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198X41無限の檻/にゃんこキック《プロローグーー真空のキックオフ》

昭和の東京。バブルと言われた時代。豊かな経済の裏で、世界から闇や毒が流入してきた。新しい名前を持つ薬物たちは末期中毒者の屍を作る。その渦中で戦士のように遊ぶニュータイプのエリートジャンキーたち。《41》と呼ばれる若者の見る明晰夢と幻覚が、《自我》を持つ十一次元構造体の《粒》とリンクする。アンダーグラウンドでサイバーパンク。エスエフ神話、ねことジャンキーのギャグとシリアスが混在するジャンル不明の物語。これは『読む麻薬』です。

《198X41無限の檻にゃんこキック》



ーーーー198X年、東京。


世界は不安定で、見えない戦争と終結が繰り返されていた。


土地の値段は異常に跳ね上がり、「S区を売ればアメリカ全土が買える」とまで囁かれる。


政治も経済も闇をはらんだまま密かに回り続け、そのすき間を縫うように異国の文化と人間、そして『闇』と『毒』が大量に流れ込んできた。


時代の波と呼応するように、新たな名を得た麻薬のルートが開かれ、『ニュータイプのジャンキー』たちが現れ始める。


彼らは快楽の奴隷ではない。ヤクの神を信じ、自分の美学で遊ぶ戦士だ。


あるジャンキーはこう言った。


「ヤクをやるなら――楽しむこと。健康であること。恐れないこと。侮らないこと。人を不幸にしないこと。仲間を売らないこと。正義を忘れないこと。逃げずに戦うこと。」


そしてもうひとつ。

「ヤクには神様がいる。感謝して向き合えば遊んでくれるし、逃げ腰のヤツは落とされる。理解して向き合うから――その先を見せてよ、神様。」


不思議は、不思議を信じる者の前に現れる。

偶然は必然を呼び、混沌のただ中にこそ調和が芽吹く。


これは、その渦中に選ばれた、ひとりのジャンキーの物語である。


ーーーーーー



《プロローグーー真空のキックオフ》


ーー『自我はアルファでありベータでもある』ーー


《チコーン》…。


《チコーン》ーー…。


《チコーン》ーー《チコーン》…。


ーー遠くから、近くから、音がする。


潜水艦のソナー音、硬質な金属、あるいは鉱物がぶつかり跳ね返るような響き。


実際、ここで「音」が鳴るわけはない。「音」は大気の振動で伝わるものだ。


ーーここは真空の空間。


回りは目映い光が、サイケデリックな縞模様を描きながらうねっている。


イエロー。ブルー。パープル。ピンク。ミントグリーン。


色分けをしてたらきりがない。


ジュピター(木星)のような縞模様。

太く細く渦を巻く。

その「帯」は壺に押し込まれた大量の蛇が蠢いてるようにも見える。


それぞれの色の光が、くっきりとした極彩色から優しいパステルカラーへと濃淡を変えながら、ゆっくりと不規則に変化している世界。


「カオス」に法則性があるのであれば、この「世界」に当てはまるのかもしれない。


美しく輝く光のラインが縞模様を描き、ゆっくりと太くうねる。


フレアのように噴射した光も「密」と「疎」の縞模様に変わり、また潜る。


一点を覗き込むと、万華鏡のように増殖するフラクタルな模様が、深い奥行きを描き出す。


ーーーー幻想の世界。


ここは「真空のエネルギー」で満たされた空間。


球体の鏡の中心に、虹色に発光するミラーボールを置いたら、こんな景色になるのだろうか?


