第二十三話 「顔が熱い理由」
美術室。
静寂。
佐倉紫雲は、キャンバスを見つめたまま固まっていた。
そこに描かれていたのは、自分。
優しい表情。
柔らかな光。
まるで、大切なものを見るみたいに描かれている。
紫雲の顔がみるみる赤くなっていく。
「……えっ」
小さな声。
真昼はようやく状況を理解した。
数秒沈黙した後。
五条真昼は静かに絵を伏せる。
「見ないでくださいませ」
珍しく少し早口だった。
茜が横で目を丸くする。
「真昼さんでも焦るんだ」
「焦っていませんわ」
「耳赤いよ」
真昼が止まる。
反射的に自分の耳へ触れた。
熱い。
理解不能だった。
紫雲もまだ固まっている。
「わ、私……ですか?」
「……そうですわ」
「どうして……?」
真昼は答えに詰まる。
どうして描いたのか。
自分でも分からない。
ただ。
気付いたら描いていた。
頭に浮かぶから。
思い出してしまうから。
だが、それをどう説明すればいいのか分からない。
すると茜がぽつりと言った。
「好きだからじゃない?」
「古賀さん」
真昼の声が少し低くなる。
茜は静かに真昼を見る。
「違う?」
真昼は否定できなかった。
代わりに、紫雲を見る。
紫雲はまだ顔が赤いままだった。
そして小さく笑う。
「……嬉しいです」
その言葉に。
真昼の胸が大きく鳴った。
理解不能。
だが嫌じゃない。
むしろ。
もっとその顔を見ていたいと思った。
その時。
ガラッ!!
勢いよく美術室の扉が開いた。
「真昼いるー!?」
入ってきたのは、柊乃亜だった。
そして。
部屋の空気を見て止まる。
赤い顔の紫雲。
耳が赤い真昼。
ニヤニヤしてる茜。
乃亜は数秒黙った後。
「あ、邪魔した?」
真昼は即答した。
「ええ」
「酷っ!?」




