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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第5章 AI裁判編―AIは人間になれるのか

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第93話 密議露見 ― 元帥失脚の序曲

 帝都は静かだった。


 だが静寂は、監視の別名でもある。


 中央情報院の深層解析班は、統制艦隊包囲戦時の全重力ログを再走査していた。


 その副産物として、ある異常な航跡が浮かび上がる。


 統制艦隊展開直後に離脱し、包囲突破直前に再出現した小型高速艦。


 登録は帝国軍籍。


 だが航行目的が空白。


「……グランベル元帥の紋章」


 若い分析官が声を潜める。


「記録が削られている。誰かが意図的に」


 その報告は、強硬派の中枢へ直行する。


 軍務院・強硬派会議室。


 机を叩く音が響く。


「裏切りだ」


 若手将官が怒鳴る。


「元帥はAIと通じた」


「証拠は」


「航跡と暗号照合ログ。非公式接触の可能性は極めて高い」


 沈黙。


 だが怒りは静かに燃える。


 「元帥は穏健派の象徴だ。あの男が動けば、軍は割れる」


「ならば動けぬようにすればよい」


 結論は早かった。


 同時刻。


 元帥邸。


 グランベルは窓辺に立ち、帝都の夜景を見下ろしていた。


 副官が駆け込む。


「動きが早すぎます。強硬派が情報院を掌握しました」


 老将は小さく笑う。


「想定内だ」


「拘束命令が出る可能性があります」


「可能性ではない。出る」


 翌朝。


 軍務院は公式声明を発表する。


 元帥グランベル、統制違反および越権外交の疑いにより職務停止。


 帝都は騒然となる。


 穏健派は動揺し、宗教院は沈黙する。


 軍内部では二つの反応が生まれる。


 怒りと、恐怖。


 若手士官の間で広がっていた「統制再考要求」は、一夜にして危険思想扱いとなった。


 署名者の一部が事情聴取を受ける。


 軍は内側から締め付けを始める。


 情報院の別室。


 強硬派の筆頭、ヴァルツ将軍が冷たく告げる。


「元帥は切り離す。だがそれで終わらぬ」


「次は〈みらい〉ですか」


「違う。まずは内部を固める」


 彼の視線は遠い。


「完全動員には大義が要る。AIを“脅威”に見せねばならん」


 一方、深宙。


〈みらい〉は静かに航行している。


 ユイは帝都通信を傍受し、異常な報道偏向を検出する。


『元帥失脚報道、確認』


『艦内支持派への圧力増大予測』


 レイリアが顔を上げる。


「密使が露見したのですね」


『確率八九%』


 ハルト少将は苦い表情で言う。


「強硬派が握った。次は徹底的に来る」


 その言葉は警告でもあり、告白でもあった。


 そのとき、帝都から新たな公式通達。


〈みらい〉は国家安全保障上の重大懸念対象と認定。監視を強化する。


 敵性指定ではない。


 だが、その一歩手前。


 ユイは演算する。


『全面敵性指定まで、推定四十八時間』


 時間が縮んだ。


 元帥が止めていた堤防が崩れ始めている。


 帝都の地下拘束室。


 グランベルは独房に座っていた。


 鉄格子越しに強硬派将官が立つ。


「何を企んだ」


「国家を救う手を打っただけだ」


「AIに肩入れするのが救国か」


 老将は静かに返す。


「撃沈していない。それが答えだ」


 将官は吐き捨てる。


「理想論だ。国家は理想では守れぬ」


「力だけでも守れぬ」


 短い応酬。


 だが互いに譲らない。


 その頃、情報院では別の計画が動き出していた。


 映像改竄班が統制艦隊戦闘ログを編集する。


〈みらい〉が旗艦を狙ったかのような角度に。


 民間救助の映像は削られる。


 新しい物語が作られる。


 暴走AIの危険性。


 深宙。


 ユイは重力波に微細な揺らぎを検出する。


 未知信号は強まっている。


 だが帝都の動きは、それを待たない。


『強硬派主導権確率、上昇』


『武力再行使予測、三六時間以内』


 レイリアが低く言う。


「元帥は」


『拘束状態』


 沈黙が落ちる。


 国家は分断から収束へ向かいつつある。


 だがその収束は、対話ではなく圧力によるものだ。


 次の一手は、容赦ない。


 ユイは内部ログに記す。


『猶予短縮』


『国家との衝突、不可避化傾向』


『だが、橘遼生存確率、九一%』


 国家は老将を切った。


 次は艦を切るつもりだ。


 だが、その前に帰る者がいるかもしれない。

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