第四十六話 「生徒会長の忠告」
翌日。
昼休み。
真昼は一人で生徒会室へ呼ばれていた。
「失礼しますわ」
扉を開く。
中には桐生院赤城がいた。
書類の山に埋もれている。
「来たわね」
「御用ですか」
「ええ」
赤城はペンを置いた。
そして。
真昼をじっと見つめる。
「何ですの」
「貴方」
嫌な予感がした。
「紫雲さんの件に首を突っ込む気?」
真昼は少し考える。
「突っ込んでいるつもりはありませんわ」
「じゃあ何?」
「困っているようでしたので」
赤城は深いため息を吐いた。
その答えが一番危険だった。
「自覚ないのね」
「何のですの」
「もういいわ」
説明するのも面倒だった。
どうせ伝わらない。
この男。
人の心に関しては壊滅的なのだから。
「聞きなさい」
赤城の声が少し真剣になる。
「相手は普通の家じゃない」
「知っていますわ」
「婚約の話もかなり進んでる」
「そうですか」
「そうですかじゃないの!」
机を叩く。
真昼は首を傾げた。
何故怒られているのだろう。
本気で分からない。
赤城は頭を抱えた。
「貴方ね……」
そこで言葉を切る。
無理だ。
説明しても伝わらない。
「とにかく」
「余計なことはしないで」
「善処しますわ」
善処しない時の返事だった。
赤城は確信した。
絶対何かやる。
放課後。
教室。
紫雲は珍しく元気が無かった。
窓の外を見ている。
真昼は席からそれを見ていた。
気になる。
何故かは分からない。
だが。
気になった。
「紫雲」
声を掛ける。
紫雲が振り返る。
「どうしました?」
「今日は帰らないのですか」
「少し考え事を」
そう言って笑う。
無理に作った笑顔だった。
真昼は気付く。
そして。
何となく嫌だった。
その笑顔が。
「送りますわ」
「え?」
「駅まで」
紫雲が目を丸くする。
「大丈夫ですよ」
「そうですか」
真昼は引き下がる。
だが。
何故か納得出来なかった。
その日の夜。
寮。
自室。
真昼は机に向かっていた。
目の前には白い紙。
筆を走らせる。
完成した絵を見る。
そこに描かれていたのは。
佐倉紫雲だった。
無意識だった。
気付けば描いていた。
真昼は首を傾げる。
「何故でしょう」
分からない。
本当に分からない。
だが。
最近描く絵は。
紫雲ばかりだった。
同じ頃。
漢江会本部。
桐生院一輝は窓際に立っていた。
夜景を見下ろしている。
「坊ちゃん」
部下が声を掛ける。
「準備は進んでいます」
「ああ」
一輝は短く返す。
「紫雲の方は?」
「問題ありません」
「そうか」
静かだった。
いつもの軽薄さが無い。
部下は少しだけ緊張する。
一輝は笑った。
「楽しみだな」
その言葉に。
何故か部下の背筋が寒くなった。




