第十九話 「同類」
体育館裏。
重い沈黙。
桐生院一輝は壁へ寄り掛かったまま、楽しそうに五条真昼を見ていた。
その視線に、乃亜が小さく舌打ちする。
「……なんでいるんだよ」
「別に?」
一輝は笑う。
「面白ぇもん見れたから」
真昼は静かに一輝を見る。
その目は冷たい。
「盗み見とは趣味が悪いですわね」
「ははっ」
一輝は楽しそうに肩を揺らした。
「やっぱお前最高だわ」
女子達がざわつく。
だが一輝は気にしない。
ゆっくり真昼へ近付く。
「お前、“そっち側”だろ?」
空気が張り詰める。
真昼は無言。
一輝は続ける。
「人殴ったことある奴の動きじゃねぇ」
「もっと慣れてる」
「殺し慣れてる目だ」
紫雲の顔が青くなる。
乃亜が一歩前へ出ようとした、その瞬間。
真昼が静かに口を開いた。
「……貴方も同じでしょう」
一輝が止まる。
そして。
笑った。
心底嬉しそうに。
「あー、やっぱ分かるか」
その笑顔は危険だった。
普通の人間なら、本能で距離を取る笑み。
だが真昼は動じない。
二人だけ空気が違う。
まるで猛獣同士だった。
一輝は真昼の耳元へ顔を寄せる。
「なぁ」
低い声。
「お前、本当は女じゃねぇだろ」
その瞬間。
乃亜と紫雲の表情が固まる。
真昼だけが静かだった。
数秒。
沈黙。
そして。
「何のことでしょう?」
完璧なお嬢様の微笑み。
だが一輝は笑う。
「隠せてるつもりか?」
「立ち方」
「視線」
「呼吸」
「全部男だ」
紫雲が息を呑む。
乃亜は冷や汗を流していた。
だが真昼は、静かに一輝を見るだけ。
「仮にそうだとして」
その声が少し低くなる。
「だから何ですの?」
空気が凍る。
一輝の笑みが深くなった。
「いいねぇ」
「その目」
「めちゃくちゃ好きだわ」
真昼の目が細まる。
本気で気持ち悪そうだった。
その時だった。
「――そこまでにしていただけます?」
凛とした声。
全員が振り向く。
そこに立っていたのは、桐生院赤城だった。
赤城は一輝を見る。
その目には明確な敵意があった。
「兄様」
空気が止まる。
女子達がざわつく。
「えっ」
「兄妹!?」
真昼も僅かに目を細めた。
一輝は面倒そうに笑う。
「なんだ赤城」
「学院で騒ぎ起こさないでください」
「別に?」
「十分騒ぎです」
赤城は真昼の前へ立つ。
庇うように。
それを見て、一輝はニヤリと笑った。
「へぇ」
「お前、その女気に入ってんの?」
「っ……!」
赤城の顔が赤くなる。
「違います!!」
即答。
だが早すぎた。
一輝が爆笑する。
「はははっ!! 分かりやすっ!」
赤城は耳まで真っ赤だった。
真昼はそんな赤城を見て、小さく首を傾げる。
「……何故顔が赤いのです?」
「アンタは黙ってなさい!!///」




