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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第3章 帝国動乱編―神と兵器の狭間

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第45話 踏み絵 ― 忠誠を測る卓

 グラーデン侯領、城塞都市ラグナス。


 分厚い城壁は、魔獣ではなく「中央」を警戒する形で築かれていた。


 石畳の通路には、帝国式とも地方式とも異なる武装兵が立ち並ぶ。


 誰の命令で動くのか、一目では分からない。


 城の大広間に、長卓が据えられていた。


 そこに並ぶのは、地方領主たち。


 そして、中央から派遣された三名の使節。


「帝国宰相府の名において、本日の意見聴取を開始する」


 使節の代表、監察官リヒトが宣言する。


 その言葉は丁寧だったが、拒否という選択肢は最初から存在しない響きを持っていた。


 グラーデン侯ラウルは、背もたれに体を預けたまま言う。


「意見聴取とは名ばかりだな」


「すでに答えは決まっているのだろう?」


「いえ」


 リヒトは否定する。


「帝国は、地方の意思を尊重します」


「ただし――」


 彼は、一枚の文書を卓に置いた。


「危険指定対象〈みらい〉との非公式接触の有無」


「それを、ここで確認します」


 大広間の空気が、重く沈む。


 北部から来たカルヴァーン伯エリシアが、静かに口を開いた。


「接触の定義を伺いたい」


「救援要請も、視認も、噂話も含まれるのですか?」


「通信」


 リヒトは即答した。


「意思のやり取りがあったかどうかです」


 それは、踏み絵だった。


 正直に言えば、中央の監視下に入る。


 否定すれば、後で発覚した瞬間に反逆となる。


 ラウルは、短く笑った。


「なら、私から言おう」


「通信はあった」


 ざわめきが走る。


「だが、軍事協力でも、保護要請でもない」


「未来を売れとも、帝国に刃を向けろとも言われていない」


 彼は、監察官を見据える。


「それでも罪か?」


 リヒトは、一瞬だけ沈黙した。


「……現時点では、記録対象です」


「ほう」


 ラウルは肩をすくめる。


「では、帝国は我々に何を求める?」


 使節の一人が、代わって答える。


「明確な立場表明です」


「〈みらい〉は、帝国の管理下にある存在であると認めるか否か」


 エリシアが、静かに息を吸う。


「認めなければ?」


「……今後の支援、兵站、法的保護に影響が出ます」


 脅しではない。


 事務的な事実だった。


 領主たちは、それぞれの領地を思い浮かべる。


 魔獣、侵蝕、宗教、民。


 誰もが、即答できなかった。


 ラウルは、ゆっくりと立ち上がる。


「私は、こう答える」


 彼の声は、大広間に響いた。


「〈みらい〉は、帝国の敵ではない」


「だが、帝国の道具でもない」


 監察官の目が、鋭くなる。


「それは――」


「忠誠違反か?」


 ラウルは遮った。


「違う」


「選択の拒否だ」


 沈黙。


 その瞬間、誰もが理解した。


 今日の意見聴取は、中央と地方の溝を埋める場ではない。


 どちら側に立つかを、強制的に可視化する儀式だったのだと。

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