第三十五話 「展示会」
学院祭まであと二週間。
放課後。
美術室。
真昼は何故かそこにいた。
理由は簡単。
連れて来られたからだ。
「さぁ!」
柊乃亜が胸を張る。
「観念しろ!」
「嫌ですわ」
即答。
だが乃亜は諦めない。
「学院祭の展示会に出るの!」
「出ません」
「出るの!」
「出ません」
平行線だった。
周囲の美術部員達が苦笑している。
⸻
事の発端は昼休み。
乃亜が勝手に真昼の名前を展示会参加者名簿へ書いたことだった。
当然真昼は拒否。
だが。
そこへ。
「私は見てみたいです」
紫雲。
「……私も」
茜。
二人まで味方についた。
結果。
今に至る。
⸻
「真昼さん」
紫雲が微笑む。
「一枚だけでも駄目ですか?」
「何故そこまで見たいのです?」
真昼は純粋に疑問だった。
趣味だ。
自分が描いて満足している。
それで十分。
だが紫雲は少し考えた後、
静かに言った。
「好きだからです」
真昼が固まる。
乃亜が吹き出した。
茜も固まった。
紫雲も気付いた。
言い方が悪かった。
「ち、違います!」
顔を真っ赤にする。
「絵がです!」
「そうですか」
真昼は普通に納得した。
紫雲は何故か安心したような、残念そうな顔をした。
⸻
結局。
押し切られた。
「一枚だけですわ」
真昼が降参する。
乃亜が歓声を上げた。
「よっしゃあああ!」
美術室中に響いた。
うるさい。
⸻
数日後。
展示会用の作品制作。
真昼は旧校舎裏でスケッチブックを開いていた。
何を描くべきか。
風景か。
校舎か。
空か。
しばらく考える。
そして。
自然と鉛筆が動いた。
描き始めたのは人物だった。
長い黒髪。
穏やかな表情。
柔らかい笑顔。
描き終えて。
真昼は沈黙した。
「……またですの」
紫雲だった。
最近多い。
非常に多い。
だが描きやすいのだから仕方ない。
そう結論付けた。
⸻
その日の夕方。
生徒会室。
紫雲が書類を運んでいた。
すると。
机の上に一枚の紙が置かれていることに気付く。
何気なく拾う。
そこに描かれていたのは――
自分だった。
紫雲が固まる。
「え……?」
あまりにも上手い。
そして。
すぐ分かった。
描いたのは真昼だと。
筆跡ではなく。
雰囲気で。
何となく。
分かってしまった。
紫雲の頬が少し赤くなる。
「これは……」
その時。
ガチャ。
扉が開いた。
真昼だった。
そして。
固まった。
紫雲。
絵。
机。
状況を理解する。
数秒の沈黙。
「返してください」
真昼が言う。
「は、はい!」
紫雲は慌てて返した。
だが。
顔は赤いままだった。
真昼も何となく気まずい。
だから。
話題を変える。
「仕事は終わりましたか?」
「お、終わりました!」
ぎこちなかった。
二人とも。
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その頃。
学院の外。
黒塗りの車。
後部座席。
一輝はスマホを眺めていた。
そこには学院祭実行委員会の資料。
そして。
真昼の名前。
一輝が笑う。
「学院祭か」
部下が嫌な予感を覚える。
「坊ちゃん?」
「行くか」
嫌な予感が当たった。
「絶対面白ぇだろ」
その笑顔を見て。
部下は心の中でため息を吐いた。
学院祭が荒れそうだな。
と。




