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第四十八話 「婚約者」

翌日。


紫雲は登校していた。


だが。


いつもの紫雲ではなかった。


笑っている。


話もしている。


けれど。


どこか無理をしているように見える。


それは真昼にも分かった。


「紫雲」


昼休み。


真昼が声を掛ける。


「はい?」


「何かありましたの」


紫雲は一瞬だけ固まった。


そして。


いつもの笑顔を作る。


「何もありませんよ」


嘘だった。


真昼にも分かるほどに。


だが。


それ以上は聞かなかった。


聞き方が分からない。


だから。


黙るしかなかった。


放課後。


帰ろうとした時だった。


校門前が騒がしい。


生徒達が何かを見ている。


「何ですの」


真昼が視線を向ける。


黒塗りの高級車。


その扉が開く。


現れた人物を見て。


真昼の目が僅かに細まった。


「……貴方でしたの」


現れた男は笑う。


「久しぶりだな、真昼」


桐生院一輝だった。


周囲の生徒達がざわつく。


「え?」


「知り合い?」


「誰あれ?」


一方。


紫雲の顔色は悪い。


一輝はそんなことなど気にせず歩み寄る。


「迎えに来た」


「わざわざ?」


紫雲が言う。


「婚約者だからな」


空気が止まった。


婚約者。


その言葉に周囲が騒然となる。


しかし。


一輝の視線は。


紫雲ではなく。


最初から真昼へ向いていた。


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