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第五十六話 「生徒会室」

放課後。


真昼は廊下を歩いていた。


すると。


「月夜さん」


後ろから声が掛かる。


振り向くと生徒会長の桐生院赤城がいた。


「会長」


「少しいいかしら」


「構いませんが」


赤城は満足そうに頷く。


そして。


「じゃあ来なさい」


そう言って歩き出した。


嫌な予感がした。


数分後。


生徒会室。


真昼は机の上を見ていた。


大量の書類。


山である。


「……」


無言。


赤城は視線を逸らした。


「会長」


「何かしら」


「これは」


「手伝いなさい」


即答だった。


真昼は小さくため息を吐いた。


「最初からそれが目的でしたか」


「もちろんよ」


全く隠す気がない。


真昼は諦めた。


「分かりました」


席に座る。


書類を手に取る。


そして作業を始めた。


赤城も隣で仕事を続ける。


部屋には紙をめくる音だけが響いていた。


三十分後。


「終わりました」


真昼が書類を机へ置く。


赤城は目を丸くした。


「早いわね!?」


「そうでしょうか」


「そうでしょうかじゃないのよ!」


まだ自分の分も終わっていない。


真昼の前にあった山だけ綺麗に消えていた。


「内容は難しくありませんでしたので」


「そういう問題じゃないのよ……」


赤城は頭を抱える。


勉強が出来る。


運動も出来る。


家事も出来る。


仕事まで出来る。


本当に反則だった。


「助かったわ」


赤城がため息混じりに言う。


「それなら良かったです」


真昼は淡々と答えた。


その時。


コンコン。


扉がノックされる。


「どうぞ」


入ってきたのは紫雲だった。


「あら」


赤城が少し驚く。


紫雲は書類を持っていた。


「頼まれていた資料を持ってきました」


「ありがとう」


赤城が受け取る。


そして紫雲は真昼へ視線を向けた。


「月夜さんもいらしたんですね」


「会長に捕まりました」


「ふふっ」


紫雲が思わず笑う。


赤城は眉をひそめた。


「人聞きが悪いわね」


「事実です」


「否定できないのが悔しいわ」


真昼は少しだけ口元を緩めた。


その時だった。


勢いよく扉が開く。


「真昼ー!」


元気な声。


乃亜だった。


「あれ?」


部屋の中を見る。


真昼。


紫雲。


赤城。


三人が揃っていた。


「何してるの?」


「書類整理です」


「生徒会の仕事を手伝ってもらってたのよ」


「へぇ」


乃亜は空いている椅子へ座る。


そして自然に真昼の隣へ。


昔からそうだった。


隣が空いていたら座る。


それだけ。


深い意味はない。


本人はそう思っている。


「乃亜」


「ん?」


「用事は何ですか」


「別に?」


即答だった。


真昼が少し呆れる。


「では何故来たんですか」


「暇だったから」


「そうですか」


真昼は納得した。


乃亜らしい理由だった。


「そういえば」


赤城が話題を変える。


「来月の球技大会だけど」


「あー」


乃亜が反応する。


「もうそんな時期かぁ」


天女学院恒例の球技大会。


学年対抗で行われる大きな行事だ。


「月夜さんは何に出るの?」


赤城が聞く。


真昼は少し考えた。


「まだ決めていません」


「じゃあバレーやろうよ」


乃亜が言う。


「乃亜がいるなら強そうですね」


「でしょ?」


乃亜は得意げに胸を張る。


運動には自信がある。


昔からだ。


「考えておきます」


「絶対だよ?」


「善処します」


「それ絶対やらないやつじゃん!」


生徒会室に笑い声が響く。


穏やかな放課後だった。


誰もまだ知らない。


この平穏な日々が、少しずつ変わり始めていることを。

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