第22話《にゃんこはいつでも「にゃんけん」勝負》
現実と夢の境界ーー隙間の世界『にゃんこシティ』のルールの話。勝負はすべて、四すくみの「にゃんけん」で決めます。勝負の心!
第22話《にゃんこはいつでも「にゃんけん」勝負》
ここは、にゃんこシティ。
よろずやの店内。
今日はアムリアのCD販売と握手会で賑わっていた。
そんな中、行列で怒号が飛んでいる。
ーー
ねこA「( ・`ω・´)横入りすんなよ!ちゃんと並べよ!」
ねこB「(#・∀・)うるせーよ!オレの方が前だったろ!ぶっ飛ばすぞてめー!」
アムリア「( ・`ω・´)ちょっとー。ケンカなんてやめてよー」
ねこA「アムちゃん、ゴメン。でも、これは譲れない。こいつが横入りしたんだ。ズルはダメだろ」
ねこB「ガタガタうるせーんだよ。文句あんならやってやるよ」
ねこBが今にも殴りかかりそうに、ねこAの胸元を掴んでいた。
ーーねこにゃんとぴょこにゃんがニヤニヤしながらケンカしてる二人に近づいてくる。
ねこにゃん「おーい。最後尾で何揉めてるにゃん?」
ぴょこにゃん「うちの店でケンカはダメにゃん。ビリ争いにゃ?次に並ぼうとしてるねこたち困ってるにゃ」
ねこA「こいつが、順番守らないんだ」
ねこB「オレの方が片足早かったっつってんだろ」
ねこにゃん「(*≧ω≦)…おまいら、ちっちぇーにゃん」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)仲良くするにょさ」
ねこB「あー?てめーら関係ねーだろ」
ねこA「こいつとオレの問題だ。引っ込んでろ!」
ねこにゃん「(*≧ω≦)ふーん…」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)へー…。」
ねこにゃんが呆れたように呟いた、
その瞬間――!
ーー《クシャ》
一瞬で二人のねこたちは床に貼りつけられた。
まるでペラペラの紙。
ねこの形をした、**"ぺらねこ"**になっていた。
ーー
詠唱も何もない。
ねこにゃんは自分の概念ーー《魔のつくもの全て》で『紙の悪魔』と『圧力の悪魔』の概念を構築。
その力で、ねこたちをペラペラの紙にして押し潰した。
他のねこたちは何が起きたのかさえわからない。
ーー
ぴょこにゃん「表の石碑、見てにゃいのか?集められた時、意識にも刷り込んだはずにゃ?……忘れたか?」
《スー》
《シュッ》
《スーーー…》
ねこA「ギ、ギャアーーー!」
ねこB「グッ、グフゥッ!」
ぴょこにゃんが話ながら指をひと振りすると、紙となった二人のねこが折鶴の形になった。
ぴょこにゃんも自分の概念ーー《マッドサイエンティスト》の力を発動。ハイ・ナノテクノロジーで物質を変換しイメージしたものに作り替える。
本来、一瞬で完成させるが、折り紙のように一度ずつ折り畳んでいったのは演出だ。
二柱が地球に降り立った時に獲得したオリジナルの概念。エスネコ回収と概念世界の困難を乗り越えるために構築した無敵の組み合わせ。それは、この世界の概念たちを軽々と圧倒するモノであった。
そして、こいつらの最も厄介な思考回路は、ふざけながら最適解に向かう。
ーー
ねこにゃん「(*≧ω≦)鶴ねこにゃ」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)違う!ねこ鶴にゃん!」
ーーどっちでもいい話だ。
ねこにゃん「今回は、ゾンビに戻すの勘弁してやるにゃ。おまいら何者にゃ?」
折鶴の形のねこたちから言葉が漏れる。
ねこA「…オレは《文句》だ…」
ねこB「…オレは《暴力》」
ぴょこにゃん「にゃるほど、おまいら最初から《自我》持ってたにょか?」
文句の概念ねこ「…あった。も…元に戻してくれ。いや、ください」
暴力の概念ねこ「…オレ、いや私もありました。カラダが、たたまれて苦しい…息が…助けて…」
鶴の折り紙から苦悶と嘆願の声が漏れる。
ねこにゃん「本来なら自我を持たないゾンビからやり直しにゃんだよ。知ってるよにゃ?」
ぴょこにゃん「誓うにゃ。そしたら今回だけチャンスやるにょさ」
文句の概念ねこ「ハイ。ち、チャンス下さい。《にゃんけん》でお願いします…」
