四十五話「友との資源探索」
水辺の村を出発した俺とガルドは、予定通り『大峡谷北部の洞窟』へと向かう。
「しっかり掴まってろよ! カイト!」
「ああ!」
ガルドからの声に、しっかりと馬兵装を掴む。
ガルドの体躯は大きく、真紅の毛並みも相まって、なんだか一騎当千の猛将にでもなった気分だ。
合図と共に身体が引っ張られ、剛脚の音が響き始めた。
風を切り、もの凄いスピードで疾走していく。
既に水辺の村は小さくなっていた。
「すげえな、ガルド」
「ん? 何がだ?」
何がだ? と言われても答えは出ない。
ただ、背に乗せてもらい無性に感動したのだ。この大平原を疾走するその姿と光景に。
だから自然とそう言葉が口をついた。
「いや、なんと言うか、セントールという種族に感動したというか、胸を打たれたというか」
「相変わらずおかしな言い回しをするやつだな。だが、悪い気はしない。さあ、もっとスピードを上げるぞカイト!」
「おう!」
俺の言葉に照れた様子のガルドはスピードを上げる。
蹄の音をBGMに楽しみつつ、『巨樹の丘』『不可視の塔』を横目に景色を楽しんでいると、左前方に広大な森林群が見えてきた。
目的地の一つである『禁域の大森林』だ。
「どうするカイト、先に森林に寄るか?」
「そうだな。あとに残す必要もねえし、先に木材を確保するか」
「了解だ」
俺の言葉を聞いたガルドは馬体の向きを大森林へと変え、駆けていく。
数分もしない内に、大森林へと辿り着いた。
ガルドから降りた俺は、肩を回しながら大森林へと入っていく。
「おし、んじゃあ、ちゃっちゃとすませるか!」
「そうだな」
俺は『次元収納』から斧を取り出し、樹木の伐採採取へと取り掛かる。
前回来た時は気付かなかったが、木々にも種類があった。
「『白硬樹』に『耐木樹』か」
『鑑定眼』で調べてみると、軽くて硬く、柔軟性と断熱性に優れていると説明がある。
「これは、役立ちそうだな」
ルド達に渡せば上手く活用してくれそうだ。
という事で、斧を振るって伐採していく。
ふむ、どのくらい集めれば良いだろうか……まあ、あればあるだけ良い筈だから、多めに集めるか。
俺は目安として、前回の三倍集めることにした。
もちろん『堅木樹』も忘れない。
「ほう、やはり、この森は山菜が豊富だ」
そんな中ガルドは、森に生えるキノコや山菜類を重点的に集めていた。
生きていく上で欠かせない食料。
俺はそこまで気にしていなかったが、森や山に入ったら先ず食糧を探すのがセオリーなのかも知れない。
今思えば、村の食糧事情が解決したのは、ソフィアやルド達がそれとなく集めていてくれたおかげかも知れなかった。
感謝しなくては。
「しかしキノコか」
そこで俺はふと気付く。
キノコなんかは村でも養殖できるんじゃないかと。
うん、良い考えかも知れない。村に戻ったらみんなに提案してみよう。
そんな風に思案していると、背後に大きな影。
「カイト!」
「ん? うお!?」
「___ッシ!」
気づいた時にはガルドによって打ち倒されていた突牙猪。
今回も、めでたく食料と相なった。
ガルドは刃先についた突牙猪の血を飛ばし、槍を地面へと立てる。
「油断禁物だぞカイト」
「ああ、助かったよガルド」
ガルドの叱責を素直に受け入れた俺は、立てられた槍に視線を送る。
ん? この槍どこかで見たことあるな、どこだったか。
「なあ、ガルド? その槍って……」
「ああ、里を出る時に親父に譲って貰ったんだ。新しい槍を貰ったからって」
「ああ、ケンの槍だったのか! どおりで見た事がある槍だと思った」
飛竜が襲撃して来た時にケンが振るっていた槍だ。
「親父が若い時分にルド殿に作ってもらった槍らしくてな、『地竜の核』を使っているらしいぞ」
「マジか、存在感が半端ない訳だな」
『黒天月槍』それがこの槍の正式名称だった。
詳細に陸の王者ベヒモスから作られた剛槍とある。
そう、ベヒモスだ。そりゃ、存在感があるわけである。
そんな感じでガルドと雑談を交えながら、素材集めをしていると小一時間程で、十分な量が集まった。
「こんなもんで良いんじゃないか?」
「そうだな。休憩を挟んだら、北部の洞窟に向かおう」
俺とガルドは小休憩を挟んだ後、北へ向かって歩みを進めた。
森林を背に平原を抜けると、徐々に周りが岩肌の目立つ山岳地帯へと姿を変えていく。
フィア達の棲家がある大峡谷の外周だ。
「フィア達、元気にしてるだろうか」
「カイトにかなり懐いていたからな。やはり恋しいか?」
「ああ、正直寂しい」
「そうか。なら、尚更今は開拓に励まないとな。フィア達を遊びに招くんだろう?」
「そうだな。その通りだ」
フィアの笑顔を思い出しながら、俺は流れていく山々の景色を眺めた。
大峡谷を囲う山々はどこまでも続いており、吹き抜ける風は少し冷たい。
暫く、ガルドの背で揺られながら景色を眺めていると、ガルドの歩みがゆったりとなった。
視線を山々から前方へと移す。
「デカいな」
「ああ、アレが村で話した洞窟だ」
前方には岩山を切り裂くような巨大な亀裂が口を開けていた。
数十メートルはありそうな洞窟の入り口。
人の手が加わっていない天然の洞窟なのか、巨大な裂け目が俺たちを出迎えていた。




