第六十一話 「消えた紫雲」
もうあと10話くらいで終わるとイイナー…まだ第2部も主人公変えて書くのに…
放課後。
授業終了のチャイムが鳴る。
教室にはいつものように賑やかな声が響いていた。
「やっと終わったー!」
乃亜が大きく伸びをする。
「今日疲れたー」
「授業しかしてませんよ」
真昼が言う。
「真昼基準で話さないで!」
教室に笑いが起こった。
そんな中。
紫雲は窓の外を見ていた。
どこか上の空。
真昼はそれに気付く。
「紫雲」
「え?」
「大丈夫ですか」
紫雲は少し驚いた後、微笑んだ。
「大丈夫ですよ」
そう答える。
だが。
真昼は少しだけ違和感を覚えた。
何かを隠しているような。
そんな表情だった。
「先に帰りますね」
紫雲は鞄を持つ。
「また明日」
「はい」
そう言って教室を出ていった。
それから二時間後。
夕方。
寮。
真昼は自室で本を読んでいた。
コンコン。
扉が叩かれる。
「真昼!」
乃亜だった。
珍しく慌てている。
「どうしました」
「紫雲が帰ってない!」
真昼の動きが止まる。
「帰っていない?」
「うん!」
乃亜は頷く。
「さっき家の人から学院に連絡があったんだって!」
紫雲は既に学院を出ている。
だが家には戻っていない。
連絡もつかない。
「……」
真昼は立ち上がる。
その目から感情が消えていた。
「最後に見たのは?」
「教室を出る時」
「そうですか」
短く答える。
嫌な予感がした。
真昼は鞄を持つ。
「行ってきます」
「真昼?」
「探します」
それだけ言って部屋を出た。
学院。
既に日が暮れ始めている。
真昼は職員室へ向かった。
防犯カメラ。
目撃情報。
紫雲の足取り。
一つずつ確認する。
そして。
見つけた。
学院から少し離れた交差点。
そこで映像が途切れている。
「……」
真昼は画面を見つめる。
不自然だった。
あまりにも。
その時。
職員室の電話が鳴った。
教師が出る。
数秒後。
表情が変わった。
「月夜さん」
真昼を見る。
「あなたに」
受話器が差し出された。
真昼は無言で受け取る。
耳に当てる。
そして。
男の声が聞こえた。
『こんばんは』
聞いたことのない声。
だが。
不快な笑みが伝わってくる。
「誰ですか」
『佐倉紫雲さんを探しているだろう?』
職員室の空気が凍る。
真昼の目が細くなる。
「貴方ですか」
『そうだ』
男は笑う。
楽しそうに。
心底楽しそうに。
『迎えに来いよ』
真昼は黙る。
『お前なら来るだろう?』
数秒の沈黙。
そして。
『五条の毘沙門天』
その呼び名。
知っている人間は限られている。
真昼の目から最後の温度が消えた。
「場所は」
『教えてやる』
男は笑う。
『待っているぞ』
電話が切れた。
静寂。
職員室の誰もが声を出せない。
真昼は受話器を置いた。
そして。
静かに振り返る。
その顔を見た教師達は息を呑んだ。
怒っていた。
だが叫ばない。
暴れない。
ただ静かだった。
それが逆に恐ろしかった。
「月夜さん……」
教師が声を掛ける。
真昼は答えない。
窓の外を見る。
夜の帳が降り始めていた。
そして。
小さく呟く。
「待っていてください」
その言葉が誰に向けられたものなのか。
説明する必要はなかった。
佐倉紫雲。
彼女を連れ去った者はまだ知らない。
自分が何を呼び寄せてしまったのかを。




