第六十六話 「死闘」
刃と刃がぶつかる。
激しい金属音が部屋に響いた。
真昼と一輝。
互いに一歩も引かない。
一撃。
二撃。
三撃。
斬撃の応酬。
常人なら目で追うことすら出来ない。
紫雲は固唾を呑んで見守っていた。
「はぁっ!」
一輝が踏み込む。
重い一撃。
真昼が受ける。
床に亀裂が走った。
だが。
真昼は表情を変えない。
受け流し。
反撃。
赤い刀が一輝の肩を掠める。
鮮血。
しかし一輝は笑った。
「いい!」
まるで喜んでいるようだった。
「もっとだ!」
再び踏み込む。
狂気じみた笑み。
真昼は眉をひそめる。
「理解できません」
「何がだ?」
「何故そこまで戦いに執着するのですか」
一輝は笑う。
「簡単な話だ」
刀を振るう。
真昼が避ける。
壁が砕けた。
「俺はお前と戦いたかった」
「ずっとな」
「それだけだ」
真昼は何も言わない。
理解出来ないからだ。
誰かを傷つけ。
組を巻き込み。
紫雲を攫ってまで。
その理由が。
「狂っていますね」
真昼が言う。
一輝は笑う。
「今更だろ」
次の瞬間。
二人が同時に踏み込む。
激突。
轟音。
衝撃で窓ガラスが割れた。
夜風が吹き込む。
その時だった。
「若頭!」
扉が勢いよく開く。
漢江会の構成員達が雪崩れ込んでくる。
銃。
刀。
鉄パイプ。
武装した男達。
紫雲の顔が青くなる。
だが。
一輝は不機嫌そうに舌打ちした。
「邪魔だ」
男達が固まる。
「若頭?」
「これは俺の戦いだ」
一輝が睨む。
「誰が入って来いと言った」
その一言で空気が凍った。
男達は言葉を失う。
しかし。
その隙を真昼は見逃さない。
踏み込む。
一閃。
一輝が咄嗟に受ける。
だが。
完全には防げない。
胸元が切り裂かれる。
血が飛ぶ。
一輝は後退した。
そして。
笑った。
「ははっ……!」
本当に楽しそうだった。
「やっぱり強いな」
真昼は刀を構える。
呼吸は乱れていない。
だが。
戦いは長引いていた。
一輝もまた強者。
簡単には終わらない。
「真昼!」
紫雲が叫ぶ。
真昼は視線だけ向けた。
怪我はない。
無事だ。
それを確認する。
その瞬間だった。
ガンッ!
突然。
部屋の窓が割れる。
全員が振り向く。
外。
非常階段。
そこに黒服の男達が現れた。
漢江会の増援だった。
数十人。
いや。
もっといる。
一輝はため息を吐いた。
「だから邪魔だと言ったのに」
真昼は静かに刀を握り直す。
紫雲を守りながら。
一輝を倒す。
そして脱出する。
やることは決まっていた。
夜風が吹く。
そして。
さらなる戦いの幕が上がろうとしていた。




