第27話《サキュパスとプレデターが来る家 前編》
第27話《サキュパスとプレデターが来る家 前編》をお届けします!
横浜本牧、Mちゃんの部屋。
マリちゃんの美味しい具だくさんうどんを食べ、向かい合って「イー」と歯を見せ合う大の大人ふたり。
しかし、Mちゃんが切り出したのは「事故物件からついてきた女の悪魔」と「夜中2時にやってくる謎の異常現象」の話だった——。
言葉ではなく「楽器の音」で会話するふたりだけのセッションと、静かに迫る夜の恐怖。怒涛の後編へ続く前編です!
第27話《サキュパスとプレデターが来る家 前編》
ここは、横浜。Mちゃんの部屋。
幻聴テレパシーでお昼頃に遊びに来たのに、もう夕方だ。この人といると時間があっという間に過ぎる。
奥さんのマリちゃんが部屋に入ってきた。
マリちゃん「( =^ω^) ほんと、ゲラゲラうるさいわねー。41、まだいるんでしょ? うどん食べる?」
食べる?と聞かれたが、すでにうどんは持ってきてくれてる。
オレ「(*≧∀≦) うまそっ! いただきまーす。」
Mちゃん「マリちゃんのうどん美味しいよ」
何かいろいろ具だくさん。
これからのゲラゲラに備えて、エネルギー補給だ。
マリちゃん「足りなかったら言ってねー」
オレ「はい、これ美味しいっす。ハフハフ、ズルズル…」
Mちゃん「おまえ、うまそうに食べるよなー。ズルズル、ハフハフ。」
オレ「食べるの好きだし、美味しいから。ズゾゾゾゾー。食ったー」
Mちゃん「そして食うのが早い。食べ物、逃げないよw」
オレ「食べ物は逃げないけど、生きてるうちしか美味しいモノ食べれないって考えちゃうんだよね」
Mちゃん「(≧∀≦) ふだんダラダラしてるじゃん」
オレ「(≧∀≦) 思いっきりダラダラしてる。真剣にダラダラ。」
Mちゃん「(((*≧艸≦)ププッ 何それ?」
オレ「説明しづらいっす。いつもデタラメに見えるっす。目の前にいる人見てきたから自分、大丈夫っす。たぶんw」
Mちゃん「 ̄(=∵=) ̄ ウサギを?」
オレ「ウサギ?何ウサギって?」
Mちゃん「ほら、オレの鼻、ウサギっぽいでしょ?」
オレ《(´-ω-`)何言ってんだ。この人?どこがだよ…っていうか、めちゃめちゃイケメンなのに鼻がウサギ?唐突だなーw》
オレ「んー?別にウサギっぽくないよ?」
Mちゃん「そう? 鼻が三角形でウサギって言われてたの。ぽくない?」
オレ「ウサギの鼻って逆三角形じゃなかったっけ?」
Mちゃん「それとさ。ほら見て。イー!」
Mちゃんが急に《イー》って歯を見せてきた。
オレ《ウサギの鼻から歯?》
オレ「歯並び?《イー!》」
ーーオレも《イー》ってやり返す。
Mちゃん「いや。丈夫なんだよ歯! ここだって昔はすぐそこまで海だったから魚取れたの。だから魚を食べてたから歯が丈夫になったんだよ。41も魚食いな」
オレ「わかった。もっと魚食べるようにする」
オレ《(*≧∀≦)わけわからんな、この人。イーって、やりあったのって、幼稚園とか小学校以来じゃないかな。乳歯抜けたの見せあった時?》
ーー
大の大人が向かい合って《イー》してる。
これもまたシュールな光景だよなーw
オレ《何の話から魚食えになったんだっけ?うどん食って早食いからウサギの鼻の話して二人で「イー」か》
話が途中で明後日の方向に飛んでいく。
いつもの事。
「普通」は迷う。でも戻れる。
ーーーー
Mちゃん「(≧∀≦) それでさー。さっきの話の続きなんだけど。うどんはもういい?」
オレ「(((≧艸≦)ププッ どっからの続き? うどんはもういいよ。ごちそうさまでした。」
Mちゃん「オレ、最近変なのに取り憑かれたんだよ…」
オレ「どんなの? お化け?」
Mちゃん「たぶん。急に女が現れるの。それでオレにフ◯ラしてくるんだよ。それがスゲー上手くてさ。オレが出すと消えてくの」
オレ「( ̄□ ̄;)!! は? それ、どんな状況で? 夢じゃなくて?」
Mちゃん「オレ、夢精する年齢じゃないよ。起きてる時に急に出てきてさ。脱がして咥えてくるんだってば」
オレ《( ・∀・)うどんから、うさぎ。歯の見せあいっこ。からの落差…。》
オレ「そういう悪魔いなかったっけ? 確か《サキュパス》。男の生命力奪うヤツ。まだいるのかな?」
Mちゃん「ここ何日かは現れないなー。41来る1〜2週間前はけっこう頻繁だった」
オレ「終わったあと、Mちゃんはどうなってるの?」
Mちゃん「(≧∀≦) え? 出されたまんま、ダラーンとしてるよw」
オレ「それって怖い感じ? 実体化して現れるのか、女の世界に連れてかれるのかわからないけど、不思議だなー」
Mちゃん「最初ちょっと怖かったけど、それよりも《気持ちいい》んだよ。めちゃくちゃ上手いんだよね」
オレ「まだ、いるのかなあ?」
Mちゃん「わからない。でも《ザー》が安く借りた事故物件遊びに行ってからなんだよね。ついて来ちゃったのかなって…」
《ザー》はMちゃんの知人。
《マジで出る事故物件》マンションに住んでいる。
ラップ音に影。足音とか。玄関のドアを開け、入った途端《異常》がわかる。
