第4回
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本陣から飛び出したクロの一群と、それに続くタマ、兵之輔の一群。
黒蕊別動隊は蘇芳本隊や橘三国同盟軍に守られるようにして大川を駆け抜けていく。
慌てて飛び出してくる吾妻・小田原軍を一掃しながら、別動隊は影密のいる小田原本陣へと突っ込んでいくのだった。
周囲では猛々しい声を張り上げながら、敵兵を抑え込まんと橘、上貫、千石を始めとした蘇芳満中同盟軍が奮戦していた。
そんななかを、クロを先頭にして次々に敵兵を払い除けながら、別動隊は昼間とは打って変わったような勢いで前へ前へと進み続けた。
吾妻・小田原軍は夜襲をそこまで予期していなかったのか、油断した様子でろくな装備もなしに取るものもとりあえず太刀や槍、長刀だけを手にしているものの姿もあった。
それらを同盟軍は次から次へと蹴散らし道を作る。
その道を黒蕊別動隊はひたすらかけ続けた。
馬に乗った兵が立ち向かって来るのを、兵之輔が長刀で下からひと突きで打ち倒す。
クロが薙ぎ払った大太刀により負傷しつつも、それでもなお襲い掛かってくる敵兵にとどめの一撃を繰り出していくタマ。
猿彦は敵兵の武器をあの軽業で巧みに奪い取りながら反撃し、太郎佐組と次郎佐組に守られるようにして、音羽組が向かって来る敵兵の頭上に矢の雨を降らせていった。
橘三国の奮闘もあり、別動隊は順調に大川を渡り切った。
目の前の丘の上に吾妻・小田原本陣の姿が大きくなり、いよいよというところで、
「ここより先には進ませぬ!」
敵の馬廻り衆と思しき一団が黒蕊別動隊の前にずらりと並んだ。
「かまわず突き進め! 大将首はすぐ目の前だ!」
クロの叫びに、黒蕊別動隊からそれに答えて「応!」と次々に声が上がった。
しかし敵馬廻り衆の腕前は相当のものだった。
ここで猿彦、太郎佐、次郎佐、音羽を始めとした別動隊の動きが急に止まる。
「おのれ! 邪魔をするな!」
猿彦の叫びに、
「ここで返り討ちにしてくれるわ!」
長刀を振るう馬廻り兵の柄を飛び越え、猿彦は馬廻り兵の背後に着地した。
そのまま隙を突こうとしたのだが、
「舐めるな!」
その背後に向かって長刀を薙ぐ馬廻り兵の攻撃に、猿彦は咄嗟に飛び退いてこれを避けた。
太郎佐と次郎佐はその態勢を変えることなく音羽組を守りながら馬廻り衆と対峙していたが、やがて音羽組の矢も尽き果てるとそこからは乱闘状態と化していった。
敵味方入り乱れての打ち合いは傭兵浪人の集団とは思えないほどの奮戦を敵馬回り衆に見せつけ、互いに疲弊をもたらしつつも、いつ終わるとも知れない戦いに双方傷だらけになりつつあった。
「ここは俺たちが食い止める! クロとタマたちは先へ進め! 動けるやつはふたりを援護しろ!」
兵之輔が敵のひとりの首を刎ね、振り向きざまにそう叫んだ。
「すまん! 頼んだぞ、兵之輔!」
「任せろ!」
そのまま新たな敵へ向かって駆けていく兵之輔の背中を見送り、
「行きましょう、姫――いえ、タマ殿」
「……あぁ」
タマは頷き、じっと丘の上の敵本陣を見上げた。
「行くぞおおおおおぉぉ――!」
クロが叫び、駆けだすのに続いてタマと猿彦たちもそれに続くのだった。
クロが大太刀を薙ぎ払って邪魔をする敵兵を一刀両断にしていくのを、取りこぼした敵兵のとどめを刺すようにタマの双刀がその首を次から次へと刎ねていった。
猿彦や太郎佐、次郎佐たちもそれに続くように敵兵たちを打ち倒しながら、丘の上へ向かって全力疾走していく。
丘の上の本陣には、こちらを忌々しそうに見つめながら、弓を手にした見覚えのある甲冑の男――影密の姿がそこにはあった。
瞬間、タマの脳裏に宗像での思い出と恨みがよぎる。
ついに、この時が来たのだ、と。
「見えたぞ! あと少しだ! 気を抜くな!」
クロの声が、タマたちを励ますように叱咤した。




