第30話《ニルヴァーナ編 かもネギの小枝ねこ》
第30話《ニルヴァーナ編 かもネギの小枝ねこ》をお届けします!
にゃんこシティ中央公園のフリマでサボり、アムリアに叱られるねこにゃんとぴょこにゃん。
ぶらぶらと歩くふたりが公衆トイレの前で見つけたのは、ぽつんと座るレモンイエローの仔猫だった。
「特価90円」の値札。そして差し出されたお釣りは、あの【ギザ10】——!?
聖地ニルヴァーナの《世界樹》からやってきた無邪気で生意気な仔猫「かみかみ」。
突如始まった、新しい家族との愛おしい日常がスタートします!
第30話《ニルヴァーナ編 かもネギの小枝ねこ》
ここはにゃんこシティ中央公園。
今日はフリマが開催されていた。
自我に目覚めた「ねこ神」たちで賑わっている。
神といっても《概念》がねこの姿になっているのが正体である。
アムリアがファンから「神」と呼ばれ崇められているのも、アムリアが《恋》の概念であり、それを司る者としての能力による。
異彩を放つアムリアの姿も、その能力に最適化されたものだろう。
ーーーー
ねこにゃん「ここもフツーの街らしくなってきたにゃ」
ぴょこにゃん「( ;∀;)パパ感無量にゃ。あのゾンビたちが、こんにゃに…、グス」
ねこにゃん「( ;∀;)あなたったら、ワタシまで泣いちゃうじゃにゃい…」
ーーいつもの二人の茶番。
そんな風に、いつも通りのふざけた空気をまき散らしていたのは、ねこにゃんとぴょこにゃんの二柱。
そこに、売れっ子店長アムリアが怒りをぶつけにやってきた。
いまや彼女に逆らえる者など、にゃんこシティにはいない。
ーー
アムリア「( ・`ω・´)ちょーっとぉー!アンタたち、ふざけてないで真面目にやんさなさいよね。アタシの写真集とかグッズ販売で出店してんだから。アンタたちのクローンやゴーレムの方が、よっぽど働いてるわよ」
ねこにゃん「そりゃそーにゃん、だって、そういう風にプログラムしてんだもんにゃー」
ぴょこにゃん「おりたちやアムリアが楽するために用意したもんにゃん」
アムリア「( ・`ω・´)そういう問題じゃないのよ。」
ねこにゃん「( ・-・)どんなもんだい?」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)どんなもんだいっ!」
アムリア「( ・`ω・´)そーゆーとこよ。クローンたちが真面目にやってるから、なおさらアンタたちが、サボってる風に見えるの!お手本としてしっかりしなさいよね。」
ねこにゃん「サボるために作ったにゃん」
ぴょこにゃん「ダメにゃの?どゆこと?」
アムリア「お客さんから言われてるのよ。店員さん、みんな同じ姿なのに、あの二人だけ働きませんねって!」
ねこにゃん「お客さんには、おりたちの本体とクローンの見分けがつかないからか…」
ぴょこにゃん「だから、おりたちが目立つわけね」
アムリア「( ̄^ ̄)わかった?遠くから見てたけどアンタたちムダ話ばっかして、お客さんに声がけもしてないじゃない。もう、ここもクローン置いてアンタたち、どっか行ってきていいわよ。フンッ」
ねこにゃん「( ;∀;)最近うちの娘から、お父さんと洗濯物分けてって言われるんだよ。昔はパパ、パパって呼んでくれたにょに…。」
ぴょこにゃん「( ;∀;)うちも空気扱いにゃ。娘も母さんにも無視される。目も合わせてくれにゃい。この前やっと口を聞いてくれたと思ったら、同じ部屋の空気吸うのイヤって…」
ーーさらに地雷を踏む。
アムリア「( ・`ω・´)…おいコラ」
ねこにゃん「(*≧∀≦)はい!ク、クローンでしたね」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)す、すぐ作りますにゃ」