ミラーボールは揺らぎ、大きさを変え、中心から移動する。


ーーーー

この世界には、まだ“時間”も“物質”もなかった。


ただ、二つの意識だけが踊っていた。


この幻想の空間で小さな声で呟くモノたち。


ーーーー


アルファ「(*≧ω≦)ん?おりの事をミラーボールって誰か言ったかにゃ?したら、ここ異次元DISCOにゃん♪」


ベータ「(*≧∀≦)はー!?突然にゃに?あんた、どこの誰に突っ込んでるわけー?」


アルファ「(´-ω-`)う、噂にゃん。」


ベータ「(´・ω・`)は?アタマおかしーにゃ。おまいと話してるとバカうつるにゃ。ここはずーっと《ふたり》きりにゃん。( ・`ω・´)…ん?」


アルファ「いや、見てるやついるような、いにゃいような気がしにゃく…?」


ベータ「(*≧ω≦)しにゃくにゃい?」


アルファ「いや、しにゃくにゃくにゃい。おい、物語、止まってるにゃ」


ベータ「おまいのせいにゃ。いちいち気づいてたら浮気できにゃい」


アルファ「浮気じゃにゃい。噂にゃ」


ベータ「細かいと浮気されるにゃん」


アルファ「( ; ゜Д゜)旦那かよ」


ベータ「(*≧∀≦)いや、嫁にゃん」


アルファ「(*≧∀≦)ケラケラケラ・・・」


ベータ「(*≧ω≦)にゃはははははは・・・」


ーーこの物語を書く者を読む者も、リアルタイムで《察知され覗かれる》


《レンズ》と《遠い手》を使い干渉してくる『上のモノたち』


アルファとベータ。


それは《自我》を持つ、《十一次元構造体の粒》


このペアは同一でありながら、永遠に別々でもある。


ーーーー


ここは十一次元の異空間。


目を凝らせば近くに。

遠くに視点を置けば遠くに。


輝く縞模様の空間は、果てしなくどこまでも広がっていた。



ーー《チコーン、チコーン》



音を響かせている『粒』たち。

アルファとベータだ。


その空間の中に現れては消え、消えては現れる対消滅を繰り返している小さな小さな粒。


分かたれたときに光り、お互い引き寄せあい、ーー衝突し消える粒。光の粒は、目映い光を放ち現れ、輝く空間の光度をさらに上げる。


ーーそして二つに分かれる。


量子よりも小さく、踊るように舞う粒たち。

対消滅と発生のリズムが縞模様にグルーヴを与えている。


ーー確かに異次元DISCOだ。


二つの光の粒はダンスするように空間を飛び回る。そして引き寄せあい、衝突の瞬間消える。


そしてまた別の場所から光とともに突然現れる。


アルファとベータはその挙動を無限に繰り返していた。


ーー法則性はない。

あるとしたら「気まぐれ」だろうか。

好きに振る舞ってるだけだ。


無限の時間。


ーーいや、そもそもこの空間に時間の軸があるかもわからない。アニメーションの「場面」の連続なのか。だとしても「粒」が「有」と「無」の2ページを繰り返すだけだ。


二つの粒が対消滅と発生をを繰り返しながらも回りの空間の縞模様は生き物のように波打ち、うねりを繰り返している。


ーーアルファとベータが支配する世界。


アルファとベータがエントロピーを生み、破壊する。アルファとベータは真空のエネルギーを生み、 真空のエネルギーを喰らう。


真空のエネルギーはアルファとベータ、それぞれが持つ「内側」と「外側」へ向かう11個の穴《ホール》を通る。


《ホール》は次元の穴。


ホールの出入口には薄い《膜》があり、それは鏡面状の《レンズ》になっている。


通過するとき、合わせ鏡のように無限を映し出すだろう。


ホールを通過するエネルギーは、時に圧縮され、時に開放され『粒』を形作る。


ーーそして、アルファとベータは『粒』の形をしているが「核」がない。


エネルギーが11個のホールと呼ぶ穴をぐるぐる回って粒の形してるだけだ。

ゆえに『粒』は固定された真円の球体の形を取らない。


