↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/73

第三十四話 「学院祭準備」

第三十四話 「学院祭準備」


学院祭まで残り三週間。


天女学院は少しずつ慌ただしくなり始めていた。


昼休み。


教室。


担任が出席簿を閉じる。


「という訳で、今日から学院祭の準備を始めます」


教室がざわつく。


楽しそうな声。


面倒そうな声。


反応は様々だった。


真昼は興味がなかった。


「まずクラスの出し物だが――」


その後も話し合いは続く。


そして案の定。


真昼は一度も発言しなかった。


窓の外を眺めていただけである。


⸻


放課後。


中庭。


いつもの四人。


「学院祭楽しみだなー!」


乃亜が元気よく言う。


茜は小さく頷く。


紫雲も微笑んでいた。


真昼だけが首を傾げる。


「そんなに楽しいものなのですか?」


三人が固まった。


乃亜が言う。


「え、学院祭初めて?」


「初めてですわ」


「マジか」


そうだった。


真昼には普通の学校生活というものがほとんど存在しない。


乃亜は腕を組む。


「じゃあ教えてあげよう」


「はい」


「学院祭は青春です」


「なるほど」


全く分からなかった。


⸻


その日の帰り道。


紫雲と真昼は途中まで一緒だった。


夕暮れの住宅街。


静かな道を歩く。


「真昼さん」


「何でしょう」


「学院祭、少し楽しみにしてみてください」


真昼は首を傾げる。


「何故ですの?」


「皆で何かを作るのって楽しいんですよ」


紫雲は柔らかく笑う。


「失敗しても笑えますし」


「成功したらもっと嬉しいです」


真昼は少し考えた。


そんな経験は無かった。


だから。


少しだけ興味が湧いた。


「そういうものですか」


「そういうものです」


紫雲は頷く。


その横顔を見ながら。


真昼は思う。


紫雲は笑っている方が良い。


最近よくそう思うようになっていた。


⸻


翌日。


放課後。


旧校舎裏。


真昼はスケッチブックを開いていた。


鉛筆が静かに走る。


描いているのは学院の風景。


そして。


気付けば。


また人物を描いていた。


長い黒髪。


優しい瞳。


穏やかな笑顔。


描き終えたところで。


真昼は固まる。


「……」


見覚えがありすぎた。


紫雲だった。


しかも無意識。


前回は参考にして描いた。


今回は違う。


気付いたら描いていた。


真昼は少し考える。


そして結論を出した。


「描きやすいからですわ」


誰もいないのに言い訳した。


⸻


その頃。


学院の外。


黒塗りの車。


後部座席。


一輝は資料を眺めていた。


普通なら婚約者である紫雲の資料を見るべきだろう。


だが。


机の上にあるのは別の名前だった。


月夜真昼。


部下が苦い顔をする。


「坊ちゃん」


「あ?」


「婚約者の情報は見ないんですか」


一輝は鼻で笑った。


「必要ねぇ」


即答。


部下が頭を抱える。


「ですが――」


「それよりこっちだ」


一輝は資料を叩く。


「面白ぇだろ」


部下は全く理解出来なかった。


ただ。


一つだけ分かる。


坊ちゃんは異常なほど真昼に興味を持っている。


それだけだった。


⸻


夜。


寮の部屋。


真昼はスケッチブックを閉じた。


ページの中には。


学院。


空。


木々。


友人達。


そして。


何枚かの紫雲。


真昼は少し考える。


何故こんなに描いているのか。


答えは出ない。


だから。


深く考えるのをやめた。


窓の外には月。


学院祭まであと少し。


その裏で。


少しずつ。


様々な想いが動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。