第二十六話 「会長の娘」
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翌朝。
天女学院。
真昼が教室へ入ると、妙に騒がしかった。
「聞いた!?」
「生徒会長が昨日男子と喧嘩したって!」
「えぇ!?」
真昼は席へ座る。
すると乃亜が振り返った。
「おはよ真昼」
「おはようございますわ」
「聞いた?」
「何をです?」
「赤城の話」
真昼は少し首を傾げた。
その時。
ガラッ。
教室の扉が開く。
噂の本人。
桐生院赤城だった。
だが様子がおかしい。
頬に小さな絆創膏。
腕にも擦り傷。
教室がざわつく。
赤城は気にせず席へ向かう。
だが。
真昼は見逃さなかった。
傷の付き方。
殴り合いではない。
何かから庇った傷だ。
昼休み。
真昼は生徒会室へ向かった。
コンコン。
「どうぞ」
中から赤城の声。
真昼が入ると、赤城は書類仕事をしていた。
そして真昼を見るなり固まる。
「……何しに来たのよ」
「確認ですわ」
「確認?」
真昼は赤城の腕を見る。
「誰を庇ったのです?」
赤城が止まる。
数秒。
そして大きくため息を吐いた。
「本当に嫌なところだけ鋭いわね」
図星だった。
真昼は黙って待つ。
やがて赤城が口を開く。
「昨日、学院帰りに一年生が絡まれてたの」
「男に?」
「ええ」
赤城は苦笑する。
「だから助けた」
真昼は静かに聞く。
「その傷は?」
「庇った時についた」
簡単に言う。
まるで大したことじゃないみたいに。
だが。
真昼は少しだけ目を細めた。
「無茶ですわ」
赤城が目を丸くする。
「は?」
「怪我をしてまで助ける必要がありましたの?」
「あるわよ」
即答だった。
迷いもなく。
赤城は真昼を見る。
「困ってる人がいたら助ける」
「当たり前でしょ」
真昼は言葉を失う。
当たり前。
そんな発想は無かった。
五条会では。
弱い者は淘汰される。
助ける理由など無い。
だが。
目の前の少女は違う。
当然のように誰かを助ける。
自分が傷付いても。
真昼は小さく呟いた。
「……理解不能ですわ」
赤城が吹き出した。
「何よそれ」
「本心です」
「アンタほんと変よね」
赤城は笑う。
真昼はその笑顔を見る。
綺麗だと思った。
そして。
少しだけ安心した。
怪我はしている。
だが。
元気そうだったから。
その時。
赤城が急に真顔になる。
「そういえば」
「?」
「今度の日曜日空いてる?」
真昼が止まる。
赤城も止まる。
数秒後。
赤城の顔が真っ赤になった。
「ち、違うわよ!?」
「違う?」
「デ、デートとかじゃなくて!」
真昼はますます分からない顔をする。
赤城は頭を抱えた。
「生徒会の買い出しよ!」
「なるほど」
「その納得した顔腹立つわね……」
だが。
赤城は気付いていなかった。
自分が誘ったことに。
少しだけ期待していたことを。




