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第七十三話 「それぞれの道」

卒業式から数日後。


天女学院の校門には、もう真昼たちの姿はなかった。


制服ではなく、それぞれが私服で新しい生活を歩き始めている。


⸻


五条会本部。


「若頭、おはようございます。」


組員達が一斉に頭を下げる。


「おはようございます。」


真昼は青い着物姿で廊下を歩いていた。


学院に通っていた頃とは違う。


今日からは一日中、五条会の若頭としての仕事が始まる。


会長室。


真人が資料に目を通していた。


「来たか。」


「はい。」


真昼は真人の前に座る。


「学院生活は終わった。」


「これからは若頭として、お前に任せる仕事も増える。」


「承知しております。」


迷いのない返事。


真人は静かに頷いた。


「期待している。」


「ありがとうございます。」


⸻


一方、その頃。


佐倉家。


紫雲は縁側に座り、庭を眺めていた。


風が髪を揺らす。


「お嬢様。」


使用人が一通の封筒を持ってくる。


「五条様からです。」


紫雲は少し驚きながら受け取った。


中には一枚の便箋。


そこには真昼らしい綺麗な字で、短く書かれていた。


『仕事が落ち着いたら、お会いしましょう。』


それだけ。


飾り気もない。


だが、真昼らしい言葉だった。


紫雲は優しく微笑む。


「はい。」


誰に返事をしたのか、自分でも分からなかった。


⸻


夕方。


五条会本部。


真昼は仕事を終え、本部の庭へ出る。


夕焼けが空を赤く染めていた。


学院で過ごした一年。


長いようで短かった。


「真昼。」


真人が隣へ立つ。


「後悔はないか。」


真昼は少し考えた。


そして静かに答える。


「ありません。」


「そうか。」


真人は満足そうに頷いた。


「なら前を向け。」


「はい。」


真昼は空を見上げる。


もう学生ではない。


五条会の若頭として。


そして。


紫雲の婚約者として。


守るべきものがある。


そのために歩き続ける。


それが。


五条真昼の選んだ道だった。

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