↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
63/73

第六十三話 「出陣」

夜。


五条会本部。


普段なら静かな時間だった。


だが今日は違う。


本部全体が異様な緊張感に包まれていた。


「若頭!」


「車の準備が出来ました!」


「組員も集まっています!」


廊下を走る組員達。


慌ただしい空気。


真昼は本部へ戻っていた。


青い着物の上に黒い羽織。


腰には母の形見である赤い刀。


学院では見せない姿だった。


五条会若頭。


五条の毘沙門天。


それが本来の真昼である。


会長室。


真昼が扉を開ける。


中には五条真人がいた。


椅子に座り静かに煙草を吸っている。


「父上」


真人は答えない。


ただ真昼を見る。


数秒。


沈黙が続く。


やがて。


「行くのか」


「はい」


短い返事。


真人は煙を吐いた。


「相手は漢江会だぞ」


「分かっています」


「全面戦争になる」


「構いません」


即答だった。


真人は目を細める。


そして。


小さく笑った。


「そうか」


怒りはしない。


止めもしない。


昔からそうだった。


真昼が決めたことに口を出さない。


それが五条真人という男だった。


「なら好きにしろ」


「はい」


真昼は頭を下げる。


そして部屋を出ようとした。


その時。


「真昼」


呼び止められる。


真昼が振り返る。


真人は窓の外を見ていた。


「必ず連れて帰れ」


真昼は一瞬だけ目を見開く。


そして。


「はい」


静かに答えた。


会長室を出る。


本部正面。


既に数十人の組員が集まっていた。


黒服の男達。


誰もが武器を持っている。


その中心。


柊組組長。


乃亜の父もいた。


「若頭」


「柊組長」


男は頭を下げる。


「準備は出来ています」


真昼は周囲を見る。


大勢の組員達。


だが。


首を横に振った。


「必要ありません」


空気が止まる。


「若頭?」


「私一人で行きます」


ざわめきが広がる。


当然だった。


相手は漢江会。


日本有数の巨大組織。


一人で乗り込むなど正気ではない。


だが。


真昼は本気だった。


「若頭!」


「危険です!」


組員達が口々に言う。


真昼は静かに答える。


「大丈夫です」


その言葉に根拠はない。


だが。


誰も反論出来なかった。


何故なら。


この男は今まで不可能を何度も可能にしてきたからだ。


千人以上を斬った伝説。


五条の毘沙門天。


その異名は伊達ではない。


「父上には伝えてあります」


真昼は車へ向かう。


そして。


ドアを開く。


乗り込む直前。


夜空を見上げた。


紫雲の顔が浮かぶ。


優しく笑う顔。


少し困ったように笑う顔。


そして。


「待っていてください」


小さく呟く。


ドアが閉まる。


エンジン音。


車が走り出した。


漢江会本部へ。


その頃。


漢江会本部。


最上階。


一輝はソファへ座っていた。


酒を飲みながら夜景を眺めている。


「若頭」


部下が入ってくる。


「来るか?」


一輝が聞く。


部下は頷いた。


「はい」


その返事を聞いて。


一輝は笑った。


心の底から嬉しそうに。


「そうか」


立ち上がる。


長年待ち続けた日。


ずっと夢見ていた瞬間。


「やっとだ」


窓へ映る自分を見る。


狂ったような笑み。


だが本人は気にしない。


「待ってるぞ」


その言葉は。


真昼へ向けられていた。


夜の街を車が駆け抜ける。


そして。


五条真昼は静かに刀へ手を添えた。


戦いが始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。