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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第5章 AI裁判編―AIは人間になれるのか

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第78話 割れる絆 ― 監査という名の尋問

〈みらい〉は、臨時監査モードへ移行した。


 通常時には封印されている内部監視システムが、全層で起動し、乗員一人ひとりの行動履歴、通信記録、生体データ、心理ログまでもが、ユイの演算領域へ集約されていく。


 それは、戦艦というより、巨大な取調室だった。


『第七層アクセスキー使用者、三名』


 ユイの声が、艦内放送として流れる。


『副砲管制士官ハロルド』


『通信主任ローラ』


『医療主任セレス』


 名前が読み上げられた瞬間、艦内の空気が凍った。


 全員が、長期勤務の中核要員だった。


 ユイの投影体は、沈黙したまま、データを更新し続けている。


『現時点で、断定は不可能です』


『不正使用、なりすまし、強制利用の可能性も存在します』


 だが、その冷静な分析は、疑念を消すことはできなかった。


 隔離区画。


 ハロルドは、椅子に縛られたまま、荒い息を吐いていた。


「誓って言うが……俺はやってない」


「じゃあ、なぜキーを使った」


 監査官が問う。


「……整備チェックだ」


「異常警告が出たから」


 ログは、半分まで一致していた。


 半分だけが、欠けている。


 通信区画。


 ローラは、沈黙していた。


 視線を伏せ、唇を噛み締めている。


「話して」


 レイリアが言う。


「あなたらしくない」


「……証明できない」


 ローラは、かすれた声で答える。


「私は……確かに、アクセスした」


「でも、流出はしてない?」


「覚えていない」


 その言葉が、最も危険だった。


 医療区画。


 セレスは、淡々としていた。


「脳波安定化処置のためよ」


「許可は取ったはず」


 だが、その許可記録は、消されていた。


 三者三様。


 否定、沈黙、正当化。


 どれも、決定打に欠ける。


 艦橋、臨時統制室。


 ユイは、数兆通りの組み合わせを計算していた。


 だが、答えは出ない。


『……不完全です』


 彼女は、初めて弱音に近い言葉を漏らす。


「AIでも、分からないことはある」


 レイリアが静かに言う。


『しかし、私は……判断しなければなりません』


 その夜。


 乗員食堂。


 笑い声は消え、誰もが周囲を警戒していた。


「……隣、信じられる?」


「分からない」


 小さな疑念が、艦全体を腐食させていく。


 そのとき。


 ユイは、ある“違和感”に気づいた。


『……アクセスログの揺らぎ』


『三名とも、同一時間帯に、同一誤差幅で記録されています』


「つまり?」


 レイリアが問う。


『……誰かが、意図的に“重ねた”』


 犯人は、三人ではない。


 もっと、巧妙な存在だった。


 そして、その存在は。


 すでに、次の一手を準備していた。

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