↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/73

第三十一話 「噂の絵描き」

昼休み。


天女学院の中庭。


いつものメンバーが昼食を取っていた。


五条真昼。


柊乃亜。


佐倉紫雲。


古賀茜。


最近では完全にいつもの光景になっていた。


「そういえば」


乃亜が突然声を上げる。


「学院祭の話聞いた?」


「学院祭?」


紫雲が首を傾げる。


「来月じゃなかったですか?」


「そうそう」


乃亜は頷く。


そして真昼を見る。


嫌な予感がした。


「真昼」


「何ですの」


「展示会出なよ」


真昼が止まる。


「展示会?」


今度は茜が反応した。


「あ……」


少しだけ顔を上げる。


「美術展示……」


真昼は理解した。


学院祭には生徒作品の展示コーナーがあるらしい。


乃亜はニヤリと笑った。


「出せば?」


「嫌ですわ」


即答。


乃亜がずっこけた。


「はやっ!」


「面倒です」


「理由になってない!」


だが真昼は本気だった。


絵は趣味だ。


誰かに見せるためではない。


一人で描くから意味がある。


そんな真昼の隣で。


茜が珍しく口を開いた。


「……見たい」


全員が止まる。


茜が自分から何かを言うのは珍しい。


真昼も少し驚いた。


「私がですか?」


茜は小さく頷く。


「真昼先輩の絵」


「好きだから」


真昼が黙る。


乃亜がすかさず乗っかる。


「ほら!」


「茜もこう言ってるし!」


「私も見たい!」


「私もです」


紫雲まで参加した。


四面楚歌だった。


真昼は少し考える。


そして。


「……考えておきますわ」


完全拒否ではなかった。


乃亜がガッツポーズをする。


「よし!」


「まだ出るとは言ってませんわ」


「でも可能性はある!」


うるさかった。


⸻


放課後。


真昼はいつもの場所へ向かう。


旧校舎裏。


人がほとんど来ない場所。


静かで落ち着く。


スケッチブックを開く。


鉛筆を走らせる。


描くのは学院の風景。


木々。


空。


校舎。


自然と集中していく。


この時間だけは何も考えなくていい。


五条会も。


若頭も。


全部忘れられる。


だから好きだった。


しばらくして。


ふと気配を感じる。


真昼が顔を上げた。


そこには。


茜が立っていた。


「あ……」


固まる茜。


見つかった猫みたいだった。


真昼は少しだけ首を傾げる。


「どうしましたの?」


茜は慌てる。


「ご、ごめんなさい」


「帰ります」


逃げようとする。


だが。


真昼は静かに言った。


「別に構いませんわ」


茜が止まる。


真昼はスケッチブックを見る。


そして。


少しだけ考えてから。


茜へ差し出した。


「見ますか?」


茜の目が大きくなる。


恐る恐る受け取る。


ページをめくる。


そこには。


美しい風景画。


学院の中庭。


寮。


夕暮れの校舎。


どれも写真のようだった。


茜は息を呑む。


「……すごい」


小さな声。


真昼は何も言わない。


だが。


その言葉は少し嬉しかった。


茜はページをめくる。


そして。


ある絵で手が止まった。


真昼も気付く。


しまった。


と思った。


そこに描かれていたのは。


教室で窓の外を見ている紫雲だった。


茜が真昼を見る。


真昼が黙る。


沈黙。


数秒。


そして。


茜は小さく言った。


「好きなんだ」


真昼が固まった。


「違いますわ」


即答だった。


だが。


茜は少しだけ笑った。


その反応が。


何より答えになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。