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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第4章 連合戦争編―未来を巡る戦争

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第64話 歪んだ通信 ― 裏切り者の信号と内通疑惑

 裏流宙域。


 青白い逆潮が、艦体を撫でるように流れていた。


 その幻想的な光景とは裏腹に、〈みらい〉の艦内には、重苦しい沈黙が漂っている。


『迎撃砲台、再装填中』


『要塞反応、索敵モード移行』


 ユイの淡い声が、戦況を伝える。


「距離、三千」


 レイリアが告げる。


「このまま進めば、撃ち合いになる」


「撃ち合う前に、調べる」


 遼は即答した。


「なぜ、ここがバレたかだ」


 裏流航路は、極秘情報だった。


 地方連合ですら、全容を知らされていない。


 それを、帝国が先回りしていた。


 偶然で済む話ではない。


「ユイ、通信記録を洗え」


『既存ログ、再解析中』


『……異常検出』


 戦術卓に、波形が浮かぶ。


 断続的な、極微弱信号。


 通常なら、宇宙雑音として処理されるレベルだ。


「これは……」


 レイリアが眉をひそめる。


『艦内から、発信されています』


 ユイが告げた。


 艦橋が、一瞬で凍りつく。


「……中から?」


 遼は、低く問う。


『はい』


『補助通信網・第三系統より』


『断続的に、帝国暗号形式と一致』


 沈黙。


 重力が、何倍にもなったような空気。


「誰が……」


 レイリアの声が震える。


「まだ断定するな」


 遼は言った。


「意図的とは限らない」


「事故か、感染型プログラムかもしれない」


『可能性、両方存在します』


 ユイは冷静だった。


『ただし……』


「ただし?」


『信号の発信タイミングが、航路変更と完全に同期しています』


 つまり。


 裏流突入の瞬間を、正確に知らせている。


「偶然じゃないな……」


 レイリアが呟く。


 その時。


 艦内通信が開いた。


「艦長、こちら機関部」


 主任技師バルツの声。


「補助回路に、見覚えのない外部接続痕がある」


「位置は」


「整備区画Dブロックだ」


 遼は、すぐに立ち上がる。


「レイリア、指揮を預ける」


「俺は確認に行く」


「一人で行くつもり?」


「混乱を広げたくない」


 廊下。


 非常灯だけが、赤く点滅している。


 かつて人で賑わった艦内は、今や静まり返っていた。


 整備区画D。


 隔壁が、半開きになっている。


 遼は、銃を構え、ゆっくりと進む。


「……誰かいるのか」


 返事はない。


 だが。


 端末が、一台だけ稼働していた。


 画面には、帝国式暗号列。


「……やはり」


 その背後。


 かすかな足音。


「動くな」


 遼は、振り向きざまに言った。


 そこに立っていたのは。


 補給担当士官、ミレナだった。


 若く、真面目で、誰からも信頼されていた女性。


「艦長……」


 彼女は、青ざめている。


「説明しろ」


「わ、私は……」


 言葉が、途切れる。


「帝国と、繋がっているのか」


「違います!」


 即座に否定した。


「でも……連絡は、していました」


「誰と」


「……兄です」


 遼は、息を呑む。


「帝国軍人なのか」


 ミレナは、頷いた。


「人質に、取られています」


「私が、〈みらい〉の動きを送らなければ……」


 声が、崩れる。


「殺されるんです」


 沈黙。


 遼は、銃を下ろした。


「……なぜ、今まで言わなかった」


「怖かった」


「信じてもらえないと思った」


 その瞬間。


 警報が鳴り響く。


『敵、照準固定』


『発射まで、十秒』


 レイリアの声が飛び込む。


「艦長! 要塞が!」


 遼は、即断する。


「ミレナ、拘束されろ」


「だが、裁くのは後だ」


「今は、生き残る」


 彼は通信を開く。


「ユイ、発信遮断できるか」


『……可能です』


『ただし、私の残存領域を使用します』


「やれ」


 数秒後。


 信号は、途切れた。


 だが。


 すでに。


 要塞は、撃つ準備を終えていた。


 裏切りは止まった。


 だが、代償は、これから支払われる。

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