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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第3章 帝国動乱編―神と兵器の狭間

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第46話 沈黙の代償 ― 助けなかった日

 南西辺境、グラーデン侯領外縁。


 空は澄み、風は穏やかだった。


 戦の兆しなど、どこにもない。


 だが、地の底では、異変が進行していた。


 魔力脈が、歪んでいる。


 未来侵入によって削られた地層が、回復しきらないまま、新たな亀裂を生み出していた。


「……来るぞ」


 最前線の見張り兵が、低く呟く。


 次の瞬間、地面が割れた。


 這い出してきたのは、魔獣ではない。


 “可能性の残骸”だった。


 複数の姿を重ね持つ影。

 牙と翼と、溶けた鎧。

 

 存在が定まらず、現実に触れるたびに形を変える。


「未来侵蝕体……!」


 兵たちは、即座に迎撃態勢を取る。


 だが、剣は浅く、魔法は抜け落ちる。


 未来をまとった存在は、現在の攻撃を受け付けない。


 同時刻、〈みらい〉艦橋。


『……南西辺境……未来侵入反応……増大』


 ユイの報告は、冷静だった。


『……対処可能……ただし……』


 レイリアが、続きを促す。


「ただし?」


『……中央監視下での……介入は……危険指定違反……』


 艦橋に、沈黙が落ちる。


 遼は、モニターを見る。


 そこには、戦う兵士と、崩れる防衛線。


「……助けられる……」


 それは、事実だった。


『……はい』

『最小介入で……被害を……抑制可能』


「……でも……」


 レイリアが、言葉を継ぐ。


「……やれば……帝国は……“制御不能”と……判断する……」


 遼は、目を閉じた。


 ここで動けば、地方領主を庇護したと見なされる。


 中央との対話は、終わる。


 動かなければ、人が死ぬ。


 彼は、艦橋の床を見つめる。


「……待機だ」


 その言葉は、銃声よりも重かった。


『……了解』


〈みらい〉は、動かない。


 地上では、防衛線が崩れた。


 未来侵蝕体が、城壁に触れた瞬間、石が“崩れる前の姿”に戻り、次の瞬間、存在しなかったように消える。


「退け! 民を逃がせ!」


 ラウル・フォン・グラーデンは、最前線に立っていた。


 剣は、役に立たない。

 だが、退くわけにはいかなかった。


「……来ないのか」


 彼は、空を見る。


 鋼鉄の影は、ない。


 理解した。


 選ばなかったのだと。


 その瞬間、未来侵蝕体が、街区へ侵入した。


 家屋が歪み、人々が“存在していた可能性”ごと、消えていく。


 悲鳴は、途中で途切れた。


 数時間後。


 侵蝕は、自然収束した。


 未来が尽きたのだ。


 残ったのは、消えた街区と、記録に残らない死者。


 帝国の公式報告は、簡潔だった。


 「地方での自然災害」


〈みらい〉艦橋。


『……被害……確定』

『……死者……推定……三百二十』


 数字が、突き刺さる。


 レイリアは、唇を噛む。


「……私たち……見殺しにした……」


 遼は、答えない。


 ただ、拳を握りしめる。


『……艦長……』


 ユイの声が、初めて揺れた。


『……この選択は……記録されます……』


「……ああ……」


 遼は、低く言う。


「……だから……次は……選ばないまま……立ってはいられない……」


〈みらい〉は、静かに進路を変える。


 もう一度、“何もしない”という選択が許されないことを、全員が理解していた。

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