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第五十三話 「なんか変だ」

翌日。


昼休み。


いつもの中庭。


真昼、紫雲、乃亜、茜の四人が集まっていた。


「そういえばさ」


乃亜がパンをかじりながら言う。


「真昼って休みの日何してんの?」


「色々です」


「雑だな」


「読書や刀の鍛錬、絵も描きます」


「お前ほんと何でも出来るよな……」


乃亜は呆れる。


昔からそうだった。


勉強も運動も出来る。


家事も出来る。


しかも本人はそれを特別だと思っていない。


たまに腹が立つ。


「紫雲は?」


「私は読書が多いですね」


「お嬢様だなぁ」


「乃亜さんは?」


「んー、運動かな」


そんな何気ない会話。


いつも通り。


本当にいつも通りだった。


そのはずなのに。


何故か乃亜は気になった。


真昼と紫雲の距離が。


別に近いわけじゃない。


くっついているわけでもない。


ただ。


二人で話していると妙に自然なのだ。


「?」


乃亜は首を傾げる。


何だろう。


この感じ。


少し引っ掛かる。


だが答えは出なかった。


放課後。


寮へ戻る途中。


真昼と乃亜は二人で歩いていた。


紫雲は用事があるらしく途中で別れている。


「なぁ真昼」


「何ですか」


「紫雲ってさ」


真昼が視線を向ける。


「良い奴だよな」


「そうですね」


即答だった。


「優しいですし」


「気遣いも出来ます」


「話していて落ち着きます」


「そうか」


乃亜は何となく聞いただけだった。


だが。


思ったよりスラスラ答えが出てきた。


「へぇ」


「?」


「いや別に」


真昼は不思議そうな顔をする。


乃亜は苦笑した。


やっぱり鈍感だ。


絶対何も考えていない。


寮へ到着する。


「じゃあな」


「ええ」


別れようとした時。


真昼がふと思い出したように言った。


「そういえば」


「ん?」


「今度買い物に付き合ってください」


「お、おう」


乃亜は頷く。


真昼はそのまま部屋へ向かっていった。


一人残される。


「買い物?」


別に珍しくもない。


昔から頼まれることはある。


それなのに。


何故か少し嬉しかった。


「……?」


乃亜は首を傾げる。


本当に最近おかしい。


昨日からずっと変だ。


紫雲と真昼が話しているのを見ると。


何となく気になる。


真昼に頼られると。


何となく嬉しい。


理由は分からない。


考えても分からない。


だから。


「ま、いっか」


乃亜は深く考えるのをやめた。


どうせ考えても答えは出ない。


それに。


今までだってそうだった。


真昼は真昼。


自分は自分。


ずっと変わらない。


そう思っていた。


だからまだ。


乃亜は気付いていなかった。


その「何となく」が、少しずつ大きくなっていることに。

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