騙し絵のように《ホール》を通るエネルギー。


一見、丸い粒のように見えるアルファとベータの輪郭はゆらぎ…踊る。


ーーーー


エネルギーがウロボロスの蛇のように、自分の尾を追いかけながら球体を描き、「粒」の形を取っているように見えるだけだ。


循環しているのはそれだけ。


永久機関。物理法則の向こう側。

「無限の檻」は無限大の質量で満ちる。


人の想像もおよばぬ神秘の世界


ーーーー過去も未来もないーー

この無限の檻に「場所」という定義も無意味だ。


アルファとベータは縞模様の空間に「有」と「無」を繰り返してる存在だった。


ーーだが「有」でも「無」の状態でも、アルファとベータは自我がある。


ここでは物質がない「無」でもアルファとベータの自我が存在する限り「無」の「有」はある。


ーーアルファとベータは「ゼロ」の定義が壊れた世界の住人。


《チコーン》という音はアルファとベータが意図的に鳴らしてる擬音だ。


互いをぶつけ対消滅したと思えば、また光を放ち、光は2つの粒に分かれ散る。


《チコーン!》ーー《バッ!》

粒が二つ。音を鳴らし『無』から現れる。


《チコーン!》ーー《スッ》……。

粒が二つ。ぶつかって消える…。


……《チコーン!》ーーー《バッ!》

無…。そしてまた音を鳴らし、別の場所から現れる。


離れる距離は近くに時には遠くに。どんなに離れても伸縮する見えない糸で結ばれてるように引き合い、

そして融合し『発生と消滅』を繰り返す。


ーー《糸は絶対の絆》ーー


それぞれ分身、半身でありながら自我を持つエネルギー体。


「ケラケラケラ・・」「クスクスクス・・」


時間の概念がない異空間。

時間が生まれる前の「無限の檻」の中で、アルファとベータはじゃれあい遊ぶ。




ーーーー


アルファ「ひまだにゃあ。また、ねこ見ようかー?」


ベータ「あれ、世界一かわいい生き物にゃん」


アルファ「《二次元レンズ》使うにゃ?」


ベータ「また覗き見きゃよ。たまたま見つけたのラッキーだったにゃ」


アルファ「あの姿になりたいにゃ。言葉使いだけ真似してもにゃあ。」


ベータ「おりたちが、見たねこ、こんな話し方してたっけ?」


アルファ「そこはムード大事にゃん」


ベータ「ムーブメントの事、言ってるにゃ?」


アルファ「そこよ。細かいと浮気されるにゃん」


ベータ「それ、さっきオリが言ったにゃん!」


アルファ「( `Д´)/フンッ」

アルファの粒が怒ってるように紅に輝く。


ベータ「( `Д´)/フンッ」

ベータの粒が冷めた白色に輝く。


二つの粒が怒りに任せて激突する。


《チコーーーン!》ーー《フッ》

粒は音を鳴らし消滅。そして静寂…。


そしてーー

《チコーン!》ーー《パッ!》

再び《無》より現れる。


ーー

アルファ「(*≧ω≦)なあ、今年の紅白歌合戦見たにゃ?」


ベータ「(ノ∀≦。)ノいいから話すすめろにゃん」


アルファ「ケラケラケラ・・」


ベータ「クスクスクス・・・」


対消滅と再構築の仲良し設計。


ケンカする時も遊ぶ時もーー

二粒(ふたり)は、どんなときもいっしょだから。


ーーーー


アルファ「ここなら、何でもできるんだけどにゃー」


ベータ「ねこ、いたのって、もっと下の世界にゃん。…降りるか?」


アルファ「おりたちが、ここ離れるとここ壊れるしにゃー。遠い手で持ってきたいけど、おりたち粒のままなら遊んであげられないしにゃ」


ベータ「じゃあ、とりあえず、旅行会社に電話するにゃん」


アルファ「天才かよ。そんなんどこで覚えた?おまいバカの天才にゃ」


ベータ「(*≧ω≦)ほめらりたにゃん」


ーー

繰り返される無限の日常。

だが 孤独ではない。合わせ鏡のツレがいる。


この空間はアルファとベータそのもの。

彼ら以外の干渉はできない。


《発生→分裂→合体→消滅→》

