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第七十二話 「卒業の日」

春。


柔らかな陽射しが天女学院を包んでいた。


校門には「卒業式」と書かれた立て看板。


晴れ着姿の保護者たちが行き交い、学院はいつも以上に賑わっていた。


卒業生控室。


真昼は制服の襟元を整え、静かに窓の外を眺めていた。


「真昼!」


元気な声と共に乃亜が部屋へ飛び込んでくる。


「もうすぐ始まるよ!」


「そうですね。」


真昼は穏やかに頷いた。


茜も苦笑しながら近付く。


「乃亜ったら朝から落ち着きがないの。」


「だって今日で卒業なんだよ!?」


「分かっています。」


真昼の返事に、乃亜は頬を膨らませた。


「最後まで真昼は真昼だね。」


その一言に、三人は小さく笑う。


そこへ紫雲もやって来た。


「お待たせしました。」


「紫雲!」


乃亜が手を振る。


紫雲は真昼の隣へ立ち、優しく微笑んだ。


「いよいよですね。」


「はい。」


短いやり取り。


それだけで十分だった。


やがて式が始まる。


卒業証書授与。


一人ずつ名前が呼ばれていく。


「月夜 真昼。」


真昼は静かに立ち上がる。


壇上へ進み、理事長・春野薫から卒業証書を受け取る。


「卒業、おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


深く一礼する。


会場から自然と拍手が起こった。


真昼は席へ戻る。


その背中を、紫雲は誇らしそうに見つめていた。


式は滞りなく終わる。


卒業生たちは教室へ戻った。


担任の宮里蘭が教壇へ立つ。


「これで皆さんともお別れですね。」


教室は静かだった。


「皆さんなら、それぞれの道で立派に歩いていけると信じています。」


蘭は微笑む。


「卒業、おめでとうございます。」


その言葉と同時に、大きな拍手が教室に響いた。


教室を出る頃には、夕日が校舎を赤く染めていた。


真昼は校門の前で立ち止まる。


何度も歩いた通学路。


初めて制服を着てくぐった校門。


様々な思い出が脳裏をよぎる。


「真昼さん。」


紫雲が隣へ来る。


「帰りましょうか。」


真昼は校舎をもう一度見上げた。


そして、小さく頷く。


「はい。」


二人は並んで歩き始める。


その背中を、春風が優しく押していた。


天女学院で過ごした日々は終わる。


だが。


二人の未来は、ここから始まるのだった。

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