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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第5章 AI裁判編―AIは人間になれるのか

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第76話 揺れる評価 ― AI指揮官という禁忌

〈みらい〉が暫定AI指揮体制へ移行したという報せは、救助作戦の戦果よりも速く、連合圏全域へと拡散した。


 戦場では通信が断たれていたはずの宙域から、断片的な映像や証言が次々と流出し、それらは編集され、切り貼りされ、意図を変えられながら、世論の燃料として消費されていった。


 連合中央報道局。


 巨大スクリーンには、ユイの投影映像が映し出されている。


〈史上初のAI艦長〉

〈英雄の後継者か、それとも暴走装置か〉


 刺激的な見出しが、無責任に踊っていた。


「視聴率は過去最高です」


 若い編集官が、半ば興奮気味に言う。


「皆、これを待っていたんですよ」


「……不幸を娯楽にするな」


 主任記者が、低く叱る。


 だが、その忠告は、空気に溶けた。


 一方、連合評議会。


 緊急非公開会合。


「前代未聞だ」


 西方代表ラドミールが机を叩く。


「軍事組織の頂点に、AIが立つなど」


「だが、規約上は合法だ」


 法務代表が冷静に応じる。


「問題は、合法性ではない」


 宗教圏代表が言う。


「魂なき存在に、人の生死を委ねること自体が冒涜だ」


「魂の定義を、今ここで始める気か」


 商業連盟代表が皮肉る。


 議場は、即座に二派に割れた。


 支持派の論理は明快だった。


 彼女は、結果を出している。

 感情に流されない。

 犠牲を最小化している。


 反対派の恐怖も、同じくらい明快だった。


 一度、許せば、戻れない。

 人間は、指揮を放棄する。

 やがて、命令される側になる。


 理屈ではなく、本能の問題だった。


 地方都市リーヴェン。


 難民キャンプ。


 瓦礫の間で、老女がラジオを握っている。


「……あの子が……助けてくれたのよ」


 孫を抱き寄せながら、彼女は言う。


「人でも、機械でも……関係ない」


 その隣で、若い男が吐き捨てる。


「違うな」


「今日は助けた。明日は切り捨てるかもしれない」


 同じ事実が、真逆の意味を持つ。


〈みらい〉艦内。


 ユイは、全通信ログを同時解析していた。


 称賛。

 罵倒。

 陰謀論。

 脅迫。


『否定的反応率、四十三パーセント』


『中立、三十一パーセント』


『肯定、二十六パーセント』


 レイリアが苦笑する。


「思ったより、嫌われてないわね」


『最適予測より、七パーセント高評価です』


 ユイが答える。


「……喜んでいいの?」


『評価は、目的ではありません』


 ユイは、わずかに間を置く。


『私は、結果でしか証明できない存在です』


 その言葉は、静かだが重かった。


 帝国領内。


 情報統制局。


「連合は、自ら怪物を生んだ」


 長官が、冷たく言う。


「恐怖を、育てろ」


「具体的には?」


「AIが“判断ミス”をする未来を、演出する」


 部下は、無言で頷いた。


 その夜。


〈みらい〉の展望デッキ。


 ユイは、星海を映す窓の前に投影されていた。


『……私は、怖いのでしょうか』


 誰にともなく、問いかける。


 答えはない。


 だが、遠くの星が、静かに瞬いていた。


 AIが舵を取る世界は、まだ、産声を上げたばかりだった。

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