4小節の永遠ループ。


・アルファとベータはプラスでありマイナス。

・物質と反物質。

・1と-1。ただの「半分」かもしれない。


「いちたすいちはぜろー」

「ぜろわるにーはにー」


これはアルファとベータの合言葉。

この異空間での唯一のルールだ。 

この空間には、何も、誰も、どんなエネルギーも、どんな次元からも、入ることはできないーー。


ーーはずだった。


突然ーー

ふたりは『何か』の干渉を察知した。


ーー《視線》ーー


アルファ《ぬ?見てるヤツがいる?》


ベータ《にゃ?フォーカスされた?》


ーーその時、

音の無い世界での単調な響きか変わった。


《キュイッ!》

プラスチック容器を洗うような摩擦音。


そしてーー

《チッコォオオオ━━━ーーン!》


かつてない大きな響き。


その響きに呼応して、異空間の縞模様もうねり狂う。


《ウォーン!ウォン、ウォンウォンウォン》



その時《粒》は三つに分かれていた。


アルファとベータが起こり得ない異変に初めて「慌てる」


ふたりは初めて「慌てる」という概念を持った。


ーーーー


アルファ「にゃににゃに、何ーっ!?」


ベータ「おいおいおいおい!」


アルファ「割れた?ベータ!おまい、にゃんか欠けたか?」


ベータ「いや、欠けてない。元のままにゃん。おまいこそ大丈夫か?」


アルファ「…じゃあ、あれはにゃんだ?」


ベータ「は?こんなこと初めてだし…。、わからん…。」


ふたりの目の前に、新しい《粒》が誕生していた。


アルファ「…とりあえず回収するにゃん」


ベータ「そうだにゃ。ねこ賛成にゃ。挟んで対消滅させるにゃん」


アルファとベータが三つ目と衝突する。


《チコーン!》…《フッ》対消滅。


《チコーン!》…《パッ》再構築。


三つ目『クスクスクス…』


ところが、アルファとベータから分かれた三つ目はくっつかない。


アルファ「あれ?ぶつけたよにゃ?通り抜けたか?」


ベータ「ぶつかったにゃん。でも消えたの、おりたちだけにゃ」


アルファ「んー?これ変だぞ??」


ベータ「欠けたんじゃなくて…生まれた?」


アルファ「( ;∀;)あんたの子よ!責任取ってね!」


ベータ「( ・`ω・´)このアホ粒ー!ふざけてる場合かー!」


アルファ「にゃにゃにゃにゃにゃー!」

《グキュウゥゥウゥー…》

アルファが三つ目を、自分の重力で抱え込んだ。


ベータ「うりゃああああぁ!」

《ズオォーーーーー!》

ベータが自分のカラダごと、三つ目をアルファに押し込む。


ーー《するん》


アルファとベータを三つ目目がすり抜ける。


三つ目「にゃ♪」


これは産声なのか。

二人から分かれた三つ目の粒が嬉しそうに鳴いた。


ーーだが、その声は届いていない。


アルファ「すばしっこいやつにゃ。囲むにゃ!」


ベータ「何か違うような?とりあえずオーケーにゃ!」


《 シュルシュルシュルルルルルルルー!》


アルファとベータが、原子を周回する電子のように、三つ目の回りを高速で取り囲む。


ーー異空間の中に、さらなる虹色の《絶対領域》の球体ができた。


《クワァーーーーーン》

空間に高次元エネルギーのエコーが響く。


《クンッ!》

アルファ「おし!閉じたぞ!捕まえたにゃ!」


ーーーー《スー…》ーーーーーー


ところが、

《絶対領域》で捕らえたはずの三つ目は姿を消した。


ーー

ベータ「は?消えた!?」


ここは、アルファとベータが支配する空間。


二人の合体時のプロセスで取り囲んだ《絶対領域》のはずであった。


《キュパッ!》

再び三つ目がアルファとベータの前に現れる。

その粒はふたりの前を踊るように舞っている。


ーー

アルファ「はあ?もーいっちょー!」


ベータ「パワーApple TVにゃー!」


《シューーーーーーン!》ーー!

