第21話《よろずや大繁盛》
第21話《よろずや大繁盛》
にゃんこシティ中央にある雑貨店「よろずや」は大繁盛である。
錆びたトタン屋根の二階建て。
屋根には、手書きで「よろずや」と書かれた木製の看板が掲げられていた。
昭和のタバコ屋を思わせる窓口では、ねこにゃんとぴょこにゃんが肘をつき、街を眺めたり、時に眠ったりしている。
その窓口の隣にある引き戸を開けると、外観とはまるで違う、広大で不思議な空間が広がっていた。
商品はすべて、駄菓子屋風のガラスケースに、斜めに立てかけられて並んでいる。
小物から車まで、あらゆるものがガラスケースに収まっている。
よろずやを中心に、にゃんこシティはすでにほぼ完成していた。彼らの役目は《お店屋さんごっこ》。
よろずやの店長は《恋》の概念ねこ神、アムリア。
ねこぴょこたちのクローンとゴーレムがにより、集められたゾンビねこたちは、例外なくアムリアに恋をする。
そして《恋の奴隷》となった彼らは、お店屋さんごっこ、アイドル推しごっこ活動を通して、少しずつ自我を獲得していくのだった。
ねこぴょこたちは、ごっこ遊びに備え、通貨や肉球スタンプカードを発行。
ガラスケースには「肉球認証」装置も設置されている。欲しい商品があれば、そこに前足を置くだけでOKだ。
雑貨スペースのまわりにはフードコートがあり、螺旋状につながる上階にはゲーセンや《異次元DISCO》など様々な施設が用意されている
ーー
現状、よろずやの主力商品はアムリアのグッズである。
ねこぴょこたちは状況を見極め、未来予測のうえビジネスモデルを構築する。
人の世界の《欲》を模倣し最適化していく。
アイドルとして大人気となったアムリアに、ねこぴょこたちは一時、ゾンビねこたちが全員《恋の奴隷》になることを危惧したが、それは杞憂だった。
ねこぴょこたちはアムリアのために曲をつくり、ステレオや「キャットウォークマン」を販売。
ゾンビ状態だったねこたちも今や、自我を持ち、かつての概念の力に目覚めていった。
ーー今日は握手会。
国家的ヒット曲「フンフン in the night」のCD発売日だ。
ーー
アムリアファン「アムちゃん!いつも応援してます!10枚買うんで、サインもらっていいですか?できればボクの名前も…」
アムリア「いつもアリガト♪ もう名前は決まってるの?」
アムリアファン「まだ、自分が何の概念か気づいたばかりで…。できればもう100枚買うんで、名付けもお願いできますか?」
(後ろの列から声)「おい!ひとり3分って決まってるだろ!名前とか、図々しいぞ!自分で決めろよ!」
アムリア「(*≧∀≦)/ケンカなんてダーメヨー。みんな仲良く楽しくしてってネ♡」
ファンたち《ウォー!アムちゃーん!アムリア様ー!》
文句を言ってたファンも「ゴメン…待ってるから…」と頭を下げる。
一言で制圧。
『ポアン』で『フワァ』で『ドキドキ』でーー。
複雑な感情が迷走しアムリアへと集束する。
性別問わず恋の奴隷。
意思のあるものなら、例え石ころのような無機物でも、その力は及ぶと思われた。
それほどにアムリアの《恋》の概念の力は無双する。
ねこぴょこたちの危険予測は的中。
アムリアへ失恋し耐性を獲得することは必然だった。
ーー
ねこにゃん「アムリア、怖ゎーっ!」
ぴょこにゃん「これは恋愛ごっこ?未来情報検索ーー《推し活》?これも《ごっこ》にゃんか?」
ねこにゃん「愛は地球を救うにゃん」
ぴょこにゃん「恋にゃ」
ねこにゃん「恋はゾンビを救う」
ぴょこにゃん「おまい、あっちにいってろにゃん」
ーー
アムリア「( =^ω^) 待たせてゴメンね。あにゃた何の概念なの? 教えて」
アムリアファン「自分、《ノロマ》の概念です!」
アムリア「(^ー^)ノ じゃあ、ノロちゃん!これからもヨロシク。《フンフン in the night》は上のDISCOで歌うから、ライブにも来てね」
ノロ「行きます!やったー!ずっと応援する!アムちゃんありがとう!」
アムリア「ハイ、次の人〜。さっきは待たせてゴメンにゃさい。今日は来てくれてアリガト。何さんて呼べばいいかな〜?」
ーーアムリアの必殺ポーズ《首かしげスカイブルー上目遣い》が炸裂。
列に並ぶねこたちも、次は自分とばかりにメロメロになって待つのだった。
ーーその様子をぬるい目で見つめる二人。
ねこにゃん「結局、奴隷にゃんw」
ぴょこにゃん「まあ、いいにょさ。でも、こんなんで自我に目覚めるとはにゃあ」
ねこにゃん「作ったグッズ売って、お店屋さんごっこ覚えたにゃ」
ぴょこにゃん「音楽も楽しむし、人間の食べ物まで食べてるにゃん」
ねこにゃん「裏の畑で、おりたちの主食も作ってくれてるにゃ。高級イチゴ農園ごっこ。」
ぴょこにゃん「近くに海持ってきたから、漁業もにゃ。みんなそれぞれ《ごっこ》で楽しんでる。いいことにゃー」
ねこにゃん「アムリアに言われたら断れにゃいだろ。加速度的に自我獲得進んでるにゃん。」
ーーそんな中、
握手会の列で声を荒げるねこたちがいた。
揉め事である。
ねこにゃん「やっと出番にゃん」
ぴょこにゃん「見せしめ教育にゃん」
ねこにゃん「( ・ω・´) ん?お主も悪よのう、にゃん?」
ぴょこにゃん「( ・ω・´) ほー。おまいはバカよのう、にゃん」
ねこにゃん「(≧ω≦) にー」
ぴょこにゃん「(≧ω≦) にー」
ふたりは楽しそうに、騒ぎの中心へと歩いていった。




