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五十七話「女王の素材」


「それはの、翼人族(ハーピィ)に___」

「ソフィアすまん。それは俺が説明するよ」

「ん? そうかの?」


 アンナの言葉に答えようとするソフィアを制し、俺は一歩前に出る。


「その前に、自己紹介をしていなかった。俺は九城海斗……」


 いや、この場合は名前が先か?


「カイト・クジョウと言う」

「カイトだね。私はこの馬鹿娘の叔母でアンナだよ。よろしくね」

「ああ、よろしく頼む」


 俺はアンナに頷き返すと、改めて話を戻す。


「それで洞窟の件なんだが……すまない。崩落原因はおそらく俺だ」

「ん? どう言う事だい?」


 これまでの話を聞いていて、この集落のドワーフは禁域側に資源調達しにきていることが何となく分かった。

 その為の出入り口である洞窟を潰してしまったんだ。

 ここは俺が話をするべきだろう。


「洞窟を探索していた時に、岩土竜女王(ロックモグラクイーン)にあっちまってな。逃げている内に___」

「ちょ、ちょっと待っておくれ! カイトと言ったね!? アンタ、女王(クイーン)に出会って生きて帰ってきたのかい!?」

女王(クイーン)?」

岩土竜女王(ロックモグラクイーン)の略称さね! その強さは地竜にも匹敵するって言われてるんだよ! あんたそんな強さの女王から生きて帰ってきたって言うのかい!?」

「あ、あー……まあ、そうだな。もしかして素材も高く売れたりするのか……?」

「そ、素材って……アンタもしかして……」

「奇跡的に倒せちまったからな……あるけど、見るか?」

「み、見せておくれ!」


 肩を掴んでそう言ってくるアンナへ、俺は『次元収納(アイテムボックス)』から『女王の岩鱗』や『紅水晶の角』なんかを取り出し見せた。


「ほ、本物じゃないかい……ま、まさか『紅水晶の角』を見れる日が来るなんてね……」


 アンナは震える手で、『紅水晶の角』へと触れる。

 隣ではラダンも目を見開き、言葉を失っていた。

 なんかさっきから驚かれてばっかりだな。

 いや、ソフィアやルドたちに出会ったばかりの頃は同じような反応をされていたか。

 実は岩土竜女王(ロックモグラクイーン)本体もあるんだが、それを出すと流石に騒ぎになるかも知れないのでやめた。


「女王特有の紅爪(こうそう)赤岩毛(せきがんもう)も本物だ。坊主、本当に倒したのか」

「本当にギリギリだったんだけどな。ただ、そのせいで洞窟が……すまない」

「そう言う事じゃったのか……」


 そこまで説明すると、ソフィアが深く息を吐き苦笑を向けてくる。

 アンナも俺の言葉を聞き、小さく息を吐く。


「なるほどね。女王が相手だったんなら、そりゃ洞窟も崩れると言うもんだね」

「本当にすまなかった。ソフィアも今まで黙っててすまん」

「ま、何となく気持ちは分かるからの。ええよ」

「そうだな。起きちまったもんは仕方ねえ。それに坊主、わざとじゃねえのは俺たちも分かってる。だから崩落の件は気にするな。復興作業もしてるからよ」

「……分かった。ただ、原因は俺だ。力になれる事があったら言ってくれ」


 少しでも力になれればと思いそう伝える。

 すると、アンナは小さく頷き『紅水晶の角』へ視線を落とす。


「だったら一つお願いがあるんだけど良いかい?」

「ああ、言ってくれ」

「そこにある『紅水晶の角』を筆頭に、女王の素材をウチの工房で買い取らせて欲しいんだよ。こんな代物、滅多に出回る物じゃないからね。職人としても一度扱ってみたいんだ」

「そう言う事なら譲るぞ」


 崩落のせいで、ソフィアが禁域側に取り残されることになったんだ。少しでも力になれるなら、そのくらいはさせてほしい。

 そう思ったのだが、俺の言葉を聞いたアンナが眉をピクリと動かしてこれまでで一番深いため息と共に言ってきた。


「馬鹿言うんじゃないよ。この素材がどれだけ希少か分かってるのかい?」

「そうだぞ坊主? おめえも命懸けで手に入れたんじゃねえのか? もしかしてソフィアの件でそう言ってるのか?」

「まさか! ソフィアの命とは比べもんにならねえよ! 俺はただ、使い道があんなら気軽に使ってくれと思って言っただけで……」

「お主……」


 そこまで言うと、三人とも盛大にため息をついて首を横に振っている。


「カイト、あんたお人良し過ぎないかい? そんなんじゃ悪い奴に騙されるよ?」

「そうじゃよカイトや……いつか言おうと思っておったが、お主はもっと利益を考えた方が良いぞい」

「そうだな。世の中には騙そうとする奴や、自分さえ良ければ良いと言う連中がごまんといるからな」

「そ、そうか……? し、しかしだな」


 別に俺だって騙そうとしてくる奴くらいは分かると思うが、俺ってそんなにお人好しなんだろうか?

 そんなふうに思って首を傾げるが、それを見ていたアンナが額に手を当てソフィアに言う。


「ソフィア。今までの話から察するに、禁域側に住んでいるのかい?」

「うむ、今はルドたちやガルド達セントールも含めて、カイトの村で世話になっておるよ」

「なら、この坊やを見張ってやりな! 危なっかしくて見てらんないよ」

「うむ、もちろんじゃ」

「ぼ、坊やはねぇだろ……」

「私から見たらまだまだ子供だよ! ったく、良いね! 査定はしっかりさせてもらうよ!」

「わ、分かった」


 その後、女王の素材を査定してもらうと諸々含めて、金貨百五十枚になった。これは日本円に換算すると千五百万円である。

 いくらなんでも貰いすぎだ。

 俺にはまだ女王本体の素材もあるし、風の間で手に入れた希少な魔獣や魔物の素材も大量にある。

 今ここでこんなに貰ってしまっては他の素材が今後出しにくくなるんでは……そう思い、十分の一くらいにしてもらおうとしたのだが。


「バカ言うんじゃないよ! 十五枚でいい!? そんなことを言っていたら、(けつ)の毛まで毟り取られるよ!」

「か、カイトや……」

「坊主おめえ、それはねえぞ……」


 そう言われ却下されてしまった。

 ま、まるで俺がおかしいみたいじゃないか。


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