暴力の概念ねこ「私にもご慈悲を…。正々堂々《にゃんけん》で勝負します。だから、ゾンビだけは許してください…」
ねこにゃん「わかればいいにゃん」
ぴょこにゃん「ほれ!」
《ぽんっ》
ふたりは折鶴の姿からねこの姿に戻された。
文句の概念ねこ「はあっ、はあっ…」
暴力の概念ねこ「はあっはあっ。息ができる…」
ーー
行列のねこたちは一連の出来事を驚愕の目で見ていた。
沸き上がる感情は「恐怖」。
いつも、窓口でサボってる二人の本当の姿を目撃したのだ。
ねこにゃん「ちょうどいい。《文句》に《暴力》の概念か。ナイスの組み合わせにゃん」
ぴょこにゃん「おーい。おまいらもよく見とくにゃ。ケンカしちゃダメにゃん。みんな《にゃんけん》わかってるよにゃー?」
ぴょこにゃんが大きな声で行列に向かって話しかけた。
全員、大きく首を縦に振る。
うなずくものもいれば、慌てて何度も首を振るものもいた。
アムリア「( =^ω^)みんなー。大丈夫よー。続けましょー」
《フワァ…》
アムリアの一言。
それだけで、そこにいたねこ神たちは《恋》をする。
緊迫した空気が一気に和む。
恋の魔法ーー。
行列のねこたちが叫ぶ。
《ウォー!アムリア様ー!》
《アムちゃん、神ぃ!》
《アームリア!アームリア!》
《パチパチパチパチ》
ーー
ねこにゃん「恋の概念の力、ヤバイにゃ。アムリアの一言で、みんな恋に落ちるか…。」
ぴょこにゃん「耐性つけといてよかったにゃ。恋の奴隷にされるにゃん。」
ーー
ねこにゃん「さーてと。文句ねこと暴力ねこ。おまいらの順番、前か後ろか決めるにゃん。後のにゃんこたちは、そのままの順番でちょっと待っててほしいにゃん」
《シーン…》
ねこにゃんの温かい言葉。
だがーー。
騒いでたねこたちは静まり返った。
《恋》の興奮は止まり、正気に戻る。
ーー《あれ》を見て逆らうものなどいない。
自我に目覚めたねこたちは、自分達の理解できない、二柱の力を目の当たりにしたのだ。
ーー
ねこにゃん「(*≧∀≦)/それじゃ二人、にゃんけんで決めるにゃんよ。」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)勝負の心にゃ」
何の温度差も感じないドライな二人。
この街と絶対のルールを作ったものたち。
ふだんのユルさとの落差。
それを見たねこたちの感情は《恐怖》から《畏怖》に変わっていく。
ーー
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)ハイ!勝負開始!」
ねこにゃん「(*≧ω≦)心理戦にゃよー」
文句・暴力「にゃーんけーん…。ぽいっ!」
文句「(*`Д´)ノ!!!ねこぴーちゅ!」
暴力「(ノ`Д´)ノ彡┻━┻ ねこぴーちゅキラー!」
ーー
文句「うっ!…まいりました。…その勇気たたえます。」
暴力「ふう…。勝てた…。いい勝負だった。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)/ ハイ。ケンカは終わり。じゃあ暴力が前ね」
ぴょこにゃん「終わりにゃん」
素直に従うねこたち。
ーー
この世界では争い事は正々堂々全てタイマン。
四すくみのじゃんけんーー《にゃんけん》で決まる。
ーー
古ぼけた昭和の建物。
見せかけはフェイク。
雑貨店でアミューズメントパーク。
異次元DISCOで躍り騒げる、にゃんこシティの人気店。
その入口の前に、一枚の巨大な黒石の板が斜めに傾けられて鎮座している。
縦に3メートル、横に2メートルほど。素材は重く冷たい闇鉄岩。
表面には光沢があり、刻まれた文字は光を反射して鈍く白く浮かび上がっている。
それを目の前にすると足元にサークルが生まれ《縛り》が生まれる。
ルールを破ったら自我を失いゾンビねこからやり直し。
にゃんこシティ唯一無二のルールであった。
石碑の上部にはこう刻まれている。
ーー《にゃんこは、いつも、勝負の心》ーー
その下に、にゃんけんの4種の手のシンボルが、レリーフのように刻まれ、ルールが書かれている。
▷ スーパーグー
