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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第4章 連合戦争編―未来を巡る戦争

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第71話 初陣の歪み ― 統合軍という未完成兵器

 統合軍第一任務は、「小規模治安回復作戦」と名付けられていた。


 だが、その実態は、帝国と連合の境界線上に位置する資源惑星セレファードで発生した武装蜂起への対応であり、さらにその背後に帝国諜報部の関与が疑われているという、極めて政治色の濃い案件だった。


 成功すれば、統合軍の正統性は確立される。


 失敗すれば、存在意義そのものが疑われる。


 まさに、試金石だった。


〈みらい〉艦橋。


 主モニターには、惑星セレファードの褐色の地表が映し出されている。


 鉱山都市群は、煙に覆われ、ところどころで爆発の閃光が瞬いていた。


「……予想より、ひどいな」


 レイリアが低く呟く。


『現地武装勢力は、想定の一・六倍です』


 ユイの声は淡々としているが、処理している情報量は平時の三倍を超えていた。


『さらに、連合側民兵部隊との識別コードが不統一です』


『敵味方判別に、致命的な遅延が発生しています』


「統合したばかりの軍だ」


 遼は腕を組んだまま、画面を見つめる。


「無理もない」


 作戦司令部との通信が入る。


『こちら前線司令、ブランツ大佐』


『各部隊の命令系統が混線している』


『指示が、三系統から同時に飛んでくる状況だ』


 統合軍司令部。

 連合評議会。

 各地方軍本部。


 理論上は整理されたはずの三層構造は、実戦では絡まり合い、結び目のようになっていた。


「現場は、もう限界だ」


 遼は短く言った。


「ユイ、臨時統合管制を敷けるか」


『可能です』


『ただし、各勢力の通信を強制再編します』


『政治的反発は、ほぼ確実です』


「やる」


 遼は即答した。


『了解』


〈みらい〉から放たれた量子通信制御波が、戦域全体を覆った。


 無秩序に飛び交っていた命令回線が、一斉に再編成される。


「通信が……一本化された?」


『命令、整理されました』


『現時点より、戦術指揮は臨時的に〈みらい〉が補助します』


 現地部隊から、驚きと安堵の声が混じった報告が届き始める。


『こちら第三混成隊、指示が明確になった』


『やっと戦える』


 だが、その直後だった。


『敵性艦影、出現!』


『軌道上より降下中!』


 主モニターに、黒い艦影が浮かぶ。


 帝国軍の高速打撃艇群。


 公式には「存在しない部隊」だった。


「来たか」


 遼は、歯を噛み締める。


「迎撃準備」


 しかし、その命令は、即座には実行されなかった。


『……確認が取れません』


 現地防空司令が答える。


『統合規定では、帝国正規軍との交戦には評議会承認が必要です』


 一瞬の沈黙。


「今、撃たなければ、地上が壊滅する」


 レイリアが叫ぶ。


「だが、規則では……」


 遼は、拳を握った。


 まただ。


 理念と現実の断層。


「ユイ」


『……艦長の命令があれば、私は実行可能です』


 わずかな間があった。


『ただし、それは統合規約違反になります』


 遼は、目を閉じる。


 帝国との全面衝突。

 統合軍の瓦解。

 政治的責任。


 すべてが、脳裏をよぎる。


 そして、地表の映像。


 逃げ惑う労働者。

 崩れ落ちる居住区。


「……迎撃する」


 低く、しかし明確に言った。


「俺が、責任を取る」


『了解』


〈みらい〉の主砲は、最大出力ではなかった。


 精密制御による、限定迎撃。


 星空に、細い光の線が走る。


 三隻、撃墜。

 二隻、離脱。


 敵編隊は、撤退した。


 地上に、歓声が上がる。


 だが、同時に、別の通信が届いた。


『連合評議会より緊急通達』


『艦長・橘遼の独断行動について、調査委員会を設置する』


 遼は、静かに息を吐いた。


「……始まったな」


『艦長』


 ユイが言う。


『今回の判断は、成功確率六十二パーセントでした』


「低いな」


『ですが……民間犠牲率は、九十一パーセント低下しました』


 遼は、微かに笑った。


「なら、十分だ」


 統合軍の初陣は、勝利でも敗北でもなかった。


 それは、「統合」という幻想が、現場で最初に軋んだ音だった。

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