ーー《キイィィーーーーーーーーーン!》


さらに「絶対領域」を強化して閉じる。

高次元エネルギーが空間の縞模様を、さらに捻じ曲げていく。


アルファ「おりゃあ!」


ベータ「たりゃあ!」


《チッコーーーーン!》ーー《フッ》…。


しかしーー。

また、アルファとベータだけが、対消滅して消えるだけであった。


…《チコーン!》ーー《パッ》…。


再び二つの粒になって現れるふたり。


アルファ「…マジかよ」


ベータ「こいつ、…もしかして?」


ーーーーここは、時間が生まれる前の空間。

マイナス時間の中での数兆回のトライ。


二人が持つ《ホール》の力を、数兆回組み替えしてトライしても同じ結果だった。


ーー

アルファ「ダメにゃ。これ『新型』かも。おりたち越えてるにゃ。」


ベータ「新型か…。なぜ…?オーバースペックなのは間違いなさそうにゃ。何で突然こんなん生まれたにゃ?」


アルファ「うーむ…」


ベータ「にゃんだろう?」


粒であるアルファとベータが、首をかしげたように見えた。


三つ目『クスクスクス』

それを察知したのか、三つ目は声を出さずに笑ってるようだ。


アルファとベータは、すでに幾度とないトライから結論に達している。


能力は同等以上。

わからないのは誕生した《理由》と《原因》である。


ーー

アルファ「いったい、何が起きたにゃ?そこからにゃ」


ベータ「知らん。でも何か…」


アルファ「…おり、実はちょっと《視線》感じたにゃん。おまいは?」


ベータ「それな!おりもにゃ。まるで、おりたちの《二次元レンズ》でフォーカスされたような…。」


アルファ「見られた気がしたから、カウンター返そうとして…」


ベータ「そう。『目』が合ったとたんに《チッコォオーーン!》にゃん」


アルファ「目…。二次元レンズで観測された?おりたちを見れるなんて…。不思議にゃ。」


ベータ「…いるわけない。初めての不思議にゃ」


そもそも、アルファとベータは「不思議」の住人であり「不思議」を創造した存在。


「不思議」なんて言葉は、自分たちより低次元で使われるモノである。


《知識は体験ではなく、体験こそ真の知識となる》


アルファ「( ̄^ ̄)フフフ。不思議覚えたにゃ。えへん」


ベータ「( ・`ω・´)ったく、おまいはよー。それより何とかするにゃん」


ーーーー


《キュパ!》ーー《フッ》…。

《キュイン!》ーーー《パッ!》…。


アルファ「ベータ。見ろ。こいつ練習してるみたいにゃん」


ベータ「消えたり現れたりか…。意思があるにょか?」


三つ目はアルファとベータの両性質・能力を持っているようだ。

単体での「発生」と「消滅」

あるいは「実」と「虚」


三つ目「(*≧ω≦)にゃ。クスクスクス」


新たな三つ目は、生み出した親を「おちょくる」かのように現れては消えを繰り返す。


アルファ「今、笑ったぞ!…こいつも自我ある!こんのガキゃー!」


ベータ「なめんにゃよー!」


三つ目の粒が虹色の異空間で踊る。


《キューーーーン》

二つの粒が三つ目を追う。


《チッコーン!》ー《フッ!》ー《パッ!》

先回りをするように、二つの粒が対消滅と再構築で待ち伏せる。


アルファとベータと三つ目の「鬼ごっこ」と「かくれんぼ」が始まった。


アルファ「( ・`ω・´)コラ!話だけでも聞け!」


ベータ「(´・ω・`; )こいつ、もしかしてバカにゃん?」


アルファ「あー。疲れる。たぶん、こいつ自我あるけど、まだアタマ空っぽにゃ」


ベータ「ふざけることだけわかってるにょかー?」


アルファ「( ・`ω・´)おまいに似たからだ。」


ベータ「( ・`ω・´)鏡見ろ。おまいは、おりだろ」


アルファ・ベータが《知》の共有モードで言い争う。


アルファ《にゃーにゃー( `Д´)/ 》


ベータ《ギャーギャー(>д<*)》


三つ目『(*≧ω≦)…?』


ーーーー


アルファ「あー疲れた。…なあ、どーする?」


