第10話《綻びる異空間》
第10話《綻びる異空間》
ここは、虹色に輝く真空の異空間。
サイケデリックな七色の帯が、縞模様を描いてゆらめいている。
その揺らぎの中で、二つの《粒》が忙しそうに動きながら会話していた。
ーー
ベータ「おまいさー、ここ。しっかり縫うにゃん。おまいが縫ったとこ、またほつれて穴開いてるにゃ」
アルファ「だってさー。裂けた空間、縫うなんて、やったことにゃいもん」
「粒」の一つ、ベータが「ここ」と指す先では、縞模様が断層のようにズレ、隙間から裂け目が生まれていた。
その裂け目は「異空間」の外の《白い闇》を、ちらりと覗かせている。
白い闇は、美しい縞模様を侵食し、黒く染め上げる。
そして、それは《虚無》となる。
ーー
ベータ「あー、ここも漏れてる。やれやれにゃん……チクチクチクチクっと」
ベータがジグザグに動きながら、裂け目を縫うように動くと、綻びはするすると消え、裂け目は閉じた。
アルファ「なぁ、ベータ」
ベータ「( ・`ω・´)口動かさずに手を動かすにゃん! 話してもいいけど、手を止めたら先生怒るにゃ!」
アルファ「( ・`ω・´)誰が先生にゃ。おりたち穴はあるけど、手も口もにゃいにゃん……やれやれ……チクチクチクチクっと」
アルファもジグザグに動き、裂け目を補修していく。
ベータ「おまいが言いたいことも、突っ込みたいことも、わかってるにゃ。チクチクチクチク〜っと」
アルファ「チクチクチクチク……こっちもか。チクチクチクチクっと!」
ベータ「ほぉ、勤勉だにゃ。偉いぞアルファ。先生もマンモスうれぴーにゃ」
アルファ「おまい、オレに昭和ネタやっとけばいいって雑に扱ってにゃいか?」
ベータ「そんなことにゃいよ。ごめんにゃ。ちょっと、この状況に飽きてきただけにゃ」
アルファ「おりもにゃ〜……」
──
自我を持つ《対の粒》ーーアルファとベータ。
この世界を創造し、支配する者たちだ。
彼らがせっせとチクチクしているのには、明確な理由がある。
ーー
アルファ「やっぱエスネコだよにゃー。あれの消失としか考えられないにゃん」
ベータ「それにゃんよ。おまいもおりも、どこも欠けてにゃい。元のままにゃ。アイツ、突然分裂しただけだから関係にゃいと思ってたにゃ。……つか、あのときの計算、間違ってたのかにゃあ?」
アルファ「んにゃ。あのとき、おりたちの判断は、間違ってなかったにゃ」
ベータ「でも外れたにゃ。こんなの初めてにゃー」
アルファ「( *´艸`)フフ。初めては誰でもある。」
ベータ「いきなり偉そうにすんにゃ! なに他人事みたいな口きいてるにゃ。連帯責任にゃ! おり黒板拭くから、キミは雑巾もかけなさい!」
アルファ「できにゃい。おりたち、手も足もにゃいよ」
ベータ「そこはフツーかい!? 怒んぞマジでー!!」
アルファ「ゴメンにゃん……さて、どうするかだにゃ」
ベータ「答えは出てる。エスネコ、回収しに行くにゃ」
アルファ「おりが思いっきりパンチしたからにゃー。必殺! 次元時空拳!」
ベータ「はあ……キックにゃ。おまい、この話のプロローグから読みなおせにゃ。…もう突っ込まにゃいよ。」
アルファ「(*≧ω≦)キックでしたにゃ。」
ベータ「もう、手も足も何でもアリでいいにゃん。これ読んでる人も、めんどくさくなるから」
アルファ「あ、投げた」
ーーーー《ペリ…》
次元の膜が剥がれる。
剥がれた裂け目は、縞模様を万華鏡のように変化させている。
ベータ「あ、またにゃ。アルファ、あっち縫うにゃ!」
アルファ「ブラボー了解! 縫いに行くでありますにゃ!」
《チコーン!》
二つの粒は対消滅し、それぞれ別の裂け目地点に姿を現す。
ーー
アルファ「必殺! ミステリーサークル縫いー! チクチクチクチク!」
ベータ「やるにゃアルファ。ではこちらも真剣にお相手いたそう。奥義! ロズウェル事件隠蔽縫い!」
アルファ「うぐぐ……不覚! しかし、ワタシにはまだ残されたものがあるにょだ!必殺やり直し秘技! アヌンナキ阿吽抜き切りー! ……あ。切っちゃった。ヤバ。チクチクチクチク」
ベータ「はー……おまい、もう手伝わなくていいにゃ。おりの見とけ!隠し奥義! 秘湯熱闘甲子園縫いっ!」
アルファ「あー、温泉いいにゃー。おりも真面目にガンバるよー!哀愁絶技! 母さん夜なべ手袋縫いー!」
ベータ「よくそんなに、ふざけられるにゃー……では、ワレも見せよう。古武術相伝!おじいさんの古時計チクタクチクチク縫い!」
──世界のどこかで、誰かがふと呟いた気がした。
?「……まだ、余裕あるじゃんw」
ーー
アルファとベータは、異空間の崩壊を止めるためにチクチク縫いまくる。
アルファ「おーい。ベータ。そっち持つにゃん。縫ったとこ折り畳むにょさ。」
ベータ「オーライにゃー。せーのーっ!」
ーーー《ピシッ》
アルファとベータは縫い合わせた《場所》の次元を折り畳む。
そして、崩壊の進行を一時的に固定させた。
ーー
アルファ「さて。これで、しばらくは持つにゃ。エスネコの行方、トレースするにゃ」
ベータ「ブラボー了解! 《二次元レンズ》起動するであります!」
アルファ「( ・`ω・´)あ、それ。さっきおりが言ったやつ」
ベータ「どーでもいいわー。マジこいつ、うぜーわー」
アルファ「( ;∀;)おりのブラボーにゃのに……グスン。」
ベータ「( ・`ω・´)ウソ泣きしてもダメにゃん! 早くレンズなるにゃ! せーのでやるよ!」
アルファ「(*≧∀≦)/ブラボー了解! レンズやるであります!」
ベータ「((ヾ(≧皿≦メ)ノ))! 怒んぞ! マージーでー!!」
アルファ「( ;∀;)ひゃいっ!」
──《キュッ!》
プラスチック容器を洗ったような音。
一瞬で二つの《粒》は、それぞれ半球の形に変化した。
《キャン!》
平面には、無軌道に11の「穴」が出現する。
ーー《シュオゥン、シュオゥン、シュオゥン!》ーー
その穴ひとつひとつに、うねるエネルギーがウロボロスの蛇のように流れ込み、また吐き出されていく。
《スー…》
やがてすべての穴は閉じ、なめらかな鏡面へと姿を変える。
……次の瞬間。
《パチリ》
その鏡面からギョロリと「目」が開いた。
11の目。
それぞれに曼荼羅模様をたたえた知性ある瞳。
《二次元レンズ》
それは全ての事象を平面化し観測する事ができる。
アルファとベータ。
二つの《粒》はそれぞれが「右目」と「左目」として11の対になる。
《二次元レンズ》はエスネコのトレースを開始した。
アルファ「さーて、面白くなってきたにゃん。」
ベータ「エスネコ捕まえるぞ!」
アルファ「(*≧ω≦)にー。」
ベータ「(*≧ω≦)にー。」




