第三十七話 「学院祭前日」
今日は仕事休みだったので2話更新
学院祭前日。
天女学院は朝から慌ただしかった。
廊下には段ボール。
教室には装飾品。
どこを見ても準備中である。
「青春ですなぁ」
乃亜がしみじみと言う。
「そうですか」
真昼は興味が無かった。
現在。
クラスの装飾を手伝わされている。
本当なら帰りたい。
だが逃げると乃亜がうるさい。
仕方なく残っていた。
⸻
「真昼ー!」
「何ですの」
「そこ届かないから飾り付けお願い!」
真昼は天井近くを見る。
確かに高い。
脚立も無い。
周囲の生徒達が困っていた。
真昼は無言で近くの机に乗る。
さらに棚へ飛び乗る。
そのまま片手で飾りを固定した。
全員が固まる。
「え?」
「はい終わりですわ」
軽く着地。
女子達がざわつく。
「今の何!?」
「運動神経おかしくない!?」
真昼は首を傾げた。
普通だと思っている。
⸻
昼休み。
中庭。
いつもの四人。
「真昼さん」
紫雲が微笑む。
「展示会、楽しみですね」
「そうでしょうか」
「そうですよ」
紫雲は嬉しそうだった。
何故そこまで期待しているのか。
真昼には分からない。
すると乃亜が口を挟む。
「紫雲」
「はい?」
「真昼の絵、一番楽しみにしてるよね」
紫雲が固まる。
「そ、そんなことありません!」
分かりやすい。
乃亜がニヤニヤする。
茜も少し笑っている。
真昼だけ意味が分からない。
⸻
放課後。
展示会場。
作品の搬入が行われていた。
真昼も自分の絵を持って来ている。
布で覆われているためまだ誰にも見えない。
紫雲は少し気になっていた。
何を描いたのか。
聞いても真昼は教えてくれなかった。
だから余計に気になる。
その時だった。
「失礼」
聞き慣れない男の声。
全員が振り返る。
そこには数人の黒服を連れた青年がいた。
女子達がざわつく。
背が高い。
整った顔立ち。
そして圧倒的な威圧感。
真昼の目が細くなる。
紫雲の表情も曇った。
現れたのは。
桐生院一輝だった。
「学院祭の準備か」
一輝は周囲を見回す。
そして。
真っ直ぐ真昼を見る。
「楽しそうじゃねぇか」
真昼はため息を吐いた。
「何故ここにいますの」
「婚約者の様子見」
そう言いながら。
視線は一度も紫雲を見ていない。
ずっと真昼を見ている。
乃亜が小声で呟く。
「絶対違う」
全員同意だった。
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一輝は展示作品の並ぶスペースを見る。
そして真昼の絵が置かれた場所で止まった。
「これか?」
手を伸ばそうとする。
真昼が即座に腕を掴んだ。
「触らないでください」
空気が変わる。
周囲の生徒達が息を呑む。
だが。
一輝は笑った。
むしろ嬉しそうだった。
「怖ぇ顔するなよ」
「していませんわ」
「してる」
二人が睨み合う。
数秒。
やがて一輝が笑う。
「まぁいい」
そして踵を返した。
出口へ向かう。
しかし途中で止まる。
振り返らないまま言った。
「明日楽しみにしてるぜ」
誰に向けた言葉なのか。
聞くまでも無かった。
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一輝が去った後。
会場は妙な空気になった。
乃亜が真昼を見る。
「知り合い?」
「違いますわ」
即答。
だが。
説得力は無かった。
紫雲は黙っていた。
一輝の視線。
態度。
あまりにも分かりやすかったからだ。
気になる。
とても。
だが。
今は聞けなかった。
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学院祭まであと一日。
それぞれの思惑を乗せながら。
祭りの幕は静かに上がろうとしていた。




