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第二十一話 「初めての嫉妬」

翌日。


昼休み。


三年B組は今日も騒がしかった。


「月夜様、一緒にお昼食べませんか!?」


「今日のお弁当、自信あるんです!」


「こっち座ってください〜!」


五条真昼は女子達に囲まれていた。


完全に学院の人気者である。


真昼は少し疲れた顔をしていた。


「……逃げたいですわ」


「もう諦めなって」


隣で柊乃亜が笑う。


その時だった。


ガラッ。


教室の扉が開く。


空気が変わった。


入ってきたのは、桐生院一輝。


女子達がざわつく。


「また来た……」


「怖いんだけど……」


だが一輝は周囲を気にせず、真っ直ぐ真昼の席へ向かう。


そして当然のように机へ腰掛けた。


「よ」


「……何しに来ましたの」


「会いに」


即答。


乃亜が頭を抱える。


真昼は露骨に嫌そうな顔をした。


一輝は楽しそうに笑う。


「その顔ほんと好きだわ」


「帰ってください」


「やだ」


子供だった。


すると一輝は頬杖をつきながら言う。


「昼飯まだ?」


「まだですが」


「じゃあ一緒に食おうぜ」


「嫌ですわ」


「即答かよ」


その時。


「真昼さん」


柔らかな声。


佐倉紫雲が教室へ入ってきた。


手には弁当。


だが一輝を見た瞬間、その表情が少し曇る。


「……一輝様」


「よぉ婚約者」


軽い口調。


だが紫雲の肩は僅かに強張っていた。


真昼はそれを見て、少しだけ目を細める。


すると一輝がニヤリと笑った。


「なんだ紫雲」


「そんな嫌そうな顔すんなよ」


「……別に」


「へぇ」


一輝はわざとらしく真昼を見る。


「でもお前、コイツといる時の方が楽しそうじゃん?」


空気が止まる。


紫雲が固まる。


真昼も僅かに眉を寄せた。


一輝は肩を竦める。


「まぁ分かるけどな」


「そりゃ惚れる奴も多いわ」


女子達がざわつく。


「まぁ月夜様だし……」


「人気凄いもんね」


「分かる〜……」


一輝はその反応を見て、笑みを深くした。


そして。


真昼へだけ聞こえる声で囁く。


「――お前も、だろ?」


その瞬間。


真昼の胸が、妙にざわついた。


不快だった。


一輝が紫雲へ近付くことが。


婚約者として隣にいることが。


触れようとすることが。


真昼は静かに口を開く。


「……佐倉さんが困っていますわ」


空気が変わる。


一輝が目を細めた。


真昼は続ける。


「それ以上、嫌がらせをするなら」


その声が少し低くなる。


「流石に気分が悪い」


沈黙。


そして一輝は――笑った。


心底楽しそうに。


「ははっ」


「なるほど」


その目が細くなる。


「そういう顔も出来んだな、お前」


真昼は黙ったまま、一輝を見る。


一輝は立ち上がると、紫雲へ軽く手を振った。


「じゃあな婚約者」


そのまま教室を出ていく。


静寂。


数秒後。


乃亜がニヤニヤしながら真昼を見た。


「へぇ〜?」


「何ですの」


「いや別に?」


赤城は何故か不機嫌そうに腕を組んでいた。


紫雲は顔を赤くしたまま俯いている。


そして当の本人だけが。


自分の感情の正体を、まだ理解していなかった。

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