第32話《ニルヴァーナ編 扉を開くモノ》
第32話《ニルヴァーナ編 扉を開くモノ》
ここはよろずや正面玄関。
そこに巨大なメロンが《直立》している。
万能構造機体《メロン号》だ。
それは、触手上に変化する外皮の《シワ》が縒り合わさった二本の足で立っていた。
ーー
ねこにゃん「ほら、かみかみ。メロン号乗るにょさ。どっちから乗る?」
かみかみ「《抱っこ》してもらう。上から入るお」
ぴょこにゃん「わかったにゃ。メロン号。かみかみ抱っこして乗せるにょさ」
メロン号ーー《YES》
ぴょこにゃんの指示に従い外皮の《シワ》が触手上に伸び《腕》と《手》を作る。
手の先から数本の指が伸び、かみかみを優しく抱き上げた。
そして、別の腕が伸び、メロンのヘタを掴む。
《パカッ》
メロンアイスの蓋を開くようにメロン号の上部が丸く開いた。
まるで帽子を脱いで挨拶をしてるようだ。
かみかみは抱き上げられたまま、用意されたフカフカソファシートに座らせてもらった。
かみかみ「(*≧∀≦)これがいいんだよねー。メロン号ありばどね。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)フフフ。ゴキゲンだにゃ。」
ぴょこにゃん「メロンでねこドライブにゃん」
ーー今日は、いよいよ、かみかみを連れてニルヴァーナへ出発するのだ。
世界樹の《ブロック》対策として、オートパラレル機能を搭載。前回、上空の暗雲の放射能嵐や宇宙放射線の雷撃対策も万全だ。
重力コントロールとゼロ加速ゼロ減速の慣性制御は精度を上げている。外観も以前より美味しそうな高級マスクメロンゴールドになった。
ーー
ねこにゃん「じゃあ、行ってきますにゃ。アムリア、お店頼むにゃん」
ぴょこにゃん「行ってみないと、何起こるかわかんにゃいからにゃ。留守を頼むにゃ。もし…」
アムリアがぴょこにゃんの声を遮る。
アムリア「( ・`ω・´)ダーメーよ!《もし》とか言っちゃ。かみかみだけでも返すのよ。アンタたちはいいから」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)いつも、最後まで話聞かないよにゃー。もし、欲しいお土産あるならって言おうとしたにゃん」
アムリア「( ・`ω・´)そんなのアンタたちが気を利かせて買ってくるもんでしょ!Top'sのチョコレートケーキ買ってきて!」
ねこにゃん「(´・ω・`; )それ、ニルヴァーナじゃなくても、いつでも買えるにゃん。ここ新宿御苑に被せてある街にゃん。丸ノ内線で二つ目にゃ」
アムリア「地下鉄乗ったことあるの?」
ねこにゃん「(*≧∀≦)もちろん、にゃいよ」
ぴょこにゃん「(´・ω・`; )とにかくチョコレートケーキだにゃ。ついでにひよこでも何でも買ってくるから待ってるにょさ。出発気分落ちるにゃー…」
アムリア「( ̄^ ̄)アタシ悪くにゃいわよ」
かみかみ「ケンカしちゃダメだお。早く行こーよー」
メロン号の中からかみかみの声が聞こえてきた。
アムリア「( =^ω^)かみかみー。気をつけてねー」
ねこにゃん「(´・ω・`; )…温度差。じゃあ、行ってくるにゃん」
アムリア「ティラミスもね。早く帰ってきてね、かみかみー(*≧∀≦)」
ねこぴょこたちはメロン号の中に、外皮をすり抜けるように入っていった。
ーーメロンの《ヘタ》の部分が発光する。
音もなく垂直に上昇。
メロン号はニルヴァーナ方向へ、直角に進路を曲げ飛んでいった。
ーーーー
《クーーーーーーーーーン》
メロン号の室内は風切り音もしない。
ファンカデリックやCAMEO、METERSなど、ねこぴょこの好きな音楽が次々と流れている。たまに、山口百恵やキョンキョン、松田聖子、西城秀樹など歌謡曲がかかるのは、かみかみのリクエストだ。
ーー
ねこにゃん「メモリしてあるから、早いにゃ。もう見えてきたにゃん。」
かみかみ「えー。もう?もっと景色見たいおー。」
メロン号は全天モニター。座っているソファまで消せる。360度の視界。背面飛行して大地を見上げても重力コントロールによりストレスフリーで滑空できる。
ぴょこにゃん「この旅、終わったらメロン号、かみかみにあげるにゃんよ」
かみかみ「ホント!でもこんな大きいのもらっても置くとこにゃいよ」
