第25話《道標となるモノ》
第25話《道標となるモノ》お届けします!
時は遡り、41が19歳の頃。
先輩ジャンキーのタロに「献上物」として連れていかれた場所は、異様なオーラを放つ天才ベーシスト・Mちゃんの自宅だった——。
格付け、マウント、濃すぎる大人たちの中で浮きまくる「異物」の41。
肩書きも何も知らなかったガキの41が、一生ものの“道標”を見つけた「すべての始まり」のエピソードです!
第25話《道標となるモノ》
Mちゃんと出会ったのは、オレが19歳のときだった。
ヤクやってる年上の友人のタロが、ある日突然「Mちゃん家に連れてってやるよ」って連れて行かれた。
オレ《(´-ω-`)…なぜ?えー。誰だろ?》
ーー
そこには何人か、Mちゃんの友達が集まってた。
見回すと、どの人も癖のありそうな大人ばっかり。
19のオレは圧倒的にガキ。
オレ《何の試練だこれ?》
これも《ジャンキー道》か…。
これから、こういう場にも慣れとかないとダメなんかな。
オレ《でも、場違い過ぎる。何のために連れてこられたんだろ…。ガキのオレに用事なんかないだろ》
ーー
タロ「この人がMちゃんだよ。《これ》が41ですw」
オレ《……これ?『モノ』扱いかよ。…いつもと態度違う。いや、格上アピールってやつ?》
オレ《今日はタロの車に乗せてもらってるし、顔も潰せない。》
ーーだけど、そんな違和感もワガママな気持ちも、Mちゃんを見た瞬間に全部吹き飛んだ。
オレ《外人? いや……ハーフか?こんなカッコいい大人、初めて見た。何歳なんだ、この人……?》
オレ「m(_ _)mはじめまして。『41』です。お邪魔させていただきます!」
オレ《本名をフルネームで言った方が良かったのかな?》
そしたら、Mちゃんはニッコリと笑って、こう言った。
Mちゃん「気楽にしていいよ。そこに座りな。みんな、詰めてあげて。んじゃ《41》って呼べばいい?」
真っ白な、コの字型のフカフカのソファ。
周りが少しずつスペースを空けてくれる。オレが座れるように。
ふと見ると、オレを連れてきたタロは床に座ってる。
オレ《……あれ?》
ーー
このときの違和感は、後になって理解した。
オレは、タロからMちゃんへの《献上物》だった。
たまたま、タロがオレの話をしたら、
Mちゃんが「今度連れてきて」って言ったらしい。
何の話題だったかは知らない。
そこは、まぁ、どーでもいい。
でもこの人、《わかってるな》って思った。
──友達になる時。
最初に何て呼び合うか決めるのって一番大事だ。
カッコいいね。
ーー
オレ「(*>∇<)ノ ハイ。41です。逆に《これから》何てお呼びすればいいですか?」
チラッと回りにもペコリと頭を下げ見渡す。
ニコって笑ってくれた人。
素っ気ない人。
手を上げるだけの人。
それでも、ガキのオレには、みんな優しそうに見えた。
ーー
Mちゃん「んーと。みんな《Mちゃん》て呼んでるから、Mちゃんでいいよ」
オレ「じゃあ、Mちゃん! Mちゃんって呼びます!」
Mちゃん「じゃあ、41ね。」
オレ「(*≧ω≦)……お見合いしたみたい。何か照れるw」
Mちゃん「(*≧∀≦) そーだね。あはははは」
──その瞬間、
周囲の空気がピリッと変わった気がした。
オレ《……え?何か変なこと言った?こういうの横浜じゃダメなのかな。……やば、ちょっと大人しくしとこ……》
Mちゃん「41は何、飲む?運転じゃないならバドワイザーあるよ。持ってきてあげる。」
オレ「あ、じゃあバドワイザーいただきます。ボクも取りに行きますよ。」
