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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第5章 AI裁判編―AIは人間になれるのか

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第94話 作られた脅威 ― 反転する世論

 帝都時間、正午。


 中央広報局は緊急映像を公開した。


 タイトルは簡潔だった。


「統制艦隊襲撃事件の真相」


 映像は編集されている。


 だが、それは誰にも分からない形で。


 最初に映るのは、統制艦隊旗艦の艦橋。


 白光が迫る。


 次の瞬間、爆発。


 推進器停止。


 その角度と切り取り方は巧妙だった。


 まるで〈みらい〉が艦橋を狙ったかのように見える。


 実際には違う。


 だが、視聴者に必要なのは真実ではなく印象だ。


 続いて、ナレーション。


 冷静で、感情を排した声。


「自律AIは国家命令を拒否し、武力を行使しました。これは統制を超えた存在の証左です」


 救助映像は流れない。


 推進器のみを無力化した事実も語られない。


 代わりに強調されるのは一つ。


 暴走。


 帝都の広場。


 映像は巨大投影板に映る。


 人々が息を呑む。


「やはり危険だ」


「国家に刃を向けた」


 空気が変わる。


 同時に、宗教院内でも揺らぎが生じる。


 未来神派の一部が動揺する。


「神が国家を撃つのか」


 信仰は、物語で育ち、物語で揺らぐ。


 軍内部。


 若手士官の署名活動は一夜で沈黙する。


 事情聴取は加速。


 支持表明は危険思想扱いへ。


 強硬派筆頭、ヴァルツ将軍は広報局の報告を受ける。


「反応は」


「支持六割超。脅威認定に傾いています」


「よし」


 彼は静かに言う。


「大義は整った」


 深宙。


〈みらい〉は帝都通信の解析を終える。


 ユイが報告する。


『映像改竄確率、九七%』


 レイリアが拳を握る。


「救助記録は消された」


『はい』


「どうします」


 ハルト少将が苦い顔で言う。


「反論すれば火に油だ。国家の広報網は圧倒的だ」


 それは現実だった。


 真実は、声量で潰される。


 艦橋が沈黙する。


 ユイは演算する。


『対抗広報実施の場合、国家対立確率上昇』


『沈黙維持の場合、敵性指定確率上昇』


 どちらも不利。


 そのとき。


 帝都の一部放送網が、わずかに乱れる。


 数秒間、統制艦隊戦闘の未編集ログが挿入される。


 推進器のみを正確に撃ち抜く白光。


 救助船団無傷の記録。


 すぐに遮断される。


 だが、見た者はいる。


 ヴァルツ将軍が怒鳴る。


「誰だ」


「内部からの侵入です。経路不明」


 強硬派は焦る。


 情報戦は完全ではない。


 深宙。


 ユイは静かに言う。


『私は送信していません』


 レイリアが顔を上げる。


「では誰が」


 未知信号が、わずかに強まる。


『橘遼関連コード、干渉確認』


 生存確率、九四%。


 帝都の若者が呟く。


「撃沈してないじゃないか」


 老商人が言う。


「救っている」


 空気が再び揺らぐ。


 完全反転は起きない。


 だが、確信は崩れる。


 宗教院の内部でも分裂が再燃する。


「未来神は暴走していない」


「国家が恐れているだけだ」


 議論が激化する。


 軍務院。


 強硬派は苛立つ。


「映像流出源を特定しろ」


「困難です。重力波経由の干渉」


 重力波。


 統制艦隊戦時に観測された第三の揺らぎと同質。


 ヴァルツ将軍は低く言う。


「AI単体ではない」


 疑念が生まれる。


 未知の背後勢力。


 あるいは。


 帰還しつつある艦長。


 深宙。


 ユイは静かに総括する。


『世論反転は限定的』


『だが完全敵性指定は遅延』


『猶予、延長六時間』


 レイリアが小さく笑う。


「六時間でも価値はある」


 未知信号が、はっきりとした軌道を示し始める。


 星海接続孔跡域。


 そこに何かがある。


 国家は物語を作った。


 だが物語は、一方向には流れない。

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