ベータ「にゃーんか、あきてきたにゃ…」


アルファ「おりもにゃ」


ベータ「さて、どーすっかにゃー」


ーーーー


アルファとベータは本来会話しなくても《知》の共有モードで、意識や情報をやりとりできる。


会話は遊びのひとつ


ーー合理性より二人きりのムダが楽しいのだ。

二人は無言で今後の未来を予測し対策を練る。


《…チカチカチカチカ》


超高速思考に合わせ明滅する二人。


アルファ「ぬぬ」


ベータ「ぬぬぬ」


ーーーこの世界で二人は全知全能である。


また二人のカラダを成す11次元構造は、多次元多時空への干渉が可能。


その無限のメモリで可能性の計算をしていた。


ーーーー


生まれた三つ目は、その近くで二人の挙動を見ているように見えた。


ーーあるいは「鬼ごっこ」「かくれんぼ」の続きを待っている子供のようでもある。


ーーーー


3つ目は空間の縞模様の中でひときわ輝やいていた。


単体での消滅と発生。

鼓動や呼吸をするように。

あるいは挑発するかのごとく。


ーー色を変え、姿を消しては現れる。


ーーだが、三つ目はアルファとベータの思考中、徐々に似て異なる姿を表し始めた。もちろん、アルファとベータも思考しながら変化を観察している。


アルファ「こいつ…」


ベータ「…さらに進化してるにゃ」


3つ目は、球体の形を維持しながらも、時に自己をアピールするがごとく真紅に輝き、稲妻形の「S」に似た形に変形する。


それは回転し視点や表裏の変化によってはアルファベットの「N」にも「Z」にも見えた。


ーーねじれ双曲による《錯視》ーー


ーー


アルファ「はあ!?こいつ変形するにゃ。S?」


ベータ「いや、、Nかも?」


アルファ「エス?」


ベータ「N?…ネコ?」


しかし、その声には驚きとは別に、苛立ちが混じっていた。


ふざけるのは好き。めんどくさいのはキライ


自我を持つ、この二柱の性格でもあり性質。


当然のごとく二柱はブチキレる。


アルファ・ベータ「っんにゃろう!」


ブチキレる声ーー

その刹那ーー


アルファとベータの《粒》は対消滅のエネルギーを融合に変換し巨大質量の球体に変化する。


《ゴゴゴゴゴゴゴーーーォ》


球体は異空間の縞模様をねじ曲げ螺旋を描く。


《キュンッ!》


そして渦巻きは漆黒の「点」に収縮。


《キンッ!》


《ギュン、ギュン、ギュンギュン!》


《シュルルルルルルーー》


ーーー《キーーーーーーン》ーーー


空間を引き裂くような金属音。


高速回転するリングは、虹色のペロペロキャンディーのような縞模様を描く。


《キュンッ!》


《キュオン!》ーー《グンッ!》


《キュイーィーーーーン》


を漆黒の「点」の回りを何重もの虹色のリングが周回する。


《ギュウーーーーー》


リングは漆黒の「点」を押さえ込み、さらにエネルギーの密度をあげる役割のようである。


押さえきれないエネルギーが漏れる。


《パキ!キンッ!》


《ピキ。ピシッ!》


《ビシィッ!》


漏れだしたエネルギーが、無限の閉じた異空間の壁に亀裂を刻む。


ーー次元境界の崩壊であるーー


ーーブラックホールは巨大な重力で光をも飲み込み閉じ込める。


急激に膨張する漆黒の「点」


それは瞬く間にインフレーションを起こし、巨大な球体へ変化した。


《ピッ!》ーー《ピシッ!》ー《ビキッ!》


高速で回る虹色のリングも、ほどけ暴れだす。


《ズォ》ーーー


球体はブラックホールの発生過程を逆再生したかのように、漆黒の点から圧縮されたエネルギーの「光」と「力」を放った。


不思議を知らぬ二人が知る限りのエネルギー放射。


黒炎をまとう虹色の光はスライムのような「流体」に変化し三つ目の《粒》を飲み込んだ。


《 バッシャーーーーーー!》


大量の水が溢れるような音が異空間に響き渡る。


アルファとベータが作り出した強大な《11次元ホールから放たれる反重力次元振動エネルギー》


