第28話《サキュパスとプレデターが来る家 後編》
第28話《サキュパスとプレデターが来る家 後編》!
「友達とボンドやってる時に見た幻覚」という奇妙な共通点で意気投合する41とMちゃん。
しかし、深夜の本牧で起きる現象は、冗談では済まない“本物の異常”だった——。
第28話《サキュパスとプレデターが来る家 後編》
Mちゃんと二人でジャムセッション。リズムボックスでテキトーに選んで弾く。
ーーミキサーで録音したモノを聞いてみる。
オレ「(≧∀≦) ここらへん! あはははは」
Mちゃん「(≧∀≦) ここだよね。あはははは」
オレ「しゃべってるなー。ちょうど飽きてきて、雰囲気変えようよってとこだよね」
Mちゃん「そう。目が合った」
オレ「Mちゃんのここのリフ、カッコいいな。このタイミングばっちり」
Mちゃん「41もここでスバっと変えたもんね。考えてたの?」
オレ「いや、ぜんぜん。なんとなくこうしたら、このリフ入ってきたんで、切れ味いいのに変えちゃおうって」
Mちゃん「息止まるね、ここ」
オレ「そーした。無駄な雑味入れないで、スペース作ろうって思って」
Mちゃん「41のグルーヴ独特だよねー」
オレ「そう?」
Mちゃん「んーと、なんか違う」
オレ「変かな?」
Mちゃん「わざとやってるの? コレ」
オレ「わざと? んー…ずっとリズムマシーン相手だったから、わかんない。ズレてる?」
Mちゃん「いや、リズムは正確だよ」
オレ「でも、そう言われて聞くと変かも…。Mちゃんもこのグルーヴに合わせてるんだもんね」
Mちゃん「(*≧∀≦) うねうねしてる」
オレ「(´・ω・`; ) うねうね…?」
《よくわからん…》
ーーーー
途中、休憩入れながらも半日以上弾きっぱなし。
ロック、ソウル、ファンク。ジャズっぽくフォービートや、ミニマルミュージックみたいのまで。
途中で他の楽器試したり、エフェクターかけて不思議音楽みたいのもやって大笑い。
そろそろネタも尽きて、さすがに飽きてきた頃──
ーー
Mちゃん「なあ、プレデターって映画見たことある?」
オレ「突然、映画の話? あるある。面白かった。会った頃《遊星からの物体X》Mちゃんちで見たよね。エイリアンとか正体不明系のヤツ、好きだよ」
Mちゃん「さっき、“もっとヤバイ話ある”って言ったじゃん。それがプレデターっぽいんだよ」
オレ「Mちゃん、実はさ……これ、誰にも話したことないんだけど、映画のプレデター見たとき《こいつ見たことある!》って思い出したんだよ。中学生の時なんだけどね」
Mちゃん「え!? 41も見たことあるの?」
オレ「《も》って何? Mちゃんも見たことあるの? オレ、ガキの頃友達と『ボンド』やってる時に見たんだよ。幻覚。輪郭がボヤけた透明な人みたいのがさ、オレの前をゆーっくり通りすぎてったの。こんな風に…」
ーーオレは立ち上がって、手足をゆっくり動かして歩く動作をした。
オレ「さらに言うとね、ちょっと、こっちの視線に気づいた気がするんだ。そいつがゆっくり移動しながら、横向いてオレを見たように見えたの。怖くて“見えてないフリ”したら、通り過ぎてった」
Mちゃん「いるよね!」
オレ《はあ!? いるのー?》
オレ「Mちゃんも見たことあるの?」
Mちゃん「ある。41と同じで、ガキの頃、あんパンやってる時の幻覚で見た!」
オレ「おー! 目撃者増えた! やっぱりいるんだ」
Mちゃん「絶対いる!」
オレ《何この連帯感…。でもLやって首都高走ってる時にジュンたちも同じ幻覚見たしな…》
オレ「もしかして、夜中の2時頃来るって、“プレデター”が来るの? めちゃ怖いんだけど」
Mちゃん「んー、プレデターっぽいって言うのかな…。41、玄関のカギ閉めたよな?」
オレ「閉めたよ。でも、念のためもう一度確認してくる」