二人から分身が現れる。
それぞれのクローンに命令を与える。
ねこにゃん「おい、おまいら。ここの商品売りさばくにゃん」
ぴょこにゃん「真面目っぽく仕事するんだぞ。わかってるにゃ?」
ーークローンが本体と同じ笑顔で頷く。
ねこにゃんクローン「完売しますにゃ」
ぴょこにゃんクローン「真面目っぽくですね。了解しましたにゃ」
クローンたちは、さっそく歩いてるねこたちに声をかけ始める。
クローンたち
「アムリア様の写真集にゃん!」
「グッズやCDとセット販売で肉体スタンプが3倍にゃよー」
アムリア「( ;-`д´-)最初からクローンにしとけばよかったワ。ったくもう…。アンタたち見えないとこで遊んでくるのよー」
ーーーー
ねこにゃん「( ・∀・)おりたち、ここの支配者じゃなかった?」
ぴょこにゃん「( *´艸`)まさかの転落人生にゃん」
ねこにゃん「せっかくだからフリマ見て回るにゃん」
ぴょこにゃん「にゃんか面白いもの売ってるかにゃあ」
ねこにゃん「(*≧∀≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)にー」
ーーーー
ねこにゃん「あれ?」
ぴょこにゃん「ん?」
その視線の先ーー。
フリマでは商品を置くには不人気の場所。
人通りの少ない、公衆トイレの前。
商品どころか通行人すら通らないような場所に、一匹の子ねこがぽつんと座っていた。
レモンイエローの子猫だ。
ここの住人のほとんどは白ねこだ。
「カラード」と呼ばれる色持ちは珍しい。
アムリアのように自我と自意識がしっかりしてるモノたちは、カラード(色持ち)でネームド(名前あり)のねこ。自我と概念の個性を持っている。
「カラード」は、ここではまだ希少な存在だ。
見たことのないレモンイエローのねこ。
前足を立てピンと背筋を伸ばし座っていた。
眉間にシワを寄せ目をつぶっている。
居心地が悪いのか、照れてるのか、不機嫌そうにも見える。
黄色いねこの値札は「特価100円」にバツ印をつけ、「特価90円」と割引価格になっていた。
値札はどこで探してきたのかもわからない大きな葉っぱである。
葉っぱは地面に突き刺された「小枝」から生えている。
よく見ると葉っぱの値札の文字は書いたものではない。葉脈が色をつけ文字を作っていた。
ーー
ねこにゃん「にゃんだアイツ?街では見たことないやつにゃん」
ぴょこにゃん「新種の概念かにゃ?」
ねこにゃん「(*≧∀≦)話してみるにょさ」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)ねこ賛成!」
二人は黄色のねこの前にしゃがみ、目線を合わせる。
ねこにゃん「(*≧∀≦)なあ。おまい自分を売ってるにょか?」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)どこから来たにゃ?言葉わかるか?」
二人に話しかけられた子猫の頬が赤くなった気がした。
ねこにゃん「面白い!買った!釣りはいらん。ほら100円」
ねこにゃんはポッケから100円玉を差し出した。
すると子猫がバチリと目を開く。
初夏の若葉のようなグリーンの瞳。
初めてアムリアを見たときの感覚が、デジャブのように思い出される。
《異質》
《愛くるしい》
《抱きしめたい》
レモンイエローの体毛は近くで見るとふかふかだ。
真ん丸お目目にグリーンの瞳。
小さなお口は人形のようだ。
子猫「じゃあ、ハイお釣り。10円ね」
くりくりの目で10円玉を返された。
どうも最初から10円しか持ってなかったよう。
もしかして、買い物ごっこがしたかったのだろうか?