Mちゃん「座ってていいよ。」
タロ「Mちゃん。オレが台所に取りに行きますよ。それに41は帰りに運転すんだからアルコールはダメだよ。」
オレ《え?そーなの?》
Mちゃん「あ、じゃあタロが一番近いから頼むね。他のやつは?」
友人たちは飲み物リクエストなし。
オレ《この曲、聞いた事あるなー。何だっけ…》
テレビとレコードから流れる音が、やけに乾いて聞こえた。
ーー
そのとき、部屋にちっちゃい女の子が入ってきた。
《ててててて》って歩いてる。
ちっちゃい。まだ、世に出てきたばかりかな。
Mちゃん「(*≧ω≦)ミーサおいで。ほらパパに抱っこしよう。」
Mちゃんが抱き上げようとしたんだけど、スルー。
オレ「ん?」
《ちょこん》
ミーサちゃんは、迷わずオレの膝の上に乗ろうとしてきた。
オレ「よいしょっと。」
手伝って上げる。
無言。背中を向けて座ってる。
オレ《ありゃ?何この状況……!?》
オレ「(*`・ω・)ゞ ミーサちゃんて言うんだね。オレは41。よろしくね」
ミーサちゃんはうつむいたまま。
手にはオモチャ。指先でいじってる。
Mちゃん「(*≧∀≦) あら。珍しい。ミーサは41が好きなの?」
パパの問いかけに頷きもせず、
でも離れない。
オレ「(*≧∀≦) ミーサちゃん、それ、面白い?」
こくん、と頷いた。
Mちゃん「41、好かれたみたいだよ。普段、他の人の膝に乗ったことないもん。」
オレ「お!良かった。ミーサちゃんの初恋、なるかも! がんばります!」
オレ《( ̄^ ̄)まあ、オレも、そこそこハンサムだしな。ミーサ、見る目あるよ》
──そう思ってたら、また空気が変わったのがわかった。
オレ《また、間違えた?何が違う?子供に懐かれたたけじゃん…。》
オレは理解が遅いのかな。
オレ《……あ、なるほど。Mちゃん、ここの“王様”なんだ。》
ここはMちゃんの構築した異空間。
ここの物理法則は未知。
物事が全てイレギュラー。
後手後手に回っていく。
ましてや先手なんてあるのか?
《子供は正直》ーーこれは、わかる。
孤立無援そうなオレを発見して守りにきたの?
でもさ、Mちゃん。
オレ《あなた、ところで誰?》
ーー
Mちゃん「41、ベース弾くんだって? 弾く?」
オレ《なぜそうなるー!?…って、ああ、タロが話したのか》
オレ「は? はい。弾きますけど……今?」
オレ《あれ?》
その時ーー
飲み物を持ってきたタロが口を挟む。
タロ「41、お前ほんとに音楽やってて、この人知らないのか? Mちゃんだぞ。」
Mちゃん「(*≧∀≦) いや、わかんなくていいよ。41も気にしなくていいから。普段どんなの聞いてる?」
オレ「えーと……何でも聞きます。最初はハードロックで、KISSに憧れて……今はソウルやファンク、ジャズも少々……ん?」
──そのとき、Mちゃんの部屋の片隅にあるレコードジャケットが目に入った。
オレ《あれ……このアルバム、友達がめっちゃ聴いてた……》
パチリパチリとピースがはまっていく。
さっきから流れてるこの曲って?
オレ《やっっっべぇぇぇぇ……!!》
Mちゃん「m(。≧Д≦。)m Mちゃん! Mちゃんって、あのあれの、あれであれだから、あのMちゃんなんですね! 失礼しましたー!」
自分でも何を言ってるか分からない。
回りの視線や空気もそういうことだったんだ。
取り繕い方、最悪。ぜんぶ裏目。
──ああ、そうか。
ここはあの“ハーフでアイドルで天才ベーシスト”の自宅。
そりゃ、実物はカッコいいに決まってる。
ここにいる、みんな幼馴染とか、信者とか、関係者とか──?