夏なのに涼しいんだ。霊感あるヤツは、入れずにそのまま帰ったらしい。
ーーーー
オレ「( ;∀;)…うらやましい」
Mちゃん「う、うらやましい?」
オレ「( ・`ω・´)Mちゃんだけズルい」
Mちゃん「(*≧∀≦)ズルいって、おまえ。」
オレ「そーだよ。オレも体験したい! まだいると思う?」
Mちゃん「んー。最近出なくなったからなー。わかんないよ」
ーー
スッとオレは立ち上がり、両手を口の脇ににそえた。
オレ「おーい! 幽霊さーん! まだいるならオレのとこにも来てくださーい! されるの大好きなんでーす! お願いしまーす!」
Mちゃん「(((≧艸≦)ププッ おまえ…」
オレ「(´・ω・`; ) Mちゃんカッコいいから、ついてきたんだよ。オレじゃ無理かなあ?」
Mちゃん「(≧∀≦) 面食いの幽霊?」
オレ「幽霊さんは面食いなんですかー? オレもそこそこだと思うけど、オレじゃダメですかー!」
Mちゃん「(≧∀≦) コラ。人んちで大声上げるな!マリちゃんや、ミーサきちゃうだろ!」
オレ「ゴメン。あまりにも、うらやましくてつい…」
Mちゃん「それよりもさ、今も続いてるのがあるんだよ。そっちのがヤバい」
オレ「これからが本番!?今のでも十分ヤバいと思うんだけどね」
Mちゃん「41。今日泊まってくだろ? 夜中だいたい2時頃に来るから」
オレ「来る? 何が?」
Mちゃん「わかんないんだよ。だから41にも見てほしいの」
オレ「泊まってく。オレにも見えるの?」
Mちゃん「たぶん。見えるし聞こえる。41にも確認してほしいんだ」
オレ「わかった! じゃあ、まだまだ時間あるからー」
Mちゃん「音出して遊んで、待ってよう!」
ーー
お互いまた楽器を手に取る。
オレがベース。Mちゃんがギター。
家に上がったときから楽器は抱えてた。
うどん食べるんで、ひとまず置いただけ。
ふだん話すときも楽器いじりながら話してる。
何となく、相手がいい感じの退いてるなと思ったら、それに合わせてセッションが始まる。
飽きたら話に戻る。
それも《そろそろ飽きたね。やめよっか》って楽器でしゃべってピッタリ終わるんだ。
弾きながら楽器でおしゃべり。
《このノリ面白いね。》
《ここ楽しいね。》
《それカッコいいじゃん》
《そろそろ転調しようか》
全部わかる。
ーーーまた何の合図もなく、二人のセッションが始まった。打ち合わせも、キーも決まってない。
Mちゃんは有名なベーシストだけど、ギタリストでも有名なんだ。
この人と初めてセッションしたときの感動は、今でも覚えてる。
——
オレ《天才って本当にいるんだ…初めて見た。》
だって楽器で話せる人なんて、今までいなかったよ。
何てしゃべってるかわかるんだもん。
ふだんバカ話を交わしてるMちゃんも、バンドで演奏してるMちゃんも知ってる。
でも、同じ世界にいないと、わからないことってあるんだって知った。
オレはずっとこの人の前でベースを弾かないようにしてた。だって、元々、面白そうなガキがいるからって連れて来られたから立場だからさ。
他の人は音楽でつながってる人ばかり。
そんな中で『ほら、Mちゃん。実はオレこんなにベース弾けるんですよ』なんてダサすぎる。
だからオレはベース弾くとこ、ずっと見せなかったんだ。
だけど、ある時期にMちゃんと弾く人いなくてさ。
音出して遊べる相手いなかったみたい。
つーより、Mちゃんが落ち込んでたのかな。
一日中ニルヴァーナばっかり聞いてたんだって。
オレは音楽関係者じゃないから《事情》もわからなかったし、《状況》も知らなかった。
いつものように「Mちゃーん。遊ぼうよ」って電話した。
Mちゃんちに遊びに行ったら、「41弾けるなら音出して遊ぼう」って誘われた。
「いや、無理です」って言うのも変だし。
そもそも、ぜんぜん無理じゃない。
「じゃあやろう」って初めてMちゃんの前でベース弾いたんだ。
ジャムセッション。
テキトーに弾くのは得意だし大好き。
自分が目指してた《ベーシストの形》だ。、
ーーーー
Mちゃん「知らなかったー。41。そんなに弾けたの…」
オレ「うん。ベース好きだから、ずっと一人で練習続けてた。」
Mちゃん「何で今までオレの前で弾かなかった?」
オレ「いやー。何か遠慮しちゃって。Mちゃんの周りから見たら《場違い》みたいなヤツだしさー。ボクも弾けまーすみたいのカッコ悪いし」
そしたら、Mちゃんは、オレと知り合ってから今まで、ずっと損した気がするって言ってくれた。
嬉しかったけど、そう言われるとさ。
自分がいいと思ってしたことが、間違ってたのかって、わからなくなった。
だからセッションするようになったのは最近かな。
ーーーー
二人でペチャクチャ、音でおしゃべり。予告された夜中の《イベント》まで半日以上か。この人となら、ずっと弾き続けられるね。
だけど、Mちゃんが抱えてたのは、オレの想像を遥かに超えてた。
それはもう、「不思議」なんてレベルじゃない。
理屈も、冗談も通じない。まるで世界の一部だけが、音もなく狂ってるみたいな――純粋な“異常”だった。