ねこにゃん「ん?」
ぴょこにゃん「ぬ?」
ねこにゃんが、受け取った10円玉をまじまじと見つめる。
ねこにゃん「あれ?…この10円て?」
ぴょこにゃん「…《ギザ10?》」
二人の背筋が、ぴたりと凍る。
ぞくり――と鳥肌が立った。
小さな10円玉には見覚えがあった。
ニルヴァーナを囲む森の「世界樹」に完敗した記憶はまだ新しい。
逃げようと飛び乗ったメロン号も木に巻きつかれ、脱出は不可能かと思われたーー。
そのとき、ねこにゃんが咄嗟に10円玉を使い、メロン号ごとパラレル化。なんとか逃げ切ることができたのだった。
ーー
子猫「そーゆーことだから。ヨロシクね」
ねこにゃん「そーゆーことって?おまい、あの時の…小枝!?」
ぴょこにゃん「まさかの、かもネギ?」
子猫「ボクはかもネギなんて名前じゃないお。名前は『みかみ、かみかみ』。かみかみって呼んでね」
ねこにゃん「おまい、おりたちを追ってきたにょか?」
ぴょこにゃん「おまいに焼かれたにゃん。…まさか仕返しに来たにょか?」
かみかみ「違うお。ママに頼んだんだ。そしたらママも言ってたし」
ねこにゃん「ママって…。おまい《世界樹》の子供にゃのか!?」
ぴょこにゃん「何て頼んだにょさ?その《世界樹のママ》は何て言ってたにゃ?」
かみかみ「頼んだのは、おまいたちみたいな姿になって外の世界を見たいって。ママは言ってた。ボクが《カギ》で、おまいらが《扉を開くモノたち》だからって。わけわかんにゃいよねーw」
ねこにゃん「よし!(*≧∀≦)わけわかったにゃ。おりは《ねこにゃん》おまい今日から、うちの子にゃ」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)おりは《ぴょこにゃん》お腹すいてにゃいか?うちに来るにょさ。いっしょに帰るにゃん。ついておいで」
突然、現れた世界樹からの遣い。
二人に憧れ、10円玉を握りしめ追いかけてきた子猫。
それは、ぴょこにゃんに巻きつき、ねこにゃんが折った小枝だった。
二人と手をつなぎ三人で歩いていく子猫たち。
ねこにゃん「ところで、おまいの名前誰がつけたにゃ?『みかみかみかみ』って。噛みそうな名前にゃんw」
ぴょこにゃん「何か名前に意味あるにょか?」
すると、かみかみが二人からそっと手を離す。
手のひらの肉球から、先ほど地面に突き刺されていた小枝が出てきた。
もう、葉っぱはついていない。
かみかみ「名前はママがつけてくれた。んーとね。こういう字らしいんだお。わかんにゃいよねー」
また小枝から葉っぱが生えてきた。
そこに『三神神神』の文字が葉脈に現れる。
かみかみ「ボクは字を読めにゃいけどね。どういうイミ?ていうかイミってにゃに?」
ねこにゃんとぴょこにゃんが珍しく真顔になった。
ねこにゃん「三つの神で『みかみかみかみ』か…」
ぴょこにゃん「でも、おまい、もしかしてバカにゃの?」
かみかみ「バカって言う人はその人がバカだお」
ーかみかみが、きょとんとした顔で言い返してきた。
ねこにゃん「(((*≧艸≦)ププッぴょこにゃん、一本取られたにゃ」
ぴょこにゃん「おまい、その言葉の意味知ってるにょか?」
かみかみ「知るわけないじゃん。ママの記憶からパッと出ただけだお。だからイミってどういう意味よ?」
ねこにゃん「( *´艸`)そっか。こいつ、ちょっと前まで《木》だっからモノ知らないにょね」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)ゆっくり、いろいろ覚えていけばいいにゃん。ここは楽しいことばっかりだからにゃ。家族できて嬉しいにょさ。」
かみかみ「(*≧ω≦)まあ、いいお。」
ねこにゃん「なあ、(*≧∀≦)にーってやってみ。にーって
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)にー。だよ。こう」
かみかみ「(*≧∀≦)にー」
ーーまるで生きてる人形だ。
何をやらせても《可愛い》のだろう。
ねこにゃん「(*≧ω≦)コイツ可愛いにゃん」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)アムリアに見せてやるにゃん」
かみかみ「( ・`ω・´)アムリアってにゃに?」
知らない言葉が出たとたん、眉間にシワを寄せてちょっと不機嫌な顔になる。
ーーなんだか扱いづらそう。
でもその、めんどくささが、たまらなく愛しい。
ねこひょこたちは、その先の毎日にちょっとワクワクしていた。
ねこにゃん「まあ、いいから。ほら。」
ぴょこにゃん「いっしょに行くにゃん」
二人が手を差しのべる。
こうして、突然できた家族。
それは《聖地ニルヴァーナ》へとつながる、小さなカギだった。
そしてきっと、この先もうひとつの家族ーー《エスネコ》との出会いも待っている。