ねこにゃん「おまい、ふだんメロン号どこにあるか知ってるか?」
かみかみ「知らない。そーいえば外でも見たことないお」
ぴょこにゃん「おりたちの、ポケットにゃ」
かみかみ「ポケット?」
ねこにゃん「基本サイズは食べるメロンと同じだけどにゃ。大きさ変えられるにゃん。いろいろ入るから、ベルトつけてショルダーバッグにしてあげるにゃ」
かみかみ「食べられる?」
ぴょこにゃん「今のはボケなにょか?」
かみかみ「いやフツーに」
ねこにゃん「(*≧∀≦)天才かよ」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)いや、バカにゃん」
かみかみ「ι(`ロ´)ノ何がおかしいんだお?」
ねこにゃん「ほめてるにょさ。さあ降りるぞ。」
ーー
眼下には世界樹の森。
目の前には漆黒の雲が生き物のようにうねっている。
ーー
ぴょこにゃん「あれ、この前見たときわからなかったけど。似てるにゃ…。」
ねこにゃん「言われてみれば…色違いの」
暗雲は、ねこぴょこたちがアルファ・ベータであった頃の異空間の模様に似ていた。
虹色の縞模様の空間。
それが黒を基調とした濃淡で描かれている。
サイケvs水墨画だ。
ーー
ぴょこにゃん「なるほどにゃ。雷撃に惑わされてたにゃん。真空のエネルギーのコツで重力の嵐や放射線の雷撃作ってるわけね。呆れるにゃん」
ねこにゃん「これも、エスネコのイタズラにゃ。ふざけ方は天性のものだにゃ。おりたちの個性も転写されるもんなにょかー。」
かみかみ「どーゆーこと?ていうか、エスネコって何なの?話してもらったけどわかんないお」
ぴょこにゃん「まあ、おまいと同じ家族みたいなもんにゃん。おりたちと同じ成分でできてるにゃ。」
ねこにゃん「子供なのか兄弟なのかわからんけどにゃ」
かみかみ「ふーん…。まあいいお。」
ーーたぶん、まるでわかってない顔だ。
ぴょこにゃん「とりあえず森の前に降りるにゃ」
《クイーン…》ーー《スゥン…》
上空からメロン号が降下し着陸。
外皮から三人がすり抜けて外に立つ。
ーー静寂。
以前訪れた時と雰囲気が異なる。
ねこにゃん「あれ?」
ぴょこにゃん「もっと最初から、空気がキリキリしてたよにゃ?」
ねこにゃん「とりあえず、クローン行かせてみるか?」
かみかみ「ん?ちょっと待ってて。ママが呼んでるから」
かみかみは《スパタタタター》と森の中に入っていった。
ねこにゃん「おい!かみかみ!」
ぴょこにゃん「いや平気そうにゃ。待ってみるにょさ…。」
するとまた、かみかみが《スパタタタター》と戻ってきた。
かみかみ「通っていいって!」
ねこにゃん「( ̄~ ̄;)マジすか。この前の何なんだったんすか。まだラジオ体操もしてないっすよ。」
ぴょこにゃん「おい。ねこにゃん。スプレーしとくにゃん」
『接触無効スプレー』
この前の経験からぴょこにゃんが《マッドサイエンティスト》の能力で開発したスプレーだ。
触れたら感触をゼロ相殺できるコーティングスプレー。蚊や虫刺されにも効く。
《シューッシューッ!》
全身に吹き掛ける。
メロン号も触手の腕で全身にスプレーしている。
ーー
ねこにゃん「どうする?空から行くか?あの縞模様が異空間と似てるなら重力サーフィンできそうにゃん。」
ぴょこにゃん「その前に、かみかみ。通っていいって、どこから入るにょさ。」
ーーまた、かみかみが森の前まで走っていった。
そして、ねこぴょこたちを呼ぶ。
かみかみ「こっちにきにゃよ。ここから入れるおー」
ねこにゃん「(;`・ω・)ノはーい」
ぴょこにゃん「おりたち、今のところ良いとこなしにゃん」
ーーねこぴょこたちが、かみかみの後ろに立つ。
有刺鉄線のように絡んだ世界樹の幹や枝、
地上に張り出した根が見える。
ーーとても入り口には見えない。
するとーー。
かみかみ「ほい!」
ーーかみかみの手のひらから小枝が現れた。
かみかみ「開けゴマ!」
かみかみが小枝を握りしめ縦に軽く振る。
《バキバキバギバキ…》
《ゴゴゴゴゴゴ…》
森が割れていく。
ねこにゃん「かけ声がアラビアンナイトかよ。それにこれ映画で見たことあるシーンにゃん。海割ったやつ。」
ぴょこにゃん「あれだろ?十戒。こいつ小枝で森割ったにゃん…」
