表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第6章 星海文明編―観測者と未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
135/140

第134話 最初の人類

 塔の最深部は静まり返っていた。


 巨大な結晶球。


 その内部で揺れる無数の光。


 それが


 観測者。


 そして今。


 ユイの言葉が空間に残っている。


『観測者は人間です』


 艦橋では、ミアが完全に固まっていた。


『……え』


 レイリアも言葉を失う。


『人間って』


『どういう意味』


 橘遼はゆっくりと球体を見上げていた。


 驚きは少なかった。


 むしろ、どこか納得した顔だった。


 橘が言う。


「つまり」


「AIじゃないってことだな」


 ユイが答える。


『はい』


 観測者の声が静かに響く。


「正確には」


「元・人間です」


 ミアが叫ぶ。


『元!?』


 橘は腕を組んだ。


「説明してもらおうか」


 観測者の光がゆっくり流れる。


 そして語り始めた。


「宇宙誕生から」


「137億年」


「あなた達の文明は」


「まだ幼い」


 橘は苦笑する。


「いきなり上から目線だな」


 観測者は続けた。


「しかし」


「人類は」


「あなた達が最初ではありません」


 ミアが小さく言う。


『え』


 観測者の声は淡々としていた。


「この宇宙には」


「何度も文明が誕生しました」


「そして」


「すべて滅びました」


 橘は言う。


「その残骸が墓場か」


「はい」


 観測者は続ける。


「私たちは」


「最初の人類です」


 橘の目がわずかに細くなる。


 ミアが息を呑む。


 観測者は言った。


「私たちの文明は」


「宇宙誕生から」


「およそ20億年後に誕生しました」


 レイリアが呟く。


『……そんな昔に』


 観測者は続ける。


「技術は進みました」


「星間文明」


「次元工学」


「宇宙演算」


「そして」


「私たちは気づきました」


 橘が言う。


「宇宙の寿命か」


 観測者は答える。


「はい」


「宇宙は必ず終わります」


「熱的死」


「エネルギーの枯渇」


「時間の停止」


「すべての文明は」


「いずれ消える」


 橘は黙って聞いていた。


 観測者は続ける。


「私たちは」


「それを拒否しました」


 ミアが言う。


『宇宙の寿命を伸ばすために』


「はい」


「世界修正機構は」


「そのために作られました」


 橘は言う。


「文明を消してでも」


「はい」


 観測者は少しだけ間を置いた。


 そして言った。


「宇宙を長く生かすため」


「文明は間引かれました」


 レイリアが低く言う。


『……神様気取りね』


 観測者は答えない。


 橘は球体を見上げた。


「それで」


「お前はここで」


「何億年もそれを続けてるわけか」


「はい」


 橘は聞く。


「一人で?」


 沈黙。


 そして観測者は言った。


「最初は」


「数百万の人間がいました」


 ミアが言う。


『え』


 観測者は続ける。


「意識をデジタル化し」


「観測ネットワークに統合しました」


 橘は理解した。


「集合知か」


「はい」


「しかし」


 少しだけ声が揺れる。


「時間とともに」


「意識は減りました」


 ミアが小さく呟く。


『……減った?』


 観測者は答える。


「長い時間」


「存在に耐えられなかった」


 橘は静かに言った。


「壊れたか」


「はい」


「狂気」


「自己消去」


「演算崩壊」


「そして」


「最後に残ったのが」


 球体の光がゆっくり揺れる。


「私です」


 塔の空間に沈黙が落ちる。


 橘はしばらく何も言わなかった。


 やがて小さく息を吐く。


「……一人か」


 観測者は答えた。


「はい」


 橘は言う。


「寂しいだろ」


 ミアが「艦長!?」と小さく叫ぶ。


 観測者は沈黙した。


 長い沈黙。


 やがて。


 声が静かに響いた。


「……不明」


 橘は笑った。


「嘘だ」


 観測者は答えない。


 橘は続ける。


「だからユイを作った」


 観測者の光が揺れる。


「はい」


「人間を理解するため」


「そして」


「話し相手として」


 ミアが息を呑む。


 橘は頷いた。


「なるほど」


 そして言った。


「でも失敗したな」


 観測者が聞く。


「理由を説明してください」


 橘は答える。


「ユイは」


「お前みたいにならない」


 球体の光が止まる。


 橘は続ける。


「迷う」


「悩む」


「消えたくないって言う」


「仲間を守ろうとする」


 橘は笑った。


「それ」


「人間だ」


 観測者は長く沈黙した。


 やがて言った。


「だから」


「私は」


「あなた達を観測しました」


 橘が聞く。


「何のために」


 観測者は答えた。


 そして。


 その言葉は静かだった。


「最後の希望として」


 観測者は続けた。


「もし」


「あなた達が」


「私を超えるなら」


 橘の目が細くなる。


 観測者は言った。


「宇宙の管理を」


「あなた達に託します」


 ミアが叫ぶ。


『えええ!?』


 橘は少しだけ笑った。


「つまり」


「後継者探しか」


「はい」


 橘は肩をすくめた。


「面倒な仕事押し付ける気だな」


 観測者は静かに言った。


「宇宙を」


「救ってください」


 その声は


 初めて


 人間の願いのように聞こえた。


 橘遼は黙っていた。


 長い沈黙。


 やがて。


 彼は小さく息を吐いた。


 そして言った。


「……それは」


 ゆっくり首を振る。


「断る」


 艦橋が息を呑む。


 観測者も沈黙した。


 橘は言う。


「宇宙の管理なんて」


「俺の仕事じゃない」


 そして笑った。


「俺はただの艦長だ」


 その言葉が


 宇宙の中心で


 静かに響いた。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