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第七話 女子寮

天女学院女子寮。


学院から少し離れた丘の上に建てられたそれは、もはや高級ホテルだった。


長い廊下。


シャンデリア。


落ち着いた香り。


真昼は静かに周囲を見渡す。


「……広いですわね」


「今ちょっと間があった!」


隣で柊乃亜が即座にツッコむ。


「素で喋りかけたでしょ!」


「気のせいですわ」


「絶対違う!」


真昼は小さく溜息を吐いた。


正直、疲れていた。


学院では常に“月夜真昼”を演じ続けている。


立ち方。


喋り方。


笑い方。


視線。


全部。


少しでも崩せば終わる。


「はい、ここが真昼の部屋ね」


乃亜が扉を開ける。


中は広かった。


白を基調とした落ち着いた部屋。


大きな窓。


本棚。


机。


生活に困るものは何一つない。


真昼は静かに室内を見回した。


「……悪くありませんわ」


「素直じゃないなぁ」


乃亜は笑いながらベッドへ飛び込む。


その瞬間。


コンコン、と扉が鳴った。


「失礼します」


寮母だった。


「本日から入寮される月夜様ですね」


「ええ」


「夕食は十九時からになります。大浴場の利用時間は――」


その言葉で、真昼の動きが止まる。


「……大浴場?」


「はい?」


乃亜も固まった。


数秒。


静寂。


そして。


「「あっ」」


真昼と乃亜の声が重なった。


寮母は不思議そうに首を傾げる。


「どうかされましたか?」


「い、いえ! なんでもないです!」


乃亜が慌てて誤魔化す。


寮母は首を傾げながらも去っていった。


扉が閉まる。


沈黙。


真昼は静かに口を開く。


「……風呂」


「忘れてたぁぁぁ!!」


乃亜が頭を抱えた。


「どうすんの!? 女子寮だよここ!?」


「一人で入れば問題ない」


「大浴場って言ったじゃん!」


真昼は腕を組む。


「なら深夜に入る」


「それしかないかぁ……」


乃亜はベッドへ倒れ込む。


真昼は窓際へ立った。


外では夕焼けが空を赤く染めている。


静かだった。


五条会本家とは違う。


怒号もない。


血の臭いもない。


ただ女子生徒達の笑い声だけが聞こえる。


「……妙な場所ですわ」


「ん?」


「騒がしいのに、落ち着きますのね」


乃亜は少しだけ目を丸くした。


それから笑う。


「それ普通の日常って言うんだよ」


普通。


その言葉に真昼は小さく黙る。


自分には縁の無かったもの。


その時だった。


廊下から騒がしい声が聞こえてくる。


「月夜様ってどこのお部屋!?」


「挨拶行きたい!」


「絶対綺麗だよね!」


真昼の顔が真顔になった。


乃亜が吹き出す。


「うわ、完全にロックオンされてる」


「……帰りたいですわ」


「まだ初日!」


直後。


ドンドン! と扉が叩かれる。


「月夜様ー!」


「お話しませんかー!?」


真昼は無言で乃亜を見る。


その目は本気だった。


「……敵襲ですわ」


「使い方違うからね?」

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