさ。あの子は、その仲間の何なの?タトゥーも気になるんだよね」
ケイ「まるで取り調べだなーw。あまり責めてやるなよ。」
オレ「あー。そうだな。もう起きちまった事はしょうがない。でもさ、何か悪い予感がするんだよ。」
ケイ「41の予感はよく当たるからな。それで助かった事あるし。サル。この際だからオレも聞いときたい。じゃないとこの空気耐えられない。下で女たちも待ってるし。」
サル「マッドピエロって知ってる?」
オレ「知らねえ。族の名前なんて詳しくない。似たような名前あるしな。そっち?」
サル「いや、族ってわけじゃないんだけとさ。原宿で遊んでる悪いヤツら。聞いたことないか?」
ーージャンキー。
この業界っていろんなヤツがいる。
オレたちみたいにピースフルでハートフルなのは珍しい方だ。
六本木の極悪姉弟。
混ぜ物でかさ増しした劣悪なコークや、
エクスタシーをぼったくり価格で売ってる。
新宿で偽物を道路で売りつけてるアジア人やイラン人。
DISCOで、効きもしねえジョイントを、
1本10000円で売りつけてくる黒人。
悪い事やってるから、
悪いヤツがいるのが当たり前になってきた。
オレが覚えた頃は《選ばれたヤツ》にしか与えられない遊びだったんだけどな。…そっか。
オレとオレを導いた人たちは、もう《老舗》なんだな…。
そりゃ極上だし中抜きもないブツに決まってる。
《悪い事やってんだから、「人」として悪い事しないようにしようぜ》
そんな甘っちょろい事、通ってたのは昔話なのか。
…蔓延。
他人事みたいに聞いてたけど、いつの間にか裾野は広がってた。
だって、低次元のヤツらなんて、
危なくて近づこうとも思わない。
…上ばかり見てた。
悪いけどカッコよく遊ぶ大人たち。
いいお手本がいたから道を外さずこれたんだ。
これからは足下も見なきゃ…。
オレ《マッドピエロ…?原宿…、あ!》
ーーそうだ!思い出した。
名前は知らないけど、
原宿で悪い事やってる集団の話は噂で聞いた。
ヤクで女沈めて風俗に売り飛ばすヤツらがいるって。
…本当だったの?…まさかね。
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この前、手に入れた不気味なピエロの絵柄のLSD。
ーピエロの符号が一致する。
ピエロに見せられた360度スクリーンの幻覚。
何万ものブラウン管モニターが、複眼のようにオレを囲んでいた。
遠目を凝らしてブラウン管に映っていたのは、
切り取られた景色。
オススメ料理の貼り紙がある定食屋。
出演者リストが貼られてるライブハウス。
シャッターに貼られたチラシ。
昔のタバコ屋。
窓口の横に置かれた木版画…。
貼り紙やチラシ、
木版画に書かれてた様々なメッセージ全てが狂気の一文。
幻覚を読み上げるとジュンは爆笑してメモ取ってた。
ジュン「ヾ(≧∀≦*)ノ〃キャハハハ!それ何の占いー?」
そのひとつが《悩み着せ替え当たる》
予感の予感?
幻視の符号は悪い予感と一致していく。
オレ《あれは幻覚…。だけじゃねえ。夢でも見たような…》
既視感のピースが一つずつはまっていく感じがした。