ーー
玄関はしっかりカギがかかってた。
部屋に戻ってMちゃんに伝える。
オレ「カギ閉めてあるよ」
Mちゃん「もう少ししたら来るよ。待っててみ」
オレ「ねえ、何があったの?」
Mちゃん「夜中にマリちゃんを訪ねてくるヤツがいるんだよ。マリちゃんって、普段台所でテレビ見てるじゃん? そいつと夜中にマリちゃんが話してるのが聞こえるの。オレも最初、“こんな夜中に誰だ?”って思って台所行ったら、マリちゃんしかいないんだよ。でもまた部屋に戻ると、会話が聞こえてくるの。不思議だろ?」
オレ「相手の声も聞こえるの?」
Mちゃん「聞こえる。でも何話してるかまではわからない。ボソボソって、ノイズみたいな感じ。でも、マリちゃんの声はしっかり聞こえる。フツーに友達と会話してるみたいに、笑い声まで聞こえてくるんだよ」
オレ「…マリちゃん、変なのに取り憑かれてる? いつからなの?」
Mちゃん「正確には覚えてないけど…。41、そろそろ静かに待ってな。そして、そこの小窓見ててみ」
ーー小窓というのは、Mちゃんの部屋の扉の灯り取りの曇りガラス。玄関の廊下の明かりが見えている。
オレ「あそこ通るの見えるわけ?」
Mちゃん「そう。よく見えるように、この部屋の灯り暗くして待とう。入ってくるから」
Mちゃんの予告した2時を過ぎる。
オレ「…Mちゃん?」
Mちゃん「シーっ」
オレとMちゃんは気配を消して《プレデター》を待っていた。すると――
《ガラガラガラガラ…》玄関の開く音。
《ギッ、ギッ…》床を踏む足音が聞こえる。
そして、小窓を人のアタマの影が横切っていった。
オレ「…? Mちゃん…?」
Mちゃん「まだ、待ってろ」
小さな声で話す。
《ギッ! パタン!》
玄関から突き当たりの台所の扉を開けて閉まる音。
ーー
マリちゃん「あー、いらっしゃい」
オレ「…どういう事?」
Mちゃん「だから、わからないんだってば」
さらに、Mちゃんの言った通り、台所からマリちゃんが会話してるのが聞こえてきた。
オレ「ヤバくない?」
Mちゃん「41。もう少ししたら見てきてよ」
オレ「(´・ω・`; ) オ、オレぇ? 行っていいものなの?」
Mちゃん「だって、オレ何回か見に行ってたら、マリちゃん不機嫌になっちゃってさ。41なら、“飲み物取りに来ました”って言えば大丈夫だよ」
オレ「そのために呼んだだろ? ふ、不思議検証してくる隊員?」
Mちゃん「(≧∀≦) お前なら行ける!」
台所は、会話が弾んでるように感じる。
Mちゃん「ほら、行け!」
オレ「何か、Mちゃん楽しそうだなー。じゃあ、そろそろ突撃してくる!」
Mちゃん「(≧∀≦) 行ってこーい!」
オレはMちゃんの部屋を出て、まず玄関のカギを確かめた。
オレ《閉まってる。それに、この家のカギかける時は“カチャッ”て音するよな…。それに…靴もない》
静まり返った玄関。
台所からはMちゃんの部屋にいたときより、会話が大きく聞こえる。
オレ《(´-ω-`)これ突撃して良いもんなのかな?ビビって帰っても、またMちゃんに突撃させられるよな》
オレ《よし!》
オレは台所のドアを、何事もないように開いた。
《ガチャ》
オレ「マリちゃん。飲み物取りに来たー。」
オレ《う!誰もいねー…でも何か会話を中断させたような雰囲気…》
マリちゃん「(*≧∀≦)好きなもの持ってっていいよー」
台所のテレビが深夜の通販番組を映してる。
音なんて出てない。
ーー
オレ「じゃあ、またJAVATEA持ってくるね。お邪魔しましたー」
オレ《ヤバッ!つい「お邪魔しました」とか言っちゃった。まだ帰るわけでもないのに……》
マリちゃん「またなくなったら取りにおいで〜」
オレ「ありがと!また来ると思う」
そーっと早足で台所を後にした。
扉は背中側。
