第三十二話 「勘違い」
翌日。
昼休み。
真昼はいつものように中庭へ向かっていた。
だが。
何故か視線を感じる。
ちらり。
また視線。
しかも一人ではない。
「……?」
真昼は首を傾げた。
そして中庭へ到着する。
いつもの席。
乃亜、紫雲、茜が既に集まっていた。
「あ、真昼」
乃亜が手を振る。
真昼は席へ着いた。
だが。
何故か茜が視線を逸らす。
真昼は少しだけ違和感を覚えた。
昨日までは普通だった。
その時。
乃亜がニヤニヤしながら言った。
「真昼〜」
「何ですの」
「好きな人いる?」
真昼が止まる。
紫雲も止まる。
茜は固まる。
空気がおかしくなった。
「いませんが」
真昼は即答した。
乃亜はさらにニヤつく。
「ほんとに?」
「本当ですわ」
「へぇ〜」
怪しい。
非常に怪しい。
真昼は冷たい目を向けた。
「何か企んでいますわね」
「別に〜?」
嘘だった。
分かりやすい。
紫雲も不思議そうな顔をしている。
「どうしたんですか?」
「いやぁ〜」
乃亜はチラッと茜を見る。
茜が目を逸らした。
真昼は嫌な予感がした。
その時だった。
「そ、それより学院祭」
茜が珍しく話題を変えた。
明らかに不自然だった。
乃亜が吹き出す。
「ぷっ」
「乃亜先輩」
「ごめんごめん」
全然反省していない。
真昼だけが置いていかれていた。
⸻
放課後。
旧校舎裏。
真昼はいつものように絵を描いていた。
そこへ。
茜がやって来る。
「あ……」
「どうしましたの?」
茜は少し迷っていた。
だが。
やがて意を決する。
「昨日のこと」
真昼は理解した。
紫雲の絵の件だ。
「別に構いませんわ」
「そうじゃなくて」
茜は首を振る。
そして小さく言った。
「ごめんなさい」
真昼が首を傾げる。
「何故謝るのです?」
「乃亜先輩に……」
茜が俯く。
「言っちゃった」
真昼が固まる。
嫌な予感しかしない。
「何をですの」
茜はさらに小さな声になった。
「紫雲先輩の絵……」
やっぱりだった。
真昼は天を仰いだ。
乃亜が知った。
つまり。
面倒なことになる。
確定だった。
「……なるほど」
意外にも真昼は落ち着いていた。
茜が驚く。
「怒らないの?」
「怒りませんわ」
真昼は本当に怒っていなかった。
ただ。
面倒だと思っただけだ。
「ですが」
「乃亜はうるさくなります」
「うん……」
茜も同意した。
⸻
その頃。
寮。
乃亜の部屋。
乃亜はベッドの上で転がっていた。
そして一人で笑う。
「なるほどねぇ」
紫雲の絵。
教室の紫雲。
照れた真昼。
面白い。
非常に面白い。
そして。
「これは弄れる」
悪い笑顔だった。
翌日の真昼はまだ知らない。
地獄が待っていることを。