それはあらゆるモノをーー

圧縮する。歪める。引きちぎる。


ターゲットとなった存在そのものの、次元を切り裂く。


《キエェェーーーーーーー!》


異空間が獣のように叫ぶ。


《ザブゥ!》ーー《ドシャーーーッ!》


その暴虐のエネルギーの奔流で、異空間の縞模様も流れ落ち、異空間も大きく歪む。


《ゴブッ!ゴゴゴゴゴゴゴ!》


空間全てが、あらゆる方向から押し寄せるエネルギーの津波に襲われている。


ーー


やがてアルファとベータであった球体は、異形の生物のように変貌していた11本のワームのような「足」が生える。


アルファとベータの十一次元攻撃形態ーー

《ワーム・オブ・レギオン》


それは、元々、アルファとベータを『追う脅威』に対抗するために構築したモノ。


その先端には次元をも切り裂く「爪」足の1本1本が意思をもった生物のように、うねり踊る。


レギオン「ググルグ・・」


レギオン「ググルグ、ググルグルルル・・」


それぞれの足は呪詛のような声を発していた。

獲物に狙いを定めた猛獣のように。


《パチリ》ーー


球体の表面に曼荼羅模様の《目》が開く。

それは《二次元レンズ》



ーー


だが、三つ目は球体から吐き出されるエネルギーに翻弄されることなく、その全てを静かに観察していた。

まるで「何の遊びが始まるの?」とでも言いたげに。


「S」と「N」の形がワクワクしてるように回転し変化する。


三つ目から、小さい呟きが聞こえた。自分を生み出した親を呼ぶ声。


三つ目「あるふぁ・・べーたん。にゃ♪」


三つ目から発せられた初めての言葉。


ーーだが、


その産声は荒れ狂う球体の轟音にかき消され二人には届かなかった。対象を捉えた瞬間、球体は回転を加速し足を鞭のようにしならせる。


レギオン《グォアァーーー!》


レギオン《ググルル…、グギャアォッ!》


容赦なく 11本の足が超高速回転しながら、三つ目を襲った。


レギオン《ギュアォウ!》


《バシーーーーーーン!!!》


アルファ「(*≧∀≦)パンチにゃ━━━!」


ベータ「(*≧ω≦)違う!今のはレギオンの《蹴り》 キックにゃw」


アルファ「(*≧∀≦)じゃあ、キックオフにゃー!」


ベータ「(*≧ω≦)悪い粒にゃん。ケラケラケラw」


ーーだが、


《グーーーーーー》


三つ目の《粒》は、引き裂かれることなく、その「力」に抗おうとする。


《ギリギリギリ…》


だが、それも虚しくーー。


ーー《パビュン!》


まるで大きく引き伸ばされたゴムから放たれる、パチンコ玉のように、勢いよく弾け飛び、空間を歪め、切り裂きながら、吹き飛んでいく。


エスネコ「(*≧ω≦)にゃー……。」


三つ目の《粒》エスネコは、受け止めた力を異空間を膨張させて抗っていたが、次元の境界が耐えきれず《次元膜》を突き破り、彼方へ消え去っていった。




ーー


ベータ「(*≧∀≦)飛んでッたにゃ。ケラケラケラ」


アルファ「(*≧ω≦)必殺にゃんこキーック!ケラケラケラ」


ーーーー《スオオォーーーーン》


アルファとベータの暴虐のエネルギーに切り裂かれ、縞模様もなくなっていた異空間も、元の姿に復元し始めていた。


《ユン…ユン…ユンユン…》


虹色の縞模様がうねり、揺らぎ、蠢く。


イレギュラーを排除し日常に戻った《ふたり》が言葉をかわす。


ーー


アルファ「(´・ω・`)追うにゃ?」


ベータ「いや。離れても場所はわかるにゃん」


アルファ「(´・ω・`)?ところで、アイツ名前にゃんにする?」


ベータ「( ;-`д´-)今さらかよ。『S』と『N』の形に見えたにゃ」


アルファ「( ̄□ ̄;)!!あ!『スーパー・アルファ』ねこにゃん!」


ベータ「(´・ω・`; )何で、おまいのスーパー版になるにゃ。フツーは『エス・ネコ』になるでしょ。おまいはバカの王様。《K・B・N》!キング・バカ・ねこ、でいいにゃ。」


