第1話《稲妻のかけらと裏返る星》
第1話《稲妻のかけらと裏返る星》
「かけら」が光の速度を越え、時空を歪めながら「地球」に向かって飛んでいた。
小さな、小さな「かけら」目に捉えることも観測することもできない粒子。
アルファとベータの住む異空間「無限の檻」の中で突如発生した「かけら」
「エスネコ」である。エスネコの「粒」は単なる粒子の形にとどまらず、時折、奇妙な稲妻形の「S」として姿を変える。
その「S」はただの線ではない。空間を切り裂き、回転しながら変容する。
時に、見つめる角度によっては、その形状が「N」や「Z」に錯覚し、見る者の視線に従って絶え間なく変わり続ける。
まるで、視界そのものがエスネコの意志に合わせて歪み、まったく新しい形を生み出しているかのようだ。
ーーーー自我を持つ粒子、アルファとベータ。その2柱より分かたれた「エスネコ」も「自我」を持って生まれてきた。2柱の「知」と「能」を転写し「思考」とリンクができる。そのため、自身が「エスネコ」と呼ばれ、名付けられた自覚もある。
だが、完成されてるはずなのに意味を持たない。エスネコの「今」を例えるなら、「完璧に設計された高性能な冷蔵庫」何も冷やさず誰にも使われないまま存在している奇跡。完成していながら、意味を持たない。空っぽなだけの存在。
アルファとベータから、思いがけず生まれ落ちたその「かけら」は自己進化するウィルスかもしれない。
偶然か、あるいは運命か──。
なぜそれが生まれ、何をもたらすのか、いまは誰にもわからない。
けれど確かに、その誕生は、未来の輪郭を揺らがせていた。
ーーーーただ、それを?
「……見たよ。覚えてる。その先も……」
誰かが小さく呟いた。ーーーー
意思のないはずのエスネコは、誰かが描いた未来の設計図を手に明確な意思を持って「地球」を目指していた。
ーーエスネコ「あっちにゃ。エスネコって呼び声する」
小さな声がかけらから聞こえた。
かけらはやがて次元の壁を越え、速度を光速に落とす。さらに徐々に減速していく。周囲の光の線が銀河や星を映し出す。
エスネコ「柔らかく、傷つくことのないように。誰にも気づかれないように…。」
まるで誰かの声を復唱するように、エスネコが小さく囁く。
ーーーー目前には地球。
衝突寸前にかけらが小さく、嬉しそうに囁く。
エスネコ「地球にゃー」
そして、稲妻形の「粒」は一滴の水のように、音もなく地球に触れた。
ーーーー砂粒よりも小さな閃光と無音な地殻振動。
それは、発生と同時に逆再生され、気づくものは誰もいなかった。




