第六十五話 「再会」
エレベーターの数字がゆっくりと上がっていく。
一階。
二階。
三階。
静かな機械音だけが響く。
真昼は何も言わなかった。
ただ。
刀を握る手に少しだけ力が入っている。
怒っている。
だが。
それを表に出すことはない。
やがて。
最上階。
扉が開く。
広い部屋。
大きな窓から街の明かりが見える。
その中央。
ソファに座る男。
桐生院一輝。
「来たか」
一輝は笑った。
真昼は周囲を確認する。
そして。
「紫雲はどこですか」
一輝は少しだけ肩を落とす。
「久しぶりの再会だぞ?」
「質問に答えてください」
冷たい声。
一輝は笑う。
「変わらないな」
「……」
「いや」
一輝は立ち上がる。
「もっと正確に言うなら」
「お前は本当に変わらない」
真昼の目が細くなる。
「どういう意味ですか」
「簡単だ」
一輝は奥を見る。
「自分のことより、誰かのことを優先する」
その先。
椅子に座る紫雲。
「真昼!」
紫雲が声を上げる。
「来てはいけません!」
真昼の表情が僅かに変わる。
「大丈夫です」
短い返事。
紫雲を安心させるための言葉。
一輝はそれを見ていた。
「ほらな」
「そういうところだ」
「自分が危険な場所にいるのに、先に相手を安心させる」
真昼は刀を抜く。
「紫雲を解放してください」
「嫌だと言ったら?」
「連れて帰ります」
一輝は笑う。
「なら」
腰の刀を抜く。
「俺を倒してみろ」
次の瞬間。
一輝が踏み込む。
速い。
真昼が受ける。
金属音が響く。
「……!」
真昼の目が僅かに動く。
強い。
前に戦った時よりも。
一輝の斬撃は鋭くなっていた。
二撃。
三撃。
四撃。
部屋の中に刃が走る。
「やっぱりいいな」
一輝が笑う。
「お前と戦うのは」
「理解できません」
真昼が斬撃を受け流す。
「何故こんなことをするんですか」
「言っただろ」
一輝は笑う。
「お前と戦いたいからだ」
「そのために紫雲を巻き込んだ」
真昼の声が冷たくなる。
「最低ですね」
その言葉。
一輝は少し黙った。
だが。
すぐに笑う。
「そうだな」
「否定はしない」
刃がぶつかる。
火花が散る。
「でも」
一輝の目が真剣になる。
「お前が来ることだけは分かっていた」
真昼は何も答えない。
「五条真昼」
「お前はそういう奴だからな」
次の瞬間。
一輝が大きく踏み込む。
真昼は受ける。
だが。
床が砕ける。
「っ……」
力が強い。
紫雲が息を呑む。
「真昼!」
真昼は下がらない。
刀を構え直す。
「問題ありません」
その目は揺れていなかった。
「必ず連れて帰ります」
紫雲はその言葉を聞いて。
少しだけ表情を緩めた。
一輝は笑う。
「やっぱり最高だ」
「その覚悟」
二人は再び距離を詰める。
五条真昼。
桐生院一輝。
因縁の戦いが始まった。