少したつとまた、中断した会話がかすかに聞こえてきた。
オレ《オカルト現場に私はいる?》
Mちゃんの部屋に戻ると、Mちゃんがニヤニヤして待ってた。
Mちゃん「(*≧∀≦) な? いないでしょ」
オレ「鍵も閉まってたし、誰もいないよ。……何なのこれ?」
マリちゃん「んー、マリちゃんが何か呼び寄せてるのかもだけど、よくわかんないね〜」
部屋に戻ると、台所からマリちゃんと“誰か”の話し声が聞こえている。
オレ「……これは、アレですね」
Mちゃん「アレとは?」
オレ「友好的なプレデターということで、いいんじゃないかと」
Mちゃん「41、連れて帰ってよ。さっきサキュバスにお願いしてたじゃんw」
オレ「男はやだよー。……ん?性別不明か」
Mちゃん「オレが最初に、マリちゃんが“夜中に男連れ込んでるんじゃないか”って思っただけだよ」
オレ「謎すぎる……」
Mちゃん「けっこう参ってたけど、41が来てくれたから楽になったよ」
オレ「オレ一人だったら、ビビってたかも」
Mちゃん「だろー?」
オレ「気分転換に音出そうか? ヘッドホンでさ」
Mちゃん「夜中だしな……」
オレとMちゃんは、謎のプレデターから目を背けるように、ジャムセッションを再開した。
——しばらくして。
《バタン!》
台所の扉が閉まる音がした。
思わず小窓に目を向けると、アタマの影が通り過ぎた。マリちゃんの声が聞こえる。
マリちゃん「またねー」
ギッギッと足音がして、カギを開け閉めする音もなく、「ガラガラ……ガラガラ、パタン」と玄関の扉が閉まる。
オレ「Mちゃん!オレ見てくるわ……」
オレ《やっぱり、カギは閉まってる》
Mちゃんの部屋に戻る。
オレ「プレデター、帰ったみたい」
Mちゃん「そーなんだよ。41、もう一度台所行ってきて。マリちゃん見てきてよ、飲み物もw」
オレ「やだよ〜!怖いって!タイミング不自然だし!」
Mちゃん「(*≧∀≦) にゃんけんで決めよう」
オレ「……ならば、仕方あるまい」
オレ・Mちゃん「にゃーんーけーん、ぽいっ!」
オレ「ねこぴーちゅキラー!」
Mちゃん「スーパーグー!」
オレ「( ;∀;) 一番悔しい負け方した……」
Mちゃん「(*≧∀≦) 勝負の心、ってやつよ」
オレ「行ってきまーす……」
台所で、マリちゃんはテレビを見てた。
オレ「また飲み物もらってくね」
マリちゃん「多めに持ってっとけば?……あ、ぬるくなっちゃうか。お腹すいてない?」
オレ「お腹はすいてないよ。うどん美味しかったし……」
《……あれ? キッチンテーブルにコップが二つある》
《それに椅子も、誰か座ってたみたいに引いたまま……》
《誰か来てたの?》
《聞いてみたい。でも、こええ〜……》
部屋に戻って、Mちゃんにコップのことを話した。
Mちゃん「コップの飲み物、減ってた?」
オレ「そこまでは見てなかった……」
Mちゃん「(*≧∀≦) じゃあ、もう一度見てきてよ」
オレ「じゃあ、またにゃんけんやる?」
Mちゃん「(*≧∀≦) 今日のところはこれでいいんじゃない? あはははは」
オレ「41は“悪魔”ってたまに言われるけど、Mちゃんの方が悪魔だよね」
Mちゃん「あ!それオレも言われたことある!41といろいろ被るね。ガキの頃のプレデターの幻覚も、さっきのも一緒に見たし!」
屈託のない笑顔。
この笑顔に、信者たちはやられるんだろうなー。
男も女も、Mちゃんに《恋》して、嫉妬するんだろ。
一人占めしたくなって。
——さっきのプレデターも。
友達とばかり遊んでるMちゃんへの、マリちゃんの嫉妬が作り上げた“幻”なのかもしれないって思った。
オレ《ん?》
オレ「ねえ。Mちゃん。話変わるけどさ。ニルヴァーナばっかり聞いてたって言ったよね?」
Mちゃん「ん?ああそうだよ。何で?」
オレ「何で…?何だっけ?」