・親指を立てて、他の指を握る。グッドサインの形。「ねこぴーちゅキラーに勝てる。オーケーパーとねこぴーちゅに負ける」
▷ オーケーパー
・親指と人差し指で丸を作り他の指は開く。オーケーマークの形。「スーパーグーとねこぴーちゅキラーに勝てる。ねこぴーちゅに負ける」
▷ ねこぴーちゅ(中指と薬指のピース)
・中指と薬指を立てて他の指を握る形のピースサイン。「スーパーグーとオーケーパーに勝てる。ねこぴーちゅキラーに負ける」
▷ ねこぴーちゅキラー
・親指と中指を立てて他の指を握る「ねこぴーちゅだけに勝てる。スーパーグーとオーケーパーに負ける」
ーー
その下に、こう続く:
「にゃんけんは、ただの遊びではない。その瞬間において、すべての秩序を決する契約行為である。」
「どんな争いも、この勝負で清算される。勝ちも、負けも、すべて潔く受けよ。」
「不正な戦いは禁止。もし破れば《縛り》が、おまえを見ている。」
ーー
そして最後に。
石板の下に、こう刻まれていた。
『この石板に刻まれしは、にゃんこシティ創世よりの掟である。正々堂々、勝負の心を忘れるな』
ーー
この石板の前では、誰もが立ち止まり、自我に目覚めた時の自分に立ち返る。
《にゃんけん》は、ふざけシステムが出した最適解。
にゃんこシティで生きる者の唯一無二のルールとして定められた。
ーーーー
ねこにゃん「(*≧ω≦)なあ、ぴょこ、にゃんけんするにゃん」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)フフ。何番勝負にゃ?」
ねこにゃん「( ̄^ ̄)一発勝負にゃ。勝ったら?」
ぴょこにゃん「( ̄^ ̄)上等にゃん。負けたら?」
ねこにゃん「(*≧ω≦)おりが勝ったら、おまいは、下界行って、アムリアとここの客全員分の、焼きそばパンと牛乳買ってくるにゃ。」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)おりがパシりだとー。その勝負受けた!負けたらおまいがパシってくるにゃ!」
ねこにゃん・ぴょこにゃん
「じゃあ、にゃーんーけーんー・・・、ぽいっ!」
ねこにゃん「(*`Д´)ノ!!!スーパーグー!」
ぴょこにゃん「(ノ`Д´)ノ彡┻━┻ ねこぴーちゅキラー!」
ねこにゃん「(*≧ω≦)やった!一番気持ちいい勝ち方にゃん!」
ぴょこにゃん「( ;∀;)ぐぬぬぬ。めちゃ悔しいにゃ…。」
ねこにゃん「おまいの分も買ってくるにゃん。いっしょに食べようにゃ。」
ぴょこにゃん「(#゜Д゜)ノ当たり前にゃろ!次また勝負にゃ!」
ねこにゃん「次は三番勝負、いや五番勝負にするにゃ。より複雑なるにゃ」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)負けて泣くにゃよ」
ねこにゃん「(*≧ω≦)いつでも来いにゃ」
アムリア「ねえ。アタシも入れてよ」
握手会が終わったアムリアが駆け寄ってきた。
ぴょこにゃん「どっちと勝負にゃ?」
アムリア「(*≧ω≦)どっちともよ。負けたらアタシに《好き》って10回言うにょよー。ウフフ。」
ねこにゃん「じゃあ、おりが勝ったらおまい何するにゃ?」
アムリア「(*≧ω≦)好き!って10回言ってあげる。嬉しいでしょ?」
ねこにゃん「(´・ω・`; )……コイツ厄介にゃん…」
ぴょこにゃん「じゃあ、とりあえず焼きそばパンと牛乳買ってくるにゃ。勝負は後で!」
ねこにゃん・アムリア「行ってらっしゃーい」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)くっそー!」
ぴょこにゃんは、下界とつながる《ゲート》を開けて買い物に出掛けていった。
去り際に小さな声が聞こえた。
ぴょこにゃん「( ;∀;)…次は負けにゃいからなー…」
ーそう、《にゃんけん》は四すくみの不公平ルール。
最強の手と最強以外に勝てない手。
勝ち方、負け方で嬉しさと悔しさが異なる。
ーーにゃんけんは勝負の心。
ルールを作ったモノたちも従わなければならない。
《にゃんけん》はしょうがないのだ。