そんな濃い人たちの中に、突然放り込まれた“異物”。
そりゃあ、浮くよね。
オレ《(´-ω-`)……おとなしくしよーっと》
そこへ奥さんのマリちゃん登場。
ふだんはミーサちゃんを部屋に入れないようにしてたらしい。
マリちゃん「ミーサ、そのお兄ちゃん好きなのー? よかったねー」
ミーサちゃん、コクンと頷く。
Mちゃん「41、オレの奥さん。マリちゃん」
オレ「41です。はじめまして。よろしくお願いいたします」
マリ「マリです。41くん、よろしくね。ミーサ、おいで」
ミーサ「これ…。」
オレの膝に乗ってたミーサちゃんは、振り向いてオモチャを渡してきた。
オレ「これは、どーやって遊ぶのかなー?」
遊ぶも何もない。ただの可愛い人形だ。
だけどーー。
オレ「(*≧ω≦)この子は誰かなぁ?ミーサちゃんの友達?それともー。41って名前なのかなー?こんちわ、こんちわ、こんちわー!」
ミーサを抱っこしながら、人形を動かして首や顔にこちょこちょ。
ミーサ「キャハー!」
ケラケラ笑っちゃってるし。
ミーサちゃん大喜び。
ちょっと打ち解けた。
それともママに呼ばれて、早く遊ばなきゃって思ったのかな。
でも時間切れ。
初めて見る人だから恥ずかしかったのかな。
それとも、この中で一番年が近そうだから?
もっと早くアクション起こしてくれれば、もっと遊んであげたのに。
ミーサ「(*≧ω≦)ンフフフー」
ファーストコンタクト。ちょっとは満足したのかな。
もう一度ママに呼ばれて渋々、膝から降りた。
オレ「またね。ミーサちゃんバイバイ」
ミーサは。ちゃんと振り向いて、バイバイしてくれた。
ーー
さーてと。
これで、子供をかまって誤魔化すという、唯一の逃げ道がなくなってしまった。
──もう、なるようにしかならん。
どう取り繕っても、オレはオレ。
じゃあ、素で行こう。オレの“威力”、見せてやる。
Mちゃん「一服しようか?41もキメるだろ?」
オレ「(*≧∀≦)ハイ!」
Mちゃん「(*≧∀≦)何でもいける?」
オレ「( *´艸`)カラダに悪いモノなら何でも行けます!」
ーー
そこからは、ゲラゲラ笑って大騒ぎ。
Mちゃんと、その友達たちと。
タロは置いてけぼり。
しょうがない。
話のスピードについてこれないんだもん。
オレ《Mちゃんか。よくもまあ、ポンポンと話が飛ぶ人だよな。先が見えない。遠いけど追い付けるよ。》
ーー
突然、タロが口を挟む。
タロ「41。用事あるから、そろそろ帰るぞ」
オレ「あー。了解。」
オレ《用事?用事なんてあったっけ?ああ、そーいうことか》
オレ「(*≧∀≦) Mちゃん、みなさん。お邪魔しました! 楽しかったです!」
Mちゃん「(*≧∀≦) 今度から『41』一人で来ていいよ」
オレ「(*≧∀≦) はーい! じゃあまた!」
オレ《……うっわー。タロ抜きで、いいってことか。……これは……気を遣うやつだな……めんどくさー》
でも、タロには感謝してる。
オレはこの日、生まれて初めて思った。
──「こんなカッコいい大人になりたい」って。
道標ができた。
お互い、何の情報も肩書きも持たないままの出会いだったから──。だからこそ、よかったんだと思う。
優しくて温かくて面白くて。
そりゃー、みんな憧れるだろう。オレが、オレって独り占めしたくなる気持ちにもなるだろうね。
人によっては、天使にも悪魔にも見えるのかもね。
ーー
今ならわかるよ。
タロもMちゃんと知り合いなんだって、オレに自慢したかったんだろう。
オレもまだガキだったんだよ。ごめんね。
ーー
目の前でクシャクシャに笑っている道標ーー。
いなくならないよね?
大丈夫ーー。
アナログの優れた連続性みたいな人だもん。




