第2話《とぷん》
第2話
「・・・とぷん。」
小さな、小さな「かけら」。
「エスネコ」が地球に衝突した。
いや「はりついた」のが正しいのかもしれない。
衝突し地球にはりついた「エスネコ」は、衝突点を軸に地表の陸地や海を、2次元的に引き延ばしながらゆっくりと地球の内部へ進んでいく。
ゴムのように伸びながら収縮し一点に吸い込まれていく景色。
破裂しない風船のように、地球は球体を保ちながら一点に吸い込まれ、衝突地点の真裏からめくりあがっていった。
地球内部の地殻から地球のコアが表面を覆う頃、エスネコは衝突点の真裏を突き抜ける。
エスネコ「はりついたら、そのまま引っ張ってパッと離すればいいんだよね?」
《パッ!》
《くるん》
幼い子供が使うような言葉。
間抜けな音。
一瞬にして衝突前の世界の景色がラッピングするように覆われる。
飛び出す絵本のように地球は再現された。
ーーーー10のマイナス41乗秒に起こった出来事。
これは物理学者が唱えるビッグバンの速さに近い。時間が生まれる前の時間なんて、気づけるものは誰もいない。
エスネコ「柔らかく、傷つくことのないように。誰にも気づかれないように」
エスネコは誰かに託された願い通りにイベントを完了させた。
だが、意思のないエスネコに認識のない感覚が、一瞬過り、消えた。
ーーー経験したような微細な記憶。
安堵のような優しい熱ーーー
エスネコ「にゃんだ?今の?」
かけらがそう呟いた。
ーーーーエスネコの衝突。
あまりにも一瞬の出来事ゆえ、人々は時間の復元力により異変に気づかない。
だが地球はめくれ、裏返り、新たな世界線を生んだ。
畳まれ復元された「日常」は少しの違和感を生む。
《待ち合わせをしてた人》
「まだかなー。早目に来ちゃったかな。あれ?あのビルの時計のデジタル表示進んでる?オレの時計だと。。あれ?やっぱり合ってるなー。」
《道で楽しそうに話してる二人の女子高生》
「あれ?あれれれ?アタシたち何話してたっけ?二人とも忘れた?いつものことだよねー。ウケんだけどーw」
《庭先で洗濯物を干す主婦》
「えー。何この雨?天気予報だと1日快晴だって言ってたのにー。干したばっかりなのにやめてよもう!・・あれ?にわか雨?道もどこも濡れてない?」
時を正確に刻む時計のバグ。会話のズレ。天候のわずかな変化。
異変というにはあまりに些細な事ゆえ、誰も気づくことなかった。
衝突点には何も変化がない。
ただ衝突点の裏側。
「エスネコ」が飛び出た場所には、時を切り取ったような水冠状のクレーターができていた。
「王冠」である。
それに呼応するように巨木の森が出現し、王冠を囲むようにして、巨木の森が姿を現した。