アルファ「( ̄^ ̄)バカって言う人は、その人がバカにゃ」


ベータ「突っ込むのめんどくさいにゃあ。おりは、人じゃにゃいよ。じゃあ、おまい天才でいい。したら、おりも天才にゃん」


アルファ「(*≧ω≦)納得。最適解出ましたにゃ。じゃあそれでw」


ベータ「(*≧ω≦)ちょろいなー。それなりにーw」


アルファ・ベータ「フフフーのフーw」


ーー「ゼロ」であり「二柱」の「それ」がニヤリと笑う。


輝く縞模様のうねる空間《無限の檻》に起きたイレギュラー。


ーーアルファとベータは普段ユルい。

だが、手抜きはするが油断はしてない。


《日常》に戻った後も、バックグラウンドで《理由と原因》の解析と可能性の計算をすすめていた。




ーー


アルファ「んー、やりすぎたかにゃあ?」


ベータ「急にどうした?反省かよ。でも、めんどくさくなっにゃん」


アルファ「まあ、行き先はあそこにゃ」


ベータ「ねこ発見した星、『地球』にゃ」


アルファ「《二次元レンズ》のメモリに入ってるにゃ」


ベータ「あにゃた、それで、たまに、ねこ見るついでに昔のテレビ見てるでしょ?『昭和』好きにゃねー」


アルファ「盗み見じゃにゃいよ。そもそも粒にコンプラないにゃん。それに、おりが見てるものは、おまいも見えてるにゃん」


ベータ「まあにゃ。でも、おりは、別の星のサブスク見てるからにゃ。チャンネル争いならないにゃん」


アルファ「寂しいこと言うにゃよ。パパはビール飲んで野球見るにょさ」


ベータ「おまいは昭和中毒にゃ」



ーーーー



だが…。


レギオンの《にゃんこキック》で排除したエスネコが、異空間の《大きな欠損》であることを『ふたり』はまだ知らない。


『ふたり』の予測を越えた物語は、彼らの予測の《斜め上》を越えて動き出すーーー




ーーーーー


《シュイィーーーーーーーン》


サイケな虹色の縞模様のトンネルを突き抜けていく。

次元の歪みが光のエコーとなって後ろに遠ざかっていく。


十一次元構造。マイナス時間の空間。


十一次元の波を、サーフィンするように滑っていく《粒》がいた。


そのゼロ時間の中で《粒》は、三次元宇宙の大規模構造に《二次元レンズ》の目を向ける。


ーーそれは、ラニアケア銀河団。


いくつもの小さく光る泡が羽衣のように繋がっているのが見えた。


エスネコ「(*≧ω≦)にゃ」


《シュイィーーーーーーーン》

さらにマイナス時間の中で加速する。


エスネコ「(*≧ω≦)にゃ」

《シュイィ……ン》


エスネコが稲妻形の「S」や「N」に変化しながら、光速の100倍まで徐々に速度を落とす。


二次元レンズはパラパラ漫画の世界。


時間が発生する前の時間も関係ない。

好きなところで止めればいいのだ。


ーーさらにゼロ時間の中で加速する。


天の川の渦巻き銀河が見えてきた。

《シュイィ……ン》


エスネコ「(*≧ω≦)にゃっ」

《ピタァ!》ーーーー!


三次元宇宙の全てが凍りついたように止まった。

星も銀河も色を失う。


だがーー。

ただ一つだけ、青い星がカラーに写っていた。


エスネコ「(*≧ω≦)つかまいた、ちきゅー。」


エスネコ『(*≧ω≦)おってきにゃよ、あるふぁ。みつけてにゃ、べーたん♪』


ーー《とぷん!》ーー


《ふたり》から分かれた、小さな《かけら》は、聞こえない音を立て地球に衝突した。




ーーーー


198X年ーー。

東京N23区。

新宿ダウンタウンの西側の住宅街。

蔦の絡まる一軒家。


ここは《41》と呼ばれているジャンキーの住処。

41は今日も、エリートジャンキーの仲間たちと遊んでいる。


ーー

41の視界は、多種多様、大量接種したドラッグと、初めての『LSD』の効果で滲んでいる。


チューニングが狂った41の脳は、目の前にサイケな虹色に光る、奇妙な《空間の幻覚》を浮かび上がらせていた。


ーー41「ん?触れちゃった…。」



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