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第五十二話 「幼なじみ」

貯めてたやつを溜めて解放しました

柊乃亜は知っている。


五条真昼という人間を。


誰よりも。


少なくともそう思っていた。


小さい頃から一緒だった。


組の集まり。


正月。


誕生日。


気付けば隣にいた。


だから知っている。


真昼がどれだけ凄い人間か。


勉強も出来る。


運動も出来る。


料理も出来る。


家事も出来る。


刀だって強い。


何をやらせても完璧だった。


昔は悔しかった。


何度勝負しても勝てないから。


だが今となっては慣れた。


だって相手は真昼なのだから。


放課後。


乃亜は寮の廊下を歩いていた。


夕食まで少し時間がある。


ふと窓の外を見る。


中庭。


そこに真昼の姿があった。


そして。


隣には紫雲。


二人は何か話している。


遠くて聞こえない。


だが。


紫雲は楽しそうに笑っていた。


真昼も穏やかな顔をしている。


「……」


乃亜は何となく目を逸らした。


別に見たくなかった訳じゃない。


ただ。


胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。


理由は分からない。


考えたこともない。


考える必要もない。


そう思っていた。


「乃亜先輩?」


後ろから声。


振り向くと茜がいた。


「お、茜」


「何見てるんですか?」


「別にー」


そう言って窓から離れる。


だが茜は窓の外を見て。


すぐに理解したらしい。


「ああ」


「何だよその反応」


「いえ」


茜は小さく笑った。


何だか気に食わない。


「何か言いたいことある?」


「別にありません」


絶対ある。


乃亜はそう思った。


だが茜はそれ以上何も言わない。


代わりに。


ぽつりと呟いた。


「優しいですよね」


「誰が?」


「真昼先輩です」


乃亜は少し考える。


そして肩を竦めた。


「まぁな」


昔からだ。


困っている人を放っておけない。


本人は無自覚だろうけど。


「だから皆好きになるんでしょうね」


茜の言葉に。


乃亜は一瞬だけ固まった。


好き。


その言葉が妙に引っ掛かった。


だが。


すぐに笑う。


「まぁ月夜様だしな」


「ですね」


茜も頷く。


そこで会話は終わった。


だが。


乃亜の胸には何かが残った。


その夜。


寮の自室。


ベッドへ寝転がる。


天井を見る。


静かだった。


いつもならすぐ眠れる。


だが今日は違った。


昼間の光景が頭に浮かぶ。


紫雲の笑顔。


真昼の横顔。


二人が並んでいる姿。


「……」


何だろう。


少しだけ。


面白くない。


紫雲は良い奴だ。


優しいし。


綺麗だし。


真昼と仲が良いのも分かる。


それなのに。


何故だろう。


胸の奥がもやもやする。


乃亜は枕を抱き締めた。


そして。


小さく呟く。


「変なの」


答えは出ない。


ただ一つだけ分かることがあった。


昔からずっと隣にいたはずなのに。


最近の真昼は。


少しだけ遠く見えた。


それが何故なのか。


乃亜はまだ知らなかった。

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