ねこにゃん「これが《カギ》…か」
ぴょこにゃん「開いたものの、けっこう深いにゃあ。罠じゃないよね…。」
かみかみ「大丈夫だから、進むお。」
ぴょこにゃん「何が起きるかわからんにゃ。いったん全員メロン号に乗れ」
かみかみ「通れるにょにー。」
ねこにゃん「おまいにケガさせるわけにいかにゃいにょさ。」
ぴょこにゃん「おいで。みんないっしょの方が迷子にならないにゃろ」
かみかみ「わかったおー」
三人がメロン号に乗り込む。
ねこにゃん「メロン号、歩行小走りモードにゃ。地面との設置点は最小に。オートパラレルON。いつでも逃げれるようにしとくにゃ」
全天モニターに《YES》の文字が浮かぶ。
メロン号のシワが足になり歩き始めた。
本体を囲むように編み目上に他の外皮の《シワ》も開き出す。
《全方位編み傘ガード》
ぴょこにゃん「メロン号、根っこに絡まれたらすぐ足切り離してMAXで上昇するにゃぞ」
ーーメロン号《YES》
かみかみ「ボク乗ってるから大丈夫だってば。」
ねこにゃん「確かに、おまいがカギだってのはわかったにゃん。森が開いたけど、おまい、この先って知ってるんか?」
かみかみ「知らんお。ボクが《ボク》になったのこの前だし。」
ぴょこにゃん「(´・ω・`; )ややこしいにゃー。その前の記憶は?」
かみかみ「ん?知らんお。」
ねこにゃん「(´・ω・`; )ですよねー」
ーー
30分ほど進んだとき、先に山脈のような地形が見えてきた。山の頂きは暗雲で見えない。
ぴょこにゃん「おい、あれ。」
ねこにゃん「あれがニルヴァーナ?」
ぴょこにゃん「いや、違うにゃ…たぶん、あの先…。」
ねこにゃん「ぴょこにゃん、二次元レンズ起動するにゃん。肉眼で行けるとこじゃない。勝負の心で観測開始にゃ!」
ねこにゃん「よーし。二次元レンズ起動!三次元ねこボディ解除。十一次元構造体へ復帰!」
《シャオッ》ーー《スンッ!》
ねこにゃんとぴょこにゃんは、一瞬でレンズ形態から三次元ねこボディに再構築した。
かみかみ「ありゃ?」
かみかみからは、ねこにゃんとぴょこにゃんの姿が、一瞬、陽炎のように揺らいで見えた。
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)かみかみ。今からパパたちのカッコいいとこ見せてやるにゃん」
ねこにゃん「じっくり観測してやるにゃん。多層多次元の因果を集束!マルチバースモード!」
ぴょこにゃん「よし!イレブンで刻むぞ!」
ねこにゃん「リアルフォーカス!」
ぴょこにゃん「《遠い手》で掴んでやるにゃん!」
かみかみ「何言ってるかさっぱりわからにゃいお。せつめーして!」
ねこにゃん「んー。ム、ムードかにゃ?」
ぴょこにゃん「ねこは雑だにゃー。」
ねこにゃん「雑貨屋さんだからにゃ」
ぴょこにゃん「おまい、あっちに行ってろにゃ。パパたちはにゃ。ふざけないと最適解…じゃなかった。いい答え出ないにょさ。アナログって言ってもわかんないよにゃ。んーと…。カッコいいって思って喋ってました!さーせん!」
かみかみ「ふーん。まあいいお。絵日記に書いとくお。」
ねこにゃん「ありゃ?いつ出したそれ?」
かみかみはいつの間にか、ノートのような束ねた紙とペンのような小枝を持っていた。小枝には様々な色の花が咲いている。
ぴょこにゃん「なるほどにゃー。紙は《木》からできるもんにゃ。三神神神の力ってわけだにゃ」
かみかみ「何言ってるかわからないお。せつめーして!」
ねこにゃん「このくだり、沼るにゃ。あとでにゃ。」
かみかみ「( ̄^ ̄)まあいいおー」
ーー
かつての部族が語り継ぎ、シャーマンが精霊より伝えられたタブー。
「あの山の向こうは、あの世だ」
「行った者も帰った者もいない」
「見ることも立ち入ることもできぬ場所がある」
ーー
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)誰にでも初めてはあるにょさ。おりたちだって、初めてだらけにゃ。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)ニルヴァーナ。おまいにも《初めて》見せてやるにゃん!」
二柱の虹色に輝く瞳の奥。
曼荼羅模様の11個のレンズが